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2 御門の朝

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「かあさま、すごくほんぽうだったそうです。山の中とかひとりで行っちゃうような」

「……そうらしいな」

黒藤も白桃のことは、逆仁から聞いている範囲では知っていた。

てか天音、白桜に話す白桃様のことがそこでいいのかよ。もっとあるだろう、白桃様のいいエピソード。と、脳内でツッコんでいた。

「白桜、今、天音は?」

「ゆりひちゃんのところにいます。今日はゆりひちゃんは一日ねむっている日なので、ぼくもちかづけないんです」

「そうか……」

百合緋は、このときにはすでに御門邸にいた。

物忌(ものい)みである百合緋は、たまに一日眠る日があった。

そのとき、まだ幼く力のコントロールも不完全な白桜は、影響を受けてはいけないからと遠ざけられていた。

「天音がいるんなら大丈夫だな」

「はいっ」

天音も、黒藤が白桜に対して異常行動を見せていなかったのでぶった切ろうとはしてこなかった頃だ。

黒藤はあくまで小路の次代、そういう対応だった、

「にいさま、あれ……」

「うん?」

ふと、白桜が空に向かって指をさした。黒藤もそれを目で追う。

その先には背の高い植木があって、白桜の指はその先端に向いていた。

「ねこさん……おりられなくなってしまったのでしょうか」

「ねこ? ……ああ、どこかから迷い込んだのかな。待ってろ、今おろしてくるから」

かなり高い場所の木の枝で、猫がふるふると震えていた。

のぼったはいいが降りられなくなったようだ。

黒藤が縁側を立つと、白桜もついてきた。

それを合図のように、黒藤の後方に無月が姿を見せる。

御門邸内では、逆仁によって無月の霊力は制限されている。無用な争いの意思はないと見せるためらしい。

「黒藤」

「大丈夫、樹にのぼるだけだから」

心配する素振りの無月に言って、黒藤はたっと地を蹴る。

一番下の枝につかまって体をもちあげ、枝に着地。

同じように枝をのぼっていく。

それを白桜がキラキラした目で見てくる。それなりに体術も鍛えておいてよかったと思った。

「おーい。だいじょうぶかー?」

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