月華の陰陽師2-白桜の花嫁-【完】

桜月真澄

文字の大きさ
84 / 93
5 冬湖の力

しおりを挟む

ならば白桜は、『幸せに生きる』方を選ぶ。

当主として生きることは、白桜の『己の望まない命』ではない。

だが、白桜が決めたのは『幸せに生きる』命だ。

当主として生きることを、その中に含めると決めた。

強くなろう。そして、優しくなろう。

冬湖に言った。『困っている人を助けることだ』と。

それをこれからも有言実行していこう。

白桜は今、幸せだから。

だから、大丈夫なんだ。

「白―! 百合姫―!」

朝から元気いっぱいな声とともに、黒藤が駆けてきた。

「おはよっ」

「おはよう」

「元気ね、黒藤。おはよ」

白桜はいつも通り落ち着いていて、百合緋は少し疲れたように返事をする。

「白、あれから大丈夫? 百合姫も怪我とかしてない?」

素直に心配の表情を見せる黒藤に、百合緋は糸目になった。

「黒藤も一枚噛んでたらしいわね?」

「うっ……お、俺が企んでたわけじゃないからなっ? 一葉が勝手にするの黙認してただけだし」

「まあ白桜に今のところ害がなかったから責めないけど……白桜が許したことだし……」

「あ、ありがとう……?」

「でもね、黒藤」

「は、はい」

「白桜を死なせたら、わたしは黒藤を呪うわ」

「も、もちろんそんなことあり得ない!」

黒藤が真っ青になって否定した。そんなこと、考えるだけで俺が死んでしまう。

「この前は知ってる情報を明かさずに白桜を使ったし」

「う……」

「今回は結果、白桜が危ない目に遭ってるし」

「……うぅ」

「黒藤、本当に白桜のこと好きなの?」

「もちろんだ! 甘やかすだけが俺の愛情じゃないだけ!」

「そう、ならいいわ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『悪役令嬢』は始めません!

月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。 突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。 と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。 アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。 ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。 そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。 アデリシアはレンの提案に飛び付いた。 そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。 そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが―― ※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

水神様の巫女

藤ノ千里
恋愛
オリジナル小説「タバコと木札」の続編 美菜月が受けてしまった水神様の呪いを解くべく、美菜月と弘成は京都へ向かう。 徐々に明かされていく弘成の過去。そして、美菜月が受けた呪いの正体とは何だったのか。 普通の女子大生のはずの美菜月が経験する、恋人弘成との不思議な夏休みの物語。 ※「タバコと木札」本編より少し大人向けの内容となっています。

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? ********* 以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。 内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。

だから愛は嫌だ~虐げられた令嬢が訳あり英雄王子と偽装婚約して幸せになるまで~

来須みかん
ファンタジー
 伯爵令嬢ディアナは、婚約者である侯爵令息ロバートに、いつもため息をつかれていた。  ある日、夜会でディアナはケガをし倒れてしまったが、戦争を終わらせた英雄ライオネル第二王子に助けられる。その日から、ディアナは【相手が強く思っていること】が分かるようになった。  自分を嫌うロバートとの婚約を解消するために、利害関係が一致したライオネルと契約婚約をすることになったが、彼の視線はとても優しくて……?

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

処理中です...