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2 御門の朝
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しおりを挟む『むう……返す言葉もない。この涙雨、まだ体力配分がうまくゆかぬ。力尽きたのが御門の主のおそばで幸いだった。感謝しかない』
「なら、黒の霊力を補給出来るように何か対策した方がいいな。符でも持つか、術でもかけるか……このまま帰すには不安だから、今日は俺と一緒に学園においで。そこで黒に返そう」
『重ね重ね申し訳ない。しかし御門の主はお優しいのお。主様へだけ辛辣なのはなんでじゃ?』
「………」
いや、なんでと言われても。
「涙雨殿、生物には相性がある。俺と黒は相性が悪いというだけだよ」
『そうなのか? ならば御門の主、まず涙雨と相性よくなろうぞ。涙雨、御門の主のこと好きだぞ』
「そうか。涙雨殿は可愛いな」
『涙雨と相性よくなれば、涙雨の主様とも相性よくなるぞ、たぶん』
翼をはたはたとさせて喜んでいるような涙雨。
いや、そろそろやめないと……
「白桜様。このクソ鳥、焼き鳥にしていいですか?」
『ひっ!?』
華樹の焼き鳥発言に息をのむ涙雨。
御門邸内であまり黒藤のこと言うと、こういう反応になるんだよ……。
心の中でうなだれる白桜。
白桜が生まれたときは女性だったと、御門内部でも知る者は少ない。
別邸の人間も百合緋以外は知らないくらいだ。
先代であり当時の当主だった白里が徹底的に隠したからであるが……黒藤は性別男で通している白桜に嫁嫁騒いでるから、まあいろいろとやばい奴扱いされている。
当主を継いだ白桜が黒藤を排除しないからみんな黒藤に対して強く出ないだけで、黒藤に威嚇的な御門の者は多い。
それでなくても、御門と小路で婚姻なんてありえない。
「華樹、朝からすまなかった。涙雨殿を焼いてはだめだ」
「小路の若主(わかあるじ)の式だからですか」
「かわいそうだからだよ。さ、学校に行かないと。牡丹と結蓮にも声をかけよう」
白桜に対して厳しい目を向けてきた華樹をいさめ、白桜は涙雨を自分の肩に乗せる。
白桜と百合姫が高等部一年、華樹と牡丹が二年、そして結蓮が中等部二年になる。
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