どうしたらヤンキーになれますか!?-六花の恋6-【完】

桜月真澄

文字の大きさ
2 / 77

突撃1 side水都

しおりを挟む


「うわ、かわい……」

「新入生? え、モデル?」

「きれー……どこ中だったんだろ」

一人で歩く学校までの道のり。今までずっと隣にいた羽咲(うさ)ちゃんはいない。

私、藤沢水都は、誰も知り合いのいない高校へ進学した。

……なんか視線を感じる……なんだろ、どこか変なのかな? 制服の着方がおかしい? それとも髪型? わからなくて、縮こまりながらこそこそと歩いた。羽咲ちゃんが一緒だったら教えてもらえたのに……。

羽咲ちゃんは、めちゃくちゃ頭のいい学校に行ってしまった。

あの、総真くんと同じ県下トップの高校だ。

本音はわたしも同じ高校に行きたかった……でもわたしではどう頑張っても無理だった……。

総真くんと同じ学校に通うっていう羽咲ちゃんの夢を応援しない選択肢はわたしにはなかったけど、勉強を頑張る羽咲ちゃんをずっと怯えた目で見ていたのも本当……。

卒業したら、羽咲ちゃんは離れてしまう運命なんだ、って……。

総真くんが憎い! 羨ましい! 羽咲ちゃんにあんなに愛されて~~~~っ! 私の親友なのに~~~っ!

……結局わたしは、地元の公立高校に進学した。

同じ中学から進学した子はいるみたいだけど、今まで友達が羽咲ちゃんしかいなかったわたしには、どうやったら友達が出来るのか全然わからない……。

ユイは羽咲ちゃん目当てだったからノーカウント。

……ただ。

羽咲ちゃんと離れたことで、たぶんわたしに届く由羽くんたちの目もにぶくなったはず。

わたしの念願が果たされるときは近いかもしれない……!

父様、母様。水都はこの高校で立派なヤンキーになってみせます!

今までは羽咲ちゃんや由羽くんや父様に邪魔されてヤンキーになるのは諦めていたけど、知り合いのいないこの学校なら……フフフ。

私の憧れは、なんと言っても琴母様。

料理がお上手でお裁縫も大得意でお着物が似合ってたおやかで、何よりお強い! 私が幼稚園生の頃近づいてきたヘンなおじさんを一蹴りで沈めたり、小学生の頃私を誘拐しようとしたヘンなお兄さんを拳一つで撃退したり、とってもお強い! 私も母様みたいになりたい……っ。

空手を習っている羽咲ちゃんと由羽くんに一通り教えてもらっているから、武道は少し心得がある。

でも、羽咲ちゃんも由羽くんも経験していないものがある。

ここならそれを叶えられるかもしれない。

母様は中学生のとき、ヤンキーだった。

ならば母様に憧れるわたしは、一度くらいヤンキーを経験すべき! いざゆかん、ヤンキーの道!

コソコソと歩いていたのを振り切るように、一人心の中で、えいえいおー! と意気込んだ。


+++


どうやらこの学校にもヤンキーと言われる人はいるらしい。

クラスメイトの噂話を聞いた程度だけど、『コガサク』という同じ学年――つまりは新入生の人が有名みたい。

新入生なのに学校で噂になるってすごいよね。

よしっ。情報収集を終えた、入学してから一週間後、『コガサク』くんを探して放課後、校内を歩き回っていた。

入手出来た情報では、紅い髪、目つき悪い、背が高い、らしい。紅い髪は特徴的だよね。

見つけたのは屋上。

紅い髪の男の子が――紅いというより、赤みが勝った感じの黒髪で、もしかしたら地毛なのかもしれない――長い足をゆるりと組んで、壁にもたれて座って本を読んでいた。

「コガサクくんですか……?」

呼びかけると、その人はゆっくり本から顔をあげた。

怒った時の由羽くん以上に鋭い目つきで、総真くん以上にクールに見える。

総真くんがクールなのはパッと見だけだけど。中身はニコニコ大魔王だからね。

「……なに」

声も低くて、同い年にしては迫力を感じた。

私は両のこぶしを握る。

「あの! どうしたらヤンキーになれますか!?」

「………」

呆気にとられた顔。

ぽかんとした顔。

それから、顔をひきつらせた。

「え……なに言ってんの?」

「コガサクくんですよねっ?」

「そうだけど……」

コガサクくんは戸惑ったようにわたしを見て来る。前のめりになってわたしは続けた。

「わたし一年の藤沢水都っていいます。ヤンキーを経験したいんです! ご教授ください!」

「………」

コガサクくんはものすごく困ったように視線をさまよわせだした。

逃げ場でも探しているような……。

「ちょ、ちょっと待って」

「はい?」

「とりあえず、座ってもらっていい? 俺今、意味がわかんない……」

「あ、はい」

その場に正座すると、コガサクくんは本を閉じて脇に置いて、わたしの方に身体を向けた。

「俺、藤沢さんのことは知ってるけど、なんで俺のこと知ってんの?」

「情報を集めました! ヤンキーで有名な人はコガサクくんが一番でした」

わたしの返事に、コガサクくんは胡乱な顔になった。

「……さっきからコガサクって呼んでるけど、誰が言ってた?」

あ! そうだよね、いきなりあだ名なんて失礼だった!

「それは申し訳ないんですが、『コガサク』くんっていう名前しか知ることが出来なくて……お名前教えてもらってもいいですか?」

コガサク、というのが通り名なのかあだ名なのかはわからないけど、本名はどこからも聞くことが出来なかったんだ……。

コガサクくんは、軽く息を吐いた。

い、嫌な思いさせちゃったかな……?

「……古閑作之助」

こが、さくのすけ……。なんだろう、どこかで聞いたことある響き……あ!

「それで『コガサク』なんですね。……もしかしてですけど、文豪の『織田作之助』に由来してます?」

「うん。小さい頃の近所のやつがそう呼び始めて、今じゃあだ名」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

処理中です...