悪役令嬢は執事様と恋愛したい

みおな

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悪役令嬢と精霊の森3

「シキ」

 暗闇の中、シキの名を呼ぶ。腰に触れた手に力が入った。

「ここにいる」

「多分、あの濃い塊が本体だと思う。今から触れるから・・・側にいてね?」

「ああ。離れていろと言われても絶対離れない」

 本当なら、離れてもらうべきなのだろう。シキを危険に晒したくないなら。
 だけど、もう私はシキと離れては生きていけないのだ。シキは、私の半身なのだから。

 黒い靄の中、その中央にある塊に両手を伸ばす。
 触れた瞬間、静電気のような、バチッとした抵抗を感じたが、そのまま手を差し伸べる。

(・・・あたたかい・・・)

 覆われていた黒い何かが剥がれるように、ポロポロと落ちて行き、私の目の前に緑色に輝く少女の姿が現れた。

(ありがとう。女神様の愛し子)

「あなたは・・・」

(私は自然を司る精霊王ユミス)

 精霊王?そんな存在さえ、あの瘴気のようなものに囚われてしまったというの?もしかして、他の精霊王も囚われているの?

「精霊王ユミス様、一体何が起きているのですか?」

(私にそれを答えることは許されていないの。女神の愛し子、どうか全ての精霊王を救って・・・)

 そう言うと、ユミス様の姿はフッと消えた。辺りの靄が消え、ライナス先生とグリード様の姿が見える。
 多分、人間に姿を見せることができない為に消えられたのだろう。

 私たちは、呆然としているグリード様たちの元へと戻った。

「お前たちは一体・・・」

「自然を司る精霊様は解放できました。ですが、他の精霊様も同じように囚われているようです」

「アイリスさん」

「おそらくですが、解放することは出来ると思います。ただし、条件があります」

 私は、グリード様と視線を合わせた。この条件をのんでもらえなければ、この留学は取りやめて国に戻らなければならない。

「私たちのことに関しては一切他言無用の上、関与しないと約束して下さるなら、協力します」

 魔法省のトップと、それに準ずるほどの実力者だ。私たちが普通の人間でないことは察しただろう。
 そして、この力を欲することは安易に想像できる。
 だが、私はこの国に囚われるつもりはない。この条件をのんでくれないなら、即座にこの国から出るつもりだ。

 しばらくの沈黙のあと、まずはライナス先生がうなづいた。

「わかりました。あなた方の望むままに」

「ライナス!!」

「グリードはどうするつもりですか?私の大切な生徒をどうにかするつもりなら、私もあなたの敵になりましょうか」

 ライナス先生の言葉に、グリード様は息を呑む。

(ライナスは稀代の魔法使いだ。俺以外では、ライナスに敵う人間は魔法省にはいない)

 選択肢はないに等しかった。精霊をどうにかしなければ、この国は終わりだ。
 その他の事に優れている人間がいくらいても、それでは他の国と大差ない。魔法に優れた人間が多く輩出されているからこそ、ミチェランティスは栄えたのだ。

「わかった。その条件をのむ」

 彼らを手に入れれば、もっと国は栄えるかもしれない。だが、彼らを御しきれなかったら?ライナスまで敵に回して、失敗したら?
 国を滅ぼしかねない選択をするわけにはいかなかった。
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