どうぞお好きになさってください

みおな

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4.私は知りませんわ

 ユリシスが助けた令嬢は、コンクパール男爵家の一人娘で、名をキティと言う。

 ピンク色のふわふわとした髪と瞳をした、庇護欲がそそられる可愛らしい令嬢だ。

 キティは、自分を助けてくれたユリシスに、入学式の翌々日にお礼を言いに現れた。

「先日は本当にありがとうございました。これ、私の手作りなんですけど、宜しかったら・・・」

「わざわざありがとう。いただくよ」

 学園内では、いくら王族といえど護衛は付いていない。

 だが、王族が毒味もせずに他人からもらった物を口にするなどあり得ないと、ティファは驚いた。

 キティから受け取った包み紙から中のクッキーを取り出すと、ユリシスは躊躇いもせずに口に放り込んだのだ。

「殿下!」

「うん?ティファもいただくかい?美味しいよ」

「・・・いえ。コンクパール男爵令嬢様でしたかしら?王族が口にする物は、必ず毒味が必要になります。お気をつけになって」

「そんなっ、私、毒なんていれてません!」

 ティファは、その菓子に毒が入れられていると言っているわけではない。

 だが、キティの菓子を受け取ったことで、同じようにユリシスに菓子を差し出す人間が出て来るかもしれない。

 その菓子に毒が入れられていた場合、キティの行動が咎められる可能性があるのだ。

 だが、キティはその大きなピンク色の瞳に涙を浮かべて抗議して来た。

「ティファ、彼女は厚意でくれたんだ。そんな言い方したらかわいそうだよ。コンクパール嬢、ごめんね?ティファも悪気があって言ったわけじゃないんだ」

 ティファは、ユリシスに分からないように小さくため息を吐いた。

 彼女が厚意・・・いや好意で菓子を差し出したことくらいティファにも理解っている。

 問題なのは、受け取ってユリシスの軽率さだ。

 だが、この場で何を言ったところで、キティには通じないだろうし、ユリシスも引かないだろう。

 彼は、人の善意には善意で答えるのが当然だと思っている。

 それはユリシスの美点であり、欠点でもあった。

 これでこの菓子に毒が入っていたなら、責められるのはティファなのに、ユリシスは人の善意に悪意が混ざることがないと信じている。

 その為に、学園内では婚約者であるティファが、学園の外では護衛が周囲に目を配るしかない。

 ティファは口を噤んで、ユリシスを諌めることを諦めた。

 ユリシスは周囲がどれだけ、彼の安全のために心を配っているか理解しない。

「お好きになさってください。その愛らしい方が罰せられても私は知りませんわ」
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