どうぞお好きになさってください

みおな

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32.酔っておられるから

 期待というものは、したら裏切られる場合もあれば、期待通りという時もある。

 そしてこの日、ティファは期待通り、いや期待を上回る出来事にガッツポーズを取っていた。

 もちろん心の中で、である。

「ティファ様」

「あら?シャリー様。ごきげんよう」

「彼女、をしてくれますわね」

 近付いてきたシャリーに、ティファが挨拶を返すと、シャリーは扇で口元を隠し、ぽそりと呟いた。

 現在、二人の視線の先には、二人の令嬢と二人の男が立っている。

 第一王子ユリシスと子爵令息。

 令嬢のうちの一人は、コンクパール男爵令嬢のキティ。

 そしてもう一人は、ベスビアナイト公爵家の令嬢、サブリナ。

 サブリナ・ベスビアナイト。

 ベスビアナイト公爵家の次女で、ずっとと噂がある令嬢である。

 金髪に、ペリドット色の瞳。

 濃緑のドレスを着た彼女は、キツい瞳でユリシスとキティを見ていた。

 発端は、三十分前。

 ティファはユリシスのエスコートで、会場に入った。

 そして、本日の主役のマーガレットに挨拶をし、国王陛下と正妃システィーナにも挨拶をした。

 陛下たちのダンスの後に、ユリシスの手を取ってダンスも踊った。

 二曲目も踊ろうとするユリシスに断りを入れ、給仕から飲み物を受け取った時に、それは起こった。

 コンクパール男爵令嬢が、子爵令息に絡まれた。

 ダンスに誘われたのだろう。
だが、キティは断ったようだった。

 だが、格下の令嬢に断られたことが気に障ったのか、令息は強引に腕を取った。

 それに激しく抵抗したキティが、後ろに立っていたサブリナにぶつかり、サブリナの持っていたグラスの果実水がキティのドレスにかかったのである。

 淡いピンク色のドレスを着ていたキティは涙ぐみ、子爵令息はぶつかった相手が公爵令嬢と知るや、慌てて逃げようとしてたまたまその場を見ていたユリシスに止められた。

 サブリナはキティに詫び、キティもまた辛い出来事に耐えていながら傷ついている体で謝罪を受け入れ、ユリシスは子爵令息を叱責した。

 ティファは離れていたためその一部始終を見ていたわけではないが、シャリー曰く断り方が強引だったようだ。

 子爵令息の自尊心を傷つけるような。

 そして、サブリナが後ろに立っていることや、ユリシスが近くにいることもしているように感じたとシャリーは言っていた。

 ティファは、シャリーの人を見る目を信用している。

 シャリーがそう感じたのなら、きっとそうなのだろう。

 だが、ユリシスはそれに気付かない。

「殿下は気付かれないようですわね」

「ええ。自分が正義のヒーローなことに酔っておられるから」
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