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第一章 ルークの婚約者編
過去編 ループの真実
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モデリーンが初めて非業の死を迎えた後、偶然にもルークはこれまでずっと悪い噂が絶えず嫌っていたモデリーンが実は何も悪い事はしておらず全て冤罪だった事を知った。噂を流していたのはルークが愛してやまない恋人のモニラだった。
ルークの婚約者になれない恨みから姉であるモデリーンの事をある事ない事吹聴し、その噂は尾ひれが付きまくってモニラ自身が思ってもみない内容にまで勝手に発展し現実味を帯びて更に広まっていた。ルークはモニラを愛するあまり、モニラの話す事を鵜呑みにしてモデリーンを嫌悪し始めた。
ルークはどうしてこんな性悪女と結婚しなければならないのか、こんな女を王太子妃にして良いのかと父親である国王陛下にも婚約者の変更を申し出たが馬鹿な事を言うなと一蹴された。周りの殆どがモデリーンの噂に惑わされている中、何故か自分以外の王族はモデリーンの方の肩を持っているのが不思議でならなかった。
特にルークの双子の妹であるルーシー王女と第二王子ルーファスはモデリーンと親しく、どんな事があっても彼女を裏切る事はなかった。モデリーンの無実を知った後にルークはどれ程彼女を傷付けていたのか、そしてルークがあんなに蔑んで嫌ったのに彼女は真っ直ぐに愛を向け続けてくれていた事を知る。
「僕も姉上もずっと言っていたじゃないか、モデリーンはそんな人じゃないって。モニラ嬢に熱を上げて聞く耳を持たなかったのは兄上、貴方だ」
そう弟に言われて何も言い返す言葉が無かった。確かに妹も弟もそして両親でさえルークがモデリーンとの事を文句を言うと渋い顔をしていた。「わしの判断が間違っていた様だな、お前を王太子にするべきではなかった」とさえ言われた。自分の不甲斐なさに反論も出来ず、毎日モデリーンの事を想っては嘆き苦しんで過ごした。モニラ嬢は予定通り側室へ迎え入れたが、もはや以前の様に愛する事は出来なくなっていた。
王太子妃不在のまま数年経った頃、調べ物に立ち寄った地下書庫でとある文献を見つけた。そこには禁断の術式として時を遡る事が出来る魔法が記載されていた。ルークは藁にも縋る思いでその術を発動しようとしたが、自分一人の魔力では到底叶わぬ事が分かり……そして、現在国で随一の魔力を持つ弟に力を貸してくれと頼ったのだった。
「頼む、俺の為ではなくモデリーンの為に力を貸してくれ」
弟のルーファスは怪訝そうに術式の書かれた書物に目を通した。
「この国が建国されてまだ若い国だった頃に、王族の中に大賢者となった人物が居たという話は記録に残っている。確かにこの文献の著者はその人物に間違いないとは思う」
「なら、きっとその魔法も発動するのではないだろうか」
「……そうだね、兄上と僕の魔力量があれば可能かもしれない」
「じゃあ、一緒に……」
希望が見えた! と喜んだルークに待ったの声が掛かる。
「覚悟はちゃんとあるんだよね?」
「かくご……?」
「最悪魔法が暴走するかもしれないし、仮に上手くいったとしてもどの時点に戻るのかも分からない」
「……」
「僕らの記憶が残ったまま戻れる保証もない」
「…………」
「もし僕らの記憶が残っていない状態で戻ったのなら、モデリーンが苦しむ人生を再び送るだけになってしまう。兄上にはそれらを受け入れて責任を取る覚悟はあるの?」
ルーファスの言葉に暫く沈黙だけが流れた。そこまで深くは考えていなかった。ただモデリーンをこのまま非業の死を遂げたままでいさせたく無かった。
「あ、ある。何かあれば全て俺が責任を負う」
「…………」
今度はルーファスが黙る番だった。難しい表情で何か考え込み、チラッと窓辺に視線をやった後ようやく口を開いた。
「分かった。だけど決して兄上の為じゃない、モデリーンの為だ」
「ああ、ありがとう! 礼を言うよルーファス」
「それと兄上、これだけは忘れないで。モデリーンをもう傷付ける事は許さないから」
「分かっている、大丈夫だ」
ルークはホッと安堵して部屋を後にした。これから魔法の準備に大忙しになるだろうと気を引き締めた。そして部屋に残されたルーファスは窓辺へと声を掛ける。
「どう思う?」
「そうねぇ……」
窓辺のカーテン裏から姿を見せたのはルークの双子の妹ルーシー王女だった。ルークより先にこの部屋を訪れていたルーシーは、窓辺にあるソファーでボケっと空を眺めていたのだ。昔からここが何故かお気に入りで、特に用もなくやって来ては空を眺めるのが好きだった。それを知らずにやって来たルークはルーシーが居る事に気付かなかった。
「ルークの気持ちは本心だとは思うけど……あんなにあのフワフワ女に骨抜きにされていたのよ、やり直し出来たとして果たしてあの女を振り払えるかしら」
「僕もそう思う……」
二人して大きな溜息を漏らす。
「私達のサポートは必須ね。問題は本当に記憶を持ったまま戻れるかどうか……これに掛かってる」
「姉上には最悪の場合に備えていて欲しい。魔法は僕と兄上でやるよ」
「分かったわ。……ねぇ、ルーファス」
「うん?」
「ルークがダメだったら、遠慮する事ないから貴方がモデリーンを救ってあげなさい」
「……っ!?」
気まずそうに姉の顔を見つめるルーファス。
「好きなんでしょ? だったら奪ってでも手に入れるべきだわ。あんなヘナチョコルークじゃ大事な友人を心配で任せられない」
「……でも僕はモデリーンを優先させるよ。彼女が好きなのは兄上だからね」
「まぁそうだけど」
「それでもダメだったら……考えるよ」
――そして、初めてのループが始まったのだった。
ルークの婚約者になれない恨みから姉であるモデリーンの事をある事ない事吹聴し、その噂は尾ひれが付きまくってモニラ自身が思ってもみない内容にまで勝手に発展し現実味を帯びて更に広まっていた。ルークはモニラを愛するあまり、モニラの話す事を鵜呑みにしてモデリーンを嫌悪し始めた。
ルークはどうしてこんな性悪女と結婚しなければならないのか、こんな女を王太子妃にして良いのかと父親である国王陛下にも婚約者の変更を申し出たが馬鹿な事を言うなと一蹴された。周りの殆どがモデリーンの噂に惑わされている中、何故か自分以外の王族はモデリーンの方の肩を持っているのが不思議でならなかった。
特にルークの双子の妹であるルーシー王女と第二王子ルーファスはモデリーンと親しく、どんな事があっても彼女を裏切る事はなかった。モデリーンの無実を知った後にルークはどれ程彼女を傷付けていたのか、そしてルークがあんなに蔑んで嫌ったのに彼女は真っ直ぐに愛を向け続けてくれていた事を知る。
「僕も姉上もずっと言っていたじゃないか、モデリーンはそんな人じゃないって。モニラ嬢に熱を上げて聞く耳を持たなかったのは兄上、貴方だ」
そう弟に言われて何も言い返す言葉が無かった。確かに妹も弟もそして両親でさえルークがモデリーンとの事を文句を言うと渋い顔をしていた。「わしの判断が間違っていた様だな、お前を王太子にするべきではなかった」とさえ言われた。自分の不甲斐なさに反論も出来ず、毎日モデリーンの事を想っては嘆き苦しんで過ごした。モニラ嬢は予定通り側室へ迎え入れたが、もはや以前の様に愛する事は出来なくなっていた。
王太子妃不在のまま数年経った頃、調べ物に立ち寄った地下書庫でとある文献を見つけた。そこには禁断の術式として時を遡る事が出来る魔法が記載されていた。ルークは藁にも縋る思いでその術を発動しようとしたが、自分一人の魔力では到底叶わぬ事が分かり……そして、現在国で随一の魔力を持つ弟に力を貸してくれと頼ったのだった。
「頼む、俺の為ではなくモデリーンの為に力を貸してくれ」
弟のルーファスは怪訝そうに術式の書かれた書物に目を通した。
「この国が建国されてまだ若い国だった頃に、王族の中に大賢者となった人物が居たという話は記録に残っている。確かにこの文献の著者はその人物に間違いないとは思う」
「なら、きっとその魔法も発動するのではないだろうか」
「……そうだね、兄上と僕の魔力量があれば可能かもしれない」
「じゃあ、一緒に……」
希望が見えた! と喜んだルークに待ったの声が掛かる。
「覚悟はちゃんとあるんだよね?」
「かくご……?」
「最悪魔法が暴走するかもしれないし、仮に上手くいったとしてもどの時点に戻るのかも分からない」
「……」
「僕らの記憶が残ったまま戻れる保証もない」
「…………」
「もし僕らの記憶が残っていない状態で戻ったのなら、モデリーンが苦しむ人生を再び送るだけになってしまう。兄上にはそれらを受け入れて責任を取る覚悟はあるの?」
ルーファスの言葉に暫く沈黙だけが流れた。そこまで深くは考えていなかった。ただモデリーンをこのまま非業の死を遂げたままでいさせたく無かった。
「あ、ある。何かあれば全て俺が責任を負う」
「…………」
今度はルーファスが黙る番だった。難しい表情で何か考え込み、チラッと窓辺に視線をやった後ようやく口を開いた。
「分かった。だけど決して兄上の為じゃない、モデリーンの為だ」
「ああ、ありがとう! 礼を言うよルーファス」
「それと兄上、これだけは忘れないで。モデリーンをもう傷付ける事は許さないから」
「分かっている、大丈夫だ」
ルークはホッと安堵して部屋を後にした。これから魔法の準備に大忙しになるだろうと気を引き締めた。そして部屋に残されたルーファスは窓辺へと声を掛ける。
「どう思う?」
「そうねぇ……」
窓辺のカーテン裏から姿を見せたのはルークの双子の妹ルーシー王女だった。ルークより先にこの部屋を訪れていたルーシーは、窓辺にあるソファーでボケっと空を眺めていたのだ。昔からここが何故かお気に入りで、特に用もなくやって来ては空を眺めるのが好きだった。それを知らずにやって来たルークはルーシーが居る事に気付かなかった。
「ルークの気持ちは本心だとは思うけど……あんなにあのフワフワ女に骨抜きにされていたのよ、やり直し出来たとして果たしてあの女を振り払えるかしら」
「僕もそう思う……」
二人して大きな溜息を漏らす。
「私達のサポートは必須ね。問題は本当に記憶を持ったまま戻れるかどうか……これに掛かってる」
「姉上には最悪の場合に備えていて欲しい。魔法は僕と兄上でやるよ」
「分かったわ。……ねぇ、ルーファス」
「うん?」
「ルークがダメだったら、遠慮する事ないから貴方がモデリーンを救ってあげなさい」
「……っ!?」
気まずそうに姉の顔を見つめるルーファス。
「好きなんでしょ? だったら奪ってでも手に入れるべきだわ。あんなヘナチョコルークじゃ大事な友人を心配で任せられない」
「……でも僕はモデリーンを優先させるよ。彼女が好きなのは兄上だからね」
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――そして、初めてのループが始まったのだった。
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