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2 御門の朝
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しおりを挟む『白』と呼び始めたのは、その日からだ。
白桜は、しばらくは『にいさま』と呼んだままだったけど、成長するにつれてその呼び名が立場上まずいとわかってきたらしく、黒藤のことを呼ぶとき戸惑うようになってしまった。
だから黒藤の方から、『黒でいいよ』と伝えた。ちょっとだけ特別感を出したかった。
小学校に入る年になると、黒藤は御門邸へは滅多にいけなくなった。
小路の後継者問題が表面化してきたからだ。
逆仁はあくまでつなぎの当主で、黒藤が母・紅緒の次の後継者として決まっていたから、七歳にもなれば襲名の準備に入らないといけない。
だが黒藤は父が鬼神であるため、その襲名に反対する声もあった。
さすがに過去、鬼を父に持った当主は小路にも御門にも存在していない。
黒藤を半鬼(はんき)と呼び、当主にふさわしくないと主張する者が小路の幹部にもあった。
そして黒藤は黒藤で、当主にはならないと頑と主張するようになっていた。
理由は白に惚れたからだ、と。
白桜を護るのは自分でありたいと自覚した次には、白桜が可愛くて可愛くて仕方なくなっていた。
その頃から黒藤の、白桜大好き異常行動は始まった。
『どうしてそんなんになってしまったかの……』
逆仁と白里に、同時にため息をつかれたことがある。
どうしようもない。白桜が可愛いのが悪い。
黒藤が襲名することへの反対もあったから、あっという間に当主に担ぎ出されるなんてこともなかった。
ごたごたしている間に、黒藤も高校二年に至ったわけだ。
そして黒藤としては絶好の好機である、もう一人の後継者候補が現れた。
従妹の影小路真紅だ。
真紅は始祖の転生という、黒藤より当主を襲名してしかるべき存在だった。
始祖の転生は確認される限り過去、そのすべてが当主となってきた。
だから真紅が襲名することを全力で推すことを決めた黒藤だ。
真紅ならば司家も文句は言わないだろう。
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