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しおりを挟む「俺からあなたに言うこともありません。あなたから訊かれることも、一つもありません。し、教えもしません。あなたが受けるべきが罰だけとは思いませんが、赦されることもないと考えます。――金輪際、俺も在義さんも、俺の周りの誰ひとりとして、あなたに関わることはない」
「あの子は」
遮るように、彼は口を開いた。
「あの子は、幸せですか?」
「………」
「ちゃんと、笑っていますか? 俺が……止められなかった、所為で……あの子を辛い目に、遭わせてしまった……」
「………」
「普通の人生に、戻れるチャンスは、あったかもしれない……。でも、そちらに背中を、押してやれなかった……。あの子を手放すのが、惜しいと思ってしまった……」
「………」
「すみません……。あなたも、非道い目にあわせてしまって……。ただ、最後に、あの子だけは逃がせたか……知りたい」
「………」
何ものでもない誰かに、問われているのだろうか。
自分はこの件に関して、何者でいるのかを。
被害者遺族か、咲桜の恋人か、学者としてか――
「やはり、襲われたとき、彼女も一緒だったか」
――その全部をひっくるめて、この事件を解決するものを、選びたい。
「はい……。あの子を連れ出して、逃げて、……ついには見つかった。……口封じ、というやつか……襲われて、あの子だけは、見つからないように、と……」
「……あとは、全て警察に話すことをすすめる」
ここまでで、もう十分だろう。
「待ってください。さっきの方は、あの子の――」
「桃子さん」
「……ももこ……?」
「在義さんの妻の名前は、桃子さん。それだけが、真実です。あなたが知っていることを話すことはすすめるが、これ以上、あなたが知らないことを詮索するのは赦さない。……俺も、あなたには害意しかない」
何も思わないのかと思っていた。
今あるのは、怒りだけだった。
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