誰が彼女を殺したか

みおな

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あの日の真相⑤

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 死んだと思わせて欲しい。

 ラティエラの言ったことが理解出来なくて、マゼンダ男爵一家は首を傾げた。

 王太子であるヴィクターに、逆らうことはできない。

 だからリリーは愛妾になるか死を選ぶか、どちらかだと覚悟を決めた。

 だが王太子ヴィクターの正式な婚約者であるラティエラが、婚約を解消した。

 それはつまり、愛妾になる道は消えたということだ。

 あのヴィクターのことだ。
何がなんでもリリーを婚約者にしようとするだろう。

 もう、死ぬしかない。

 覚悟を決めていたから、ラティエラの死んで欲しいという言葉にも動揺しなかった。

 だから、逆に「死んだと思わせて欲しい」という言葉に動揺してしまう。

「ど、し、思わせて、え、どう・・・」

「落ち着いて下さいませ、マゼンダ様。ちゃんと説明いたしますわ」

 その後、ラティエラから語られた『説明』に、リリーも両親も呆然とした。

「わたくしの友人で、演劇をしている方がいらっしゃいますの。他国の方ですので、ヴィクター殿下もご存知ない方ですわ。その方にご協力をお願いします。彼女は完璧主義者ですの。ですからマゼンダ様の遺体を完璧に演じてくれますわ」

 筋書きはこうだ。
その演者がリリーの遺体を演じる。
 キチンと葬儀も行い、近所の人にはその遺体を見てもらう。

 触れられたりすると困るので、学園の関係者、特にリリーに傾倒していた四人の葬儀への参加は断る。

 髪を切り、帽子でピンク色の髪を隠し、演者の国へと平民の家族として移住する。

 移住先での仕事も、ラティエラが紹介してくれた。

 他の仕事が良ければ、自分で見つけて変われば良いからと。

 死んだと思わせなければ、ヴィクターが諦めることはない。

 ヴィクターのこの後の処遇に関しては、ラティエラは理解していたが、そのことをリリーに語るつもりはなかった。

 この国の王太子に振り回されて、学園も中退し他国に移住しなければならないのだ。

 これ以上の負担をかける必要はない。

 だから、このジョンブリアン王国には、ヴィクターの他にリリーに傾倒していた三人がいるからこの国にはいない方が良い、と伝えた。

 リリーも、死んだはずの人間が生きているとわかれば、もう逃げ道はなくなると理解したので、それを受け入れた。

 友人たちと会えなくなるのは寂しいが、両親と自分を守るためである。

 それに、ラティエラがここまで手を尽くしてくれているのだ。

 そして、作戦は決行された。

 リリーそっくりに化粧を施し、怪我をした特殊なメイクまでして、ピンク色のカツラを被り、遺体として花に埋もれた演者により、リリーの死は周知されたのだ。

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