朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】

桜月真澄

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二 優しさをもらった気がした。

side咲桜3

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「マナさんが言うには、結果的に私と先生の双方で利害一致してますから、私もそれで納得しましたし。……心配なのは、この話が先生の結婚とかの障害にならないか、なんですけど……」
 

見上げると、先生は眉根を寄せた。


……不愉快にさせてしまったかな。


ちょっと不安に思っていると、先生は断言した。


「ならない。そういう面倒なことに自分から踏み入る気はないからな。だから俺の方の心配はしなくていい」
 

結婚を面倒と言い切った。


……ふーん? 彼女とかいないのかな。


あ、いたらマナさんはこんなことは頼まないか。


「そうですか? なら、いいんですけど」
 

私は少しほっとしたように息を吐いた。


……ん? 何にほっとしただろ。


「あ、あと、マナさんから先生のスマホの番号とか教えてもらったんですけど、大丈夫ですか?」


「そのくらい構わない。愛子対策で連絡も必要になるだろうしな」
 

愛子対策。


その言い方に、少し笑ってしまった。


マナさんの破壊力はよく知っておいでのようだ。


「お口に合うといいんですけど」


言いながら、味噌汁の味見をしてもらおうと、小皿に注いだ。


「どうぞ」と渡すと、先生は戸惑っていた。器を受け取ろうともしない。


「味見とか苦手ですか? あ、材料にアレルギーあるとか?」
 

そう思って材料を見分する。


その間に先生は小皿を受け取って、「いただく」と口に含んだ。


「……うまい」
 

小さかったけど、そんな声が聞こえた。


急に、肩から緊張が抜けた。


「ほんとですか? よかったー」
 

先生の反応で、私は安堵した。


先生の好みだったのは嬉しい。


「やっぱりすきな味とかありますからねー。よかったです」
 

在義父さんもそろそろ来るだろうしと、お椀によそっていく。


そんな私を見て、先生は言った。


「華取……なんか楽しんでないか?」


「楽し? ですか。……そう見えます?」
 

自分の頬を引っ張ってみる。楽しそうに見えたのかな? 


すると、頬をつねっていた指を先生に止められた。


お、おお? 突然の先生の行動に戸惑った。


傍から見たら手を繋いでいる格好ではないか? 


私の方を見てくるために先生の顔に影が出来て、昼間みたいに近づく。

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