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2 御門の朝
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しおりを挟む始祖当主以外を慕っていなくても、小路と御門は司家の臣(しん)という立場。
司家は従家当主の専任に口を挟める。
さらに二歳年下の現当主・國陽は始祖の生まれ変わり。
黒藤も白桜も、國陽には忠誠を誓っている。
そしてその許嫁――妻を持たない当主と言われていた始祖の生まれ変わりが、初代以来はじめて望まれた伴侶がある。
大和斎月(やまと いつき)という、國陽と同い年の少女だ。
まーこの姫、とんでもなく、とんでもない。
黒藤の奔放さがまるでかすむくらいありえないことを軽々とやってのける。
だからと言って当主の妻にふさわしくない、なんて、誰も言えないくらいの気品と器量と気概も併せ持っている。
まあ、今回も結婚などしないだろうと思われていた始祖当主の生まれ変わりの國陽が惚れるくらいなんだから、相当やべえので当たり前だと思っておこう、というスタンスの黒藤だ。
そこで関わってくる問題がひとつ。
前(さき)に関わった神宮美流子なる霊体。
その弟が、姫が兄と呼び慕う存在だ。
なーんで姫もそんなもん作っちまうかね……とひとりごちた黒藤。
その存在のせいで國陽が案ずるようなことは一切ないようだけど。
むしろ姫の暴走を止められるのは神宮流夜だけだと頼りにしてしまっているし。
さらに神宮流夜生存を知る神祇一派には目論見がある。
すなわち、神宮家の再興。
神祇を統括していた三家のうちの一家であり、古桜や御影と違って完全に崩壊してしまった神宮家だが、やはり欠けるには大きすぎる存在である。
神宮流夜は本家筋ではないけど、神宮一派の生き残り。
司一族はじめ、神祇家としては担ぎ出すのに最適な存在だ。
だが神祇一派が神宮流夜に手出しできない理由は、姫が兄とまで呼ぶ者に簡単に手を出せないのと、神宮流夜のごく近くに、華取の生き残りがいるからだ。
黒藤も顔見知りで有能だから色々と使っているのだけど、華取は影小路の従家で、こっちはまあ色々あって華取在義(かとり ありよし)ひとりを残して焼き尽くされた。
影小路の系譜というだけで、始祖当主の生まれ変わりをのぞいた司家はじめ、神祇一派からは友好的な目は向けられない。
そして(一応、小路の次代とされている)黒藤が在義を使いっ走りにしているとも知られているので、簡単に排そうとはできないでいる。
つまり神祇一派が神宮流夜に手出しできない理由は、まわりまわれば黒藤が在義を重用しているからだ。はっはっは。
(……とかなんとかごまかしてきたけど、俺と白が月の宮へ行ったことがあるっていうのが大問題なんだよなあ)
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