月華の陰陽師2-白桜の花嫁-【完】

桜月真澄

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3 動き出す当主

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(今の世ではまだ未成年なんだよ、太陰)

『ほほほ。法理などすぐにとってかわる。誰がおぬしの背になるか、わたくしも楽しみじゃ』

(その頃までいるつもりなのか、お前は)

『当たり前じゃろう。わたくしはおぬしの母と取引をしたのじゃ。おぬしに終生とっついてまわるわ』

(……やめてくれ……)

マジでなんてことしてくれたんだよ母様……。

敬愛する母だが、こういうときは恨み言が出てしまう。

そして何より問題なのが――

(俺は女性を好いたことはないし、男に恋愛感情を持てるとも思えない……)

自分が、人を愛することが出来るかどうかだった。

月御門のような古い家では、家同士で決めた結婚もいまだにある。

本人たちの意思など介在させる必要はないとでもいうように、決められてしまう。

そんな相手がいたら、白桜もまだ悩みは少なかったかもしれない。

現在とれる手段の、女性を妻にとり自分の秘密を明かし生涯ともに戦ってくれる人を望むのが、問題としては少ないかもしれない。

でも、白桜はそれだけは選べない。

女子に告白されたことはある――男子に告白されたこともあるが――どれだけ優しい人であっても、そんな話を持ち掛ける気にはなれなかった。

こんな話をするのは、侮辱に等しいと白桜は感じている。

あなたの一生を、俺のためにつぶしてくれと言っているようなものだと。

(……百合姫は論外だし、そもそも親友として大事な存在だし……)

幼い頃から御門の家にいる百合緋が、内内の白桜の許嫁なのでは、という憶測をされることには慣れている。

白桜も、もちろん百合緋も無視している程度の戯言だ。

白桜の事情をすべて知ったうえで、友達としてそばにいてくれる百合緋。

御門の家としてのことには関われないけど、白桜には大事な人だ。

恋情ではなく、友情で。

(………)

どうしたものか。

十六歳にして悩む、自分の結婚問題。

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