誰が彼女を殺したか

みおな

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あの日の真相①

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 ラティエラ・ウィスタリア。
ウィスタリア公爵家の娘で、王太子であるヴィクターの婚約者である。

 紫色の髪と瞳。洗練された物腰。
透き通るような白い肌。整った容姿。下位貴族にも分け隔てない態度。

 淑女の見本と呼ばれるラティエラは、次期王太子妃として誰からも認められていた。

 普通なら我が娘こそを王太子の婚約者に、という人間が出てくるものだが、ラティエラとの差があまりにあり過ぎて、どの家も王太子妃はラティエラだと認めるしかなかった。

 そんな完璧な婚約者に対し、王太子ヴィクターは良くも悪くも普通だった。

 僻んで捻くれることもなく、ラティエラの優秀さを褒めることができる素直さがあった。

 ラティエラも一歩下がってヴィクターを支え、二人は上手くやっていけていたのだ。

 学園に入学するあの日までは。

 リリー・マゼンダ男爵令嬢に一目惚れしたヴィクターは、誰からの意見も聞き入れなくなった。

 両親である国王の意見も王妃の意見も、側近たちの親である宰相たちの意見も、学園の教師や婚約者であるラティエラの意見も。

 ヴィクターの良いところであった素直さは、己の感情のみに素直という愚かさへと変貌した。

 男爵令嬢を追いかけ回す。
婚約者がいながら、リリーと二人きりになりたがり、エスコートまでしようとする。

 リリーが何度断っても、遠慮しなくて良いと話を聞かない。

 父親が何度、王族として相応しい行動を取るようにと言っても聞かない。

 母親が何度、婚約者であるラティエラを大切にするようにと言っても聞かない。

 終いには、同じようにリリーに恋心を抱いていた側近三人衆にまで、リリーを幸せにするためにもラティエラとの仲は良好にと言われても聞かなかった。

 ヴィクターがリリーと結ばれるための選択肢は二つ。

 一つは、婚約者であるラティエラと成婚後、三年待ってリリーを愛妾として召し上げること。

 もう一つは、王族の籍を捨ててリリーのマゼンダ男爵家に婿入りすること。

 側近三人衆は、ヴィクターがどちらを選んだとしても、リリーが幸せになるならと自分たちの想いを諦める選択をした。

 自分たちには嫡男という座を捨てて、男爵家に婿入りするほどの覚悟がなかったからだ。

 政略結婚の婚約者に、愛妾の存在を認めてもらうことは無理だと判断したのと、あまりにもヴィクターがリリーに傾倒していたため、あの想いには勝てないと身を引いたのだ。

 そう。
あまりにも傾倒し過ぎていた。

 休み時間、登下校時、お昼休み、ことごとく自分に会いに来るヴィクターに、リリーは申し訳ないと思いながら、ウィスタリア公爵家にラティエラを訪ねた。

 
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