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69.伝えれば良かったんだよ
「王族としての矜持が持てないなら、王籍など返上しろ」
ルウのその言葉は、ユリシスを愕然とさせた。
優秀な未来の王太子。
努力家で優しい第一王子。
ずっと周囲に期待され、王太子になるに相応しい王子だと言われ続けて来た。
その自分に、ユークレース王国王太子が王族として相応しくないと言っている。
自分の最愛の女性ティファの婚約者の座を奪った男が。
「婚約者の件はともかく、何故侍従の意見をちゃんと聞かない?何故不用意な言動をする?自分が責任のある立場にいることを理解していないのか?お前が何も考えずに口にした菓子に毒が入っていたら?毒に倒れたお前と毒を盛った者は自業自得としても、毒味役も罰せられることは考えなかったのか?」
「か、彼女は毒など・・・」
「そこの男爵令嬢は毒など盛らないだろう。お前のことを好いているようだからな。だが、それ以前から毒味を軽視していたと聞いた。その令嬢が入れなくとも、他の人間がすり替えるかもしれない。危機管理が出来ていなさ過ぎる」
「・・・」
ユリシスはルウの淡々とした言葉に、立ち上がることも反論することも出来なかった。
殺されかけたことも影響していた。
簡単に騙されて命の危険に晒されるなど、今まで思いもしなかったことだった。
「今回のこともだ。安易によく知りもしない子爵令嬢を信用して、護衛も連れずに安全圏内から出た。あの子爵令嬢もそれから殺された男もパイライト王国に利用されていただけだが、我々が来ていなければお前たちは殺されていた。騙した方が悪いことは違いないが、騙されたお前に本当に罪はないか?」
「・・・」
「お前、親の気持ちを考えたことはあるか?どんな気持ちでお前を軟禁したのか考えたことは?お前、異母弟妹もいるんだろ?何で、自分の位置が盤石だと思えるんだ?何で、もっともっと、考えて動けなかったんだ?婚約者のこともそうだ。王太子妃未来の王妃になる令嬢が、感情を露わにするわけがないだろ。淑女教育というのはそういうものだ。しかもお前たちは政略で結ばれた婚約だろ?それでも、二人きりの時の淑女でない笑顔や、些細な言葉に愛情を感じなかったか?十一年もそばにいたんだ。ずっと隣で支えてくれていたんだろ?どうしてそんな女性の気持ちを試すような真似をしたんだ。不安なら、はっきり言えば良かったんだ。ティファの気持ちを試すのではなく、求めるのではなく、自分の素直な気持ちを伝えれば良かったんだよ」
ルウのその言葉は、ユリシスを愕然とさせた。
優秀な未来の王太子。
努力家で優しい第一王子。
ずっと周囲に期待され、王太子になるに相応しい王子だと言われ続けて来た。
その自分に、ユークレース王国王太子が王族として相応しくないと言っている。
自分の最愛の女性ティファの婚約者の座を奪った男が。
「婚約者の件はともかく、何故侍従の意見をちゃんと聞かない?何故不用意な言動をする?自分が責任のある立場にいることを理解していないのか?お前が何も考えずに口にした菓子に毒が入っていたら?毒に倒れたお前と毒を盛った者は自業自得としても、毒味役も罰せられることは考えなかったのか?」
「か、彼女は毒など・・・」
「そこの男爵令嬢は毒など盛らないだろう。お前のことを好いているようだからな。だが、それ以前から毒味を軽視していたと聞いた。その令嬢が入れなくとも、他の人間がすり替えるかもしれない。危機管理が出来ていなさ過ぎる」
「・・・」
ユリシスはルウの淡々とした言葉に、立ち上がることも反論することも出来なかった。
殺されかけたことも影響していた。
簡単に騙されて命の危険に晒されるなど、今まで思いもしなかったことだった。
「今回のこともだ。安易によく知りもしない子爵令嬢を信用して、護衛も連れずに安全圏内から出た。あの子爵令嬢もそれから殺された男もパイライト王国に利用されていただけだが、我々が来ていなければお前たちは殺されていた。騙した方が悪いことは違いないが、騙されたお前に本当に罪はないか?」
「・・・」
「お前、親の気持ちを考えたことはあるか?どんな気持ちでお前を軟禁したのか考えたことは?お前、異母弟妹もいるんだろ?何で、自分の位置が盤石だと思えるんだ?何で、もっともっと、考えて動けなかったんだ?婚約者のこともそうだ。王太子妃未来の王妃になる令嬢が、感情を露わにするわけがないだろ。淑女教育というのはそういうものだ。しかもお前たちは政略で結ばれた婚約だろ?それでも、二人きりの時の淑女でない笑顔や、些細な言葉に愛情を感じなかったか?十一年もそばにいたんだ。ずっと隣で支えてくれていたんだろ?どうしてそんな女性の気持ちを試すような真似をしたんだ。不安なら、はっきり言えば良かったんだ。ティファの気持ちを試すのではなく、求めるのではなく、自分の素直な気持ちを伝えれば良かったんだよ」
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