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2 御門の朝
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しおりを挟む縁なんか、涙雨が無事だと聞いてへたりこんでいた。
普段周囲に関心を示さない無月も、隠形したまま庭からきょろきょろと気にしていた。
そして黒藤の家の新顔、猫のこたこと小太郎は、いつも遊んでくれる鳥がいなくて家じゅう探し回っていた。
帰ったら一番に、こたに涙雨を逢わせないと。
「……黒藤様は、涙雨殿を責めないのですか?」
「へ? なんで?」
少し下がった隣を歩く架がそんなことを言ってきた。
涙雨は黒藤の肩の上で寝ている。
「いえ、勝手にいなくなったこととか、少しも責めないんだな、と」
「そーか? さっき俺怒ったけど……だって今朝のは俺の失態だし。俺が涙雨の行動範囲を読んで霊力やってたら、涙雨も行き倒れなんてしてないわけだし」
つまり俺の責任だろ? と問い返せば、架は「うーん」とうなっているような顔をした。
声には出していないけど、何かしら思うところがあるようだ。
「黒ちゃんってそういうとこあるよね」
「うん?」
今度は真紅が半眼で言ってきた。
「うん、まあそれはそれで。とにかくるうちゃんが無事でよかったー」
真紅にまで心配をかけてしまった。
まったく不甲斐ない。
けど、不審な点がある。
白桜が気づいているかどうかはわからなかったけど……涙雨にやっている黒藤の霊力は、鬼の血を継いだ半鬼のもの。
黒藤の住まいから御門別邸に行ったくらいで尽きるものじゃないはずだ……。
寄り道をしながら飛んでいたとしても、ピンポイントで御門邸の近くで行き倒れるのもおかしい。
涙雨の様子からして、黒藤と白桜を接触させようとか考えてわざと行き倒れたってのもなさそうだ。
ガチで霊力枯渇していて、今は黒藤の肩でぐっすりだ。
涙雨の霊力の消費が激しくなっている? それとも、御門邸の霊気にあてられて倒れた?
それにしては、涙雨は真紅について御門邸へ行ったり、よく御門邸に出入りしたりしている黒藤の霊気がすぐそばにあっても大丈夫だった。
(……説明がつかないな。ちょっと気にして調べてみるか)
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