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八 先生、咲桜になにしたんですか?
side咲桜1
しおりを挟む「え……ほんと?」
昼休み。
様子の――というか挙動のおかしい私を、笑満が中庭へ連れ出した。いつもは頼と三人でご飯を食べるけど、今日は笑満が断って二人きりになった。
なんでそんなことをするかと言えば、私が、歩けばが壁や柱に激突する、ペンケースやら教科書やらを持てば落とす、などなど明らかに動揺が見られるからだろう。
笑満に、「紅いんだか蒼いんだかわからない顔色をしている」と言われた。……どんな状態?
「ほんと。……昨日、流夜くんのところにいてしまいました……」
私の告白に、笑満が三秒ほど黙った。
「―――えええええ⁉ 色々と訊きたいことだらけだけど、名前で呼ぶようになったの……? な、なにが――あったの?」
笑満は動揺を隠さずに、私の腕を摑んできた。逃がさんと言わんばかりだ。私は、自分の額に片手を当てた。
「それが……憶えてなくて……」
「……え?」
「昨日、ね、雨降ったから流夜くんのとこで、一緒に夕飯食べたんだ。そんで、ちょっと首のことで発作起こしちゃって……、母さんのこと、話した。それから眠っちゃったのかなあ……意識がぷっつり切れて、起きたら『流夜くん』て呼んでて、一緒の布団にいて、私が流夜くんに抱き付いていた、というのが今朝の報告です。……私はなにをしたんでしょうか……」
話すうちに、項垂れて行く。懺悔でもしているみたいだ。
「なんか……なにを悔いればいいのかとか、もうわけわかんなくて……笑満さん、私はどうすればいいんでしょうか」
「取りあえず状況整理しようか」
詳細を聞いて落ち着いた笑満は、ぽん、と私の肩を叩いた。混乱中の私からすればその冷静さが憎らしい。ので、ぽん、とお返しに笑満の肩を叩いてみた。何の意味もない行動だ。
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