それつけたの、俺だよ?-六花の恋5ー【完】

桜月真澄

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番外編2

side千波6

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……ついに本音が出たよ。お父さんって残念……。

「お父さん、さすがにそれは情けないわ」

「うっ……」

お母さんに言われてダメージを喰らったお父さん。わたしもそう思うよ。

「お父さんが連れて来いって言うから来てくれたのよ? それをそんな扱いして」

「っ……」

あーあ。いつも通りお母さんに言い負かされている。

うちは割と、お父さんがお母さんにべた惚れ夫婦だから、喧嘩してもお父さんが勝ったことないんだ。

「いえ。父たちが騒がしいほうだったのは聞いておりますので、ご迷惑をおかけしていましたら申し訳ありません」

だから玲哉くんが謝ることないのに……と思ったけど、玲哉くんのそんな紳士的な態度にお父さんは完全敗北だった。

ダイニングテーブルの椅子に座ったまま真っ白に燃え尽きてしまった。

「今日は急におたずねしましたので、紅茶をいただいたらお暇(いとま)しようと思います」

更に玲哉くんの穏やかな態度がお父さんにトドメを刺したようだ。ビクッと肩が跳ねていた。

「ごめんなさいね。こちらから呼んだのに……。次はお昼を食べて行ってね」

「ありがとうございます」

軽く頭を下げる玲哉くん。うーん、同い年かと疑うほど落ち着いているなあ。

お母さんとはうまくやっていけそうなことには安心したけど……父よ。

帰る玲哉くんを見送るために玄関にいるのはお母さんとわたしだけだ。

お姉ちゃんはお父さんが怒鳴りださないようにリビングで睨みをきかせている。

「わたし途中まで――」

送る、と言おうとしたら、玲哉くんがにこっと笑った。

「大丈夫だよ。それより空気悪くしちゃってごめん」

「玲哉くんは悪くないよ。何度も言うけど」

わたしが否定すると、玲哉くんはなんとも言えない顔になった。

本当に玲哉くんに非なんてない。

なんであそこまで騒ぐんだか……相当なシメられ方したのかな?

ぽん、とお母さんがわたしの肩に手を置いてきた。

目線だけで振り返ると、真っすぐに玲哉くんを見ていた。

「玲哉くん。娘のこと、よろしくお願いしますね」

お母さんが穏やかな声と表情で言った。

……こういうの、なんか嬉しい……。

玲哉くんと一緒にいることを認めて、応援してもらえているみたいで……。

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