推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

みおな

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悪役令嬢、婚約する

 カイルと二人で庭を歩く。
マジでお見合いだなとか思ってると、カイルが立ち止まった。

「ローレンス様?」

「さっきのクッキー、アデライン嬢が作ったって本当?」

「はい。公爵令嬢らしくないですよね。でも、意外と我が家では好評なんですよ」

 高位貴族のご令嬢が料理をすることはない、とラノベにも書いてた。

 実際、お菓子作りをすると言った時、お母様に反対された。

 攻略のために始めたけど、もしかしたら前世でもしてたのかもしれない。

 だって手順とか覚えてたし。

「・・・美味しかった。菓子を美味いと思ったのは久しぶりだ」

「気に入っていただけたなら良かったです」

 カイルがヒロインのお菓子に心を奪われたのは、その菓子の味が亡き母親が幼い頃に作ってくれていた味と同じだったから。

 味まではラノベでは分からないから、私が作ってカイルの思い出の味になるのかはわからなかった。

 だけど、この反応を見るに、どうやら母親の思い出の味だったようだ。

「あの、さ・・・また作ってもらっても良い?」

 おずおずと私にお願いするカイル。
なんて尊い!

「はい、もちろんです」

 もちろん二つ返事で了承する。
今度は、お母様に好評だったパウンドケーキにしようかな。

 あれこれ考えながら歩いていると、小石につまづきそうになった。

「あっ・・・」

「危ない!」

 カイルが私の手を引いて、咄嗟に抱き止めてくれる。

 抱き・・・抱き・・・!

「大丈・・・っ!ごめん!」

 真っ赤になった私を見たカイルが、負けじと顔を赤くして、私から手を離す。

 推しに抱きしめられてしまった!
事故だけど!

 顔を赤らめるカイルも尊い!

 駄目だ!幸せすぎて鼻血が出そう。

「ローレンス卿。僕の可愛いアナスタシアに何をしてるのかな?」

 初々しいカップルのように向かい合っていた私たちの背後から、冷ややかな声が響いた。

「お兄様?」

「アナ!卿に無理強いされたりしてないか?こんな可愛いアナと二人きりだからと」

「お兄様っ!カイ・・・ローレンス様に、しっ、失礼ですわっ!私が転びそうになったのをお助けくださったのです!」

 プンプン!と怒ってジュリアンに文句を言うと、後ろからボソッと呟きが聞こえた。

「アナ・・・」

「はい?ローレンス様、なんでしょう?」

「え、あ、いや、僕も・・・アナと呼んで良い?」

「もちろん「駄目だっ!」」

 私が了承する声に被せて、ジュリアンが否定する。

 おおい!ジュリアン。
いくら兄だとはいえ、推しとの交流を邪魔するなら、怒るよ!

「お・に・い・さ・ま!私、怒りますわよ?ローレンス様、もちろんお好きにお呼びくださいませ。あの・・・私もカイル様とお呼びしても?」

「もちろん。じゃあ・・・シアって呼ぶ。これからよろしくね?シア」

「!」

 推しの極上の笑顔、いただきましたっ!



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