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二章 危機
第八滴 ロッダの村
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会議が終わったあと、リオとカルラは人里に戻るため吸血鬼の森をあとにした。
くれぐれも気を付けるようにと念を押され、頭からマントを被って森から出ると
ドドドド……
と馬のひづめの音が聞こえた。
「……馬?」
「珍しいね。吸血鬼の森の近くを通るなんて。吸血鬼のことを知らないお馬鹿さんか…よほどのバカか。」
「どっちもバカじゃねーか」
カルラの発言にリオがハッと鼻で笑う。
確かに普通の人間なら、吸血鬼の森には近づかない。
殺されると信じているからだ。人間にとって吸血鬼は忌むべき脅威、バケモノにすぎない。
それなのに──
「近づいてくるな。」
リオが音のする方を目を細めて見ていると
「数からして十人くらいだねぇ。どこかの国の騎士団か何かかな。」
「おい、騎士団って……やばいんじゃねーのか?」
カルラは考え込むように「うーん。」と唸る。
先の吸血鬼会議で、吸血鬼の力を奪う「武器」なるものを持っているのが、騎士団か王と推測したばかりなのだ。
「でも、なんでこんな所まで来たんだろうね。言っちゃ悪いけど、ここって辺鄙で何もないでしょ。」
カルラが微笑んでいうと
「吸血鬼滅ぼしに来たんだろ」
リオがそう答える。
しかし。
「たった数十人で?吸血鬼の本拠地に攻めてくると思う?人間達だって分かってるはずだよ。不死の力を奪うだけじゃ、元々の身体能力が違うんだから勝てるはずないって。」
カルラがフハッと笑いながら「無謀すぎるよ」と付け足すと、リオはかぁぁと赤くなる
「わ、分かってるよそのくらい!じゃあなんでいんだよ!」
「怒んないでよ。それが分からないから謎だって言ってるんでしょ。ま、ここで立ち尽くしてても仕方ないし。村に行くよ」
カルラが踵を返して、いつも偵察しているロッダの村の方向へ歩き出す。十キロメートル離れたその村が、吸血鬼の森から一番近い、「人間の住んでいる場所」なのだ。リオも慌てて後を追う。騎士団と思しき集団は、別の方向へ走って行ったようで、ひづめの音は聞こえるがそれは次第に遠ざかって行った。
吸血鬼の歩くスピードは人間より速い。人間が十分かかる距離を、吸血鬼は五分足らずで歩いてしまう。
走れば空を飛んでいるようなものだ。
リオとカルラはおよそ四十分でロッダの村に到着した。二日空けていただけなので、そんなに変わりはないと判断し、村に入る。
と、そこで
「あらぁ~!リオちゃんじゃないの!」
と中年くらいの女性が大きく手を振って、リオの名前を呼びながら走って近づいてきた。
「リオちゃん二日もどこ行ってたのよォ!まあいいわ。はいこれ、今日採れたばかりのベリーナよ」
そう言ってリオの手に、高さ二十センチ幅十五センチほどの紫と赤の入り混じった様な色をした果物を置く。
「おばさん、ありがとう。」
リオが礼を言うと、あらやだわぁと片手を頬に添え、もう片方の手をブンブン振って嬉しそうに、
「いいのよぉ!リオちゃんいつも畑の手伝いしてくれるし!息子みたいなものよ!」
隣のお友達と食べてね~と言って、その場を去って行った。
「リオ、あの人間と仲いいんだ?」
カルラがリオの持っている果物を見ながら言う。
「べ、別にいいだろ…!おばさんはいつもくれるんだよ」
リオが真っ赤になって慌てて抗議すると
「ふ~ん。まぁ別にいいけどさ、」
リオの肩に手を置いて、耳に顔を近づけて言う。
「相手は人間だ。いつ裏切るか分からないよ。」
「──っ!」
リオの顔が強ばる。
相手は人間。──そう。人間は吸血鬼を怖がる。
恐れ、忌み嫌い、果てには吸血鬼を殺せる「武器」なるものまで作っている。
「っ、別に忘れてねぇよ」
離せ、とカルラの手を払うと、カルラはにっこり微笑む。
「おれはお前の方がよほど怖ぇよ。お前だっていつ裏切るか分かんねーだろ。なぁ?「道化師」さんよ」
リオがイヤミたっぷりにそう言うと、カルラはあまり気にしてない様子でケタケタ笑う。
「あはは、何なに?怒ったの?リオはほんと挑発に弱いよね~。子どもみたい」
「ああ?!」
「ほーらまた怒ったー」
リオはイライラしながらカルラに踵を返し、スタスタといつもの村での家に向かう。
「待ってよリオ~」
カルラがケタケタ笑いながら追ってくる。
どうも苦手だ。カルラのお調子テンションは。
そう心で思いながら、リオは家の中に入って行った。
「(やっぱり、リオは気付いてないみたいだね。)」
カルラは、リオの後を追いながら頭の中では別のことを考える。
「(はぁ~あ。ちょっとめんどくさいことになりそうだ。)」
カルラは村の外の方角を見つめて、不敵に笑んだ。
そして、リオと一緒に家の中へ入っていった。
ガサガサ……
黒い影が現れる。
一、二、三……数にして十程か。
そして影は
村を囲むようにしてそれぞれ散っていった
くれぐれも気を付けるようにと念を押され、頭からマントを被って森から出ると
ドドドド……
と馬のひづめの音が聞こえた。
「……馬?」
「珍しいね。吸血鬼の森の近くを通るなんて。吸血鬼のことを知らないお馬鹿さんか…よほどのバカか。」
「どっちもバカじゃねーか」
カルラの発言にリオがハッと鼻で笑う。
確かに普通の人間なら、吸血鬼の森には近づかない。
殺されると信じているからだ。人間にとって吸血鬼は忌むべき脅威、バケモノにすぎない。
それなのに──
「近づいてくるな。」
リオが音のする方を目を細めて見ていると
「数からして十人くらいだねぇ。どこかの国の騎士団か何かかな。」
「おい、騎士団って……やばいんじゃねーのか?」
カルラは考え込むように「うーん。」と唸る。
先の吸血鬼会議で、吸血鬼の力を奪う「武器」なるものを持っているのが、騎士団か王と推測したばかりなのだ。
「でも、なんでこんな所まで来たんだろうね。言っちゃ悪いけど、ここって辺鄙で何もないでしょ。」
カルラが微笑んでいうと
「吸血鬼滅ぼしに来たんだろ」
リオがそう答える。
しかし。
「たった数十人で?吸血鬼の本拠地に攻めてくると思う?人間達だって分かってるはずだよ。不死の力を奪うだけじゃ、元々の身体能力が違うんだから勝てるはずないって。」
カルラがフハッと笑いながら「無謀すぎるよ」と付け足すと、リオはかぁぁと赤くなる
「わ、分かってるよそのくらい!じゃあなんでいんだよ!」
「怒んないでよ。それが分からないから謎だって言ってるんでしょ。ま、ここで立ち尽くしてても仕方ないし。村に行くよ」
カルラが踵を返して、いつも偵察しているロッダの村の方向へ歩き出す。十キロメートル離れたその村が、吸血鬼の森から一番近い、「人間の住んでいる場所」なのだ。リオも慌てて後を追う。騎士団と思しき集団は、別の方向へ走って行ったようで、ひづめの音は聞こえるがそれは次第に遠ざかって行った。
吸血鬼の歩くスピードは人間より速い。人間が十分かかる距離を、吸血鬼は五分足らずで歩いてしまう。
走れば空を飛んでいるようなものだ。
リオとカルラはおよそ四十分でロッダの村に到着した。二日空けていただけなので、そんなに変わりはないと判断し、村に入る。
と、そこで
「あらぁ~!リオちゃんじゃないの!」
と中年くらいの女性が大きく手を振って、リオの名前を呼びながら走って近づいてきた。
「リオちゃん二日もどこ行ってたのよォ!まあいいわ。はいこれ、今日採れたばかりのベリーナよ」
そう言ってリオの手に、高さ二十センチ幅十五センチほどの紫と赤の入り混じった様な色をした果物を置く。
「おばさん、ありがとう。」
リオが礼を言うと、あらやだわぁと片手を頬に添え、もう片方の手をブンブン振って嬉しそうに、
「いいのよぉ!リオちゃんいつも畑の手伝いしてくれるし!息子みたいなものよ!」
隣のお友達と食べてね~と言って、その場を去って行った。
「リオ、あの人間と仲いいんだ?」
カルラがリオの持っている果物を見ながら言う。
「べ、別にいいだろ…!おばさんはいつもくれるんだよ」
リオが真っ赤になって慌てて抗議すると
「ふ~ん。まぁ別にいいけどさ、」
リオの肩に手を置いて、耳に顔を近づけて言う。
「相手は人間だ。いつ裏切るか分からないよ。」
「──っ!」
リオの顔が強ばる。
相手は人間。──そう。人間は吸血鬼を怖がる。
恐れ、忌み嫌い、果てには吸血鬼を殺せる「武器」なるものまで作っている。
「っ、別に忘れてねぇよ」
離せ、とカルラの手を払うと、カルラはにっこり微笑む。
「おれはお前の方がよほど怖ぇよ。お前だっていつ裏切るか分かんねーだろ。なぁ?「道化師」さんよ」
リオがイヤミたっぷりにそう言うと、カルラはあまり気にしてない様子でケタケタ笑う。
「あはは、何なに?怒ったの?リオはほんと挑発に弱いよね~。子どもみたい」
「ああ?!」
「ほーらまた怒ったー」
リオはイライラしながらカルラに踵を返し、スタスタといつもの村での家に向かう。
「待ってよリオ~」
カルラがケタケタ笑いながら追ってくる。
どうも苦手だ。カルラのお調子テンションは。
そう心で思いながら、リオは家の中に入って行った。
「(やっぱり、リオは気付いてないみたいだね。)」
カルラは、リオの後を追いながら頭の中では別のことを考える。
「(はぁ~あ。ちょっとめんどくさいことになりそうだ。)」
カルラは村の外の方角を見つめて、不敵に笑んだ。
そして、リオと一緒に家の中へ入っていった。
ガサガサ……
黒い影が現れる。
一、二、三……数にして十程か。
そして影は
村を囲むようにしてそれぞれ散っていった
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