悪役令嬢は執事様と恋愛したい

みおな

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悪役令嬢と精霊の森2

 目の前で形を作っていく黒い靄から目を逸らせない。

「シキ」

「わかってる。ライナス先生、アレに近づき過ぎては危険です」

「!?分かった!グリード!近づき過ぎるな!!」

 ライナス先生の叫びに、歩みを進めようとしていたグリード様が止まった。
 グリード様が足を止めた1Mほど先に、鋭い木の枝が土から突き出てきた。あのまま進んでいたら、串刺しになっていただろう。

「!!」

 出てきたのが木の枝・・・ということは、アレは自然を司る精霊?あの、瘴気の塊のようなのが?

(・・・苦しい・・・助け・・て)

 空気を震わせるような声に、私たちは黒い靄に視線を向ける。

「ライナス先生」

「グリード、どうすればいいのだ?」

「わ、分からん。精霊が瘴気に蝕まれているなど。聖女様の浄化でも可能かどうか・・・」

 浄化か。そんな力、私にあるのだろうか。タナトス様は死の神だから、浄化とか無理だろうし。

 魔力の効力が下がっている原因は、間違いなく目の前の現象だろう。つまりは、早く目の前の現象を改善しないと、精霊自体がいなくなるかもしれないということだ。

 私は、魅了の力を跳ね除けることは出来たが、あの瘴気を跳ね除けられるだろうか。しかも跳ね除けるには、アレに触れなければならないだろう。

 やらなければという気持ちと、不安が胸を押し潰しそうになる。
 シキと繋いだままの右手が、キツく握られた。ハッとしてシキを見上げる。

 私は、独りじゃない。シキがいてくれる。これから先、何があっても、シキだけはずっと側にいてくれる。

 私とシキは、人の理から外れている。それは、人にできないことをやる義務があるのではないか。

 私たちは、シキの中にタナトス様の魂と力があると分かってから、何度か話し合った。
 もしも、力を使わなければならなくなったとき、どうするのか。
 もしも、力及ばなくて、命を賭けなければならないとき、どうするのか。

 答えは、やれるだけのことはやって、もしも力及ばなかったら、2人で死の国に行こう、だった。

 私は、シキに左腕を差し出す。シキがそっと腕輪を外した。

「ライナス先生、グリード様、少し離れていて下さい」

「何を言っている?」

「ライナス先生、もしも力及ばず私たちが取り込まれるようなことがあれば、躊躇わず逃げて下さい。我が屋敷の私の部屋に、家族宛の手紙を書いてあります。それをお願いできますか」

「アイリスさん・・・」

「ちょっと待て!お前ら何を言っている!子供に、そんな・・・」

 そこまで言って、グリード様が言葉を詰まらせる。
 私とシキの強い視線に言葉を続けることができなかったのかもしれないし、私から溢れた魔力に気づいたのかもしれない。

(女神・・・助けて・・・)

「うん。今行くよ」

 私が両手を差し出せるように、シキの手が、私の腰に回った。
 ゆっくりと差し出した手がかたまりに触れた途端、黒い靄が私とシキを包み込んだー




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