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突撃1 side水都
しおりを挟む「うわ、かわい……」
「新入生? え、モデル?」
「きれー……どこ中だったんだろ」
一人で歩く学校までの道のり。今までずっと隣にいた羽咲(うさ)ちゃんはいない。
私、藤沢水都は、誰も知り合いのいない高校へ進学した。
……なんか視線を感じる……なんだろ、どこか変なのかな? 制服の着方がおかしい? それとも髪型? わからなくて、縮こまりながらこそこそと歩いた。羽咲ちゃんが一緒だったら教えてもらえたのに……。
羽咲ちゃんは、めちゃくちゃ頭のいい学校に行ってしまった。
あの、総真くんと同じ県下トップの高校だ。
本音はわたしも同じ高校に行きたかった……でもわたしではどう頑張っても無理だった……。
総真くんと同じ学校に通うっていう羽咲ちゃんの夢を応援しない選択肢はわたしにはなかったけど、勉強を頑張る羽咲ちゃんをずっと怯えた目で見ていたのも本当……。
卒業したら、羽咲ちゃんは離れてしまう運命なんだ、って……。
総真くんが憎い! 羨ましい! 羽咲ちゃんにあんなに愛されて~~~~っ! 私の親友なのに~~~っ!
……結局わたしは、地元の公立高校に進学した。
同じ中学から進学した子はいるみたいだけど、今まで友達が羽咲ちゃんしかいなかったわたしには、どうやったら友達が出来るのか全然わからない……。
ユイは羽咲ちゃん目当てだったからノーカウント。
……ただ。
羽咲ちゃんと離れたことで、たぶんわたしに届く由羽くんたちの目もにぶくなったはず。
わたしの念願が果たされるときは近いかもしれない……!
父様、母様。水都はこの高校で立派なヤンキーになってみせます!
今までは羽咲ちゃんや由羽くんや父様に邪魔されてヤンキーになるのは諦めていたけど、知り合いのいないこの学校なら……フフフ。
私の憧れは、なんと言っても琴母様。
料理がお上手でお裁縫も大得意でお着物が似合ってたおやかで、何よりお強い! 私が幼稚園生の頃近づいてきたヘンなおじさんを一蹴りで沈めたり、小学生の頃私を誘拐しようとしたヘンなお兄さんを拳一つで撃退したり、とってもお強い! 私も母様みたいになりたい……っ。
空手を習っている羽咲ちゃんと由羽くんに一通り教えてもらっているから、武道は少し心得がある。
でも、羽咲ちゃんも由羽くんも経験していないものがある。
ここならそれを叶えられるかもしれない。
母様は中学生のとき、ヤンキーだった。
ならば母様に憧れるわたしは、一度くらいヤンキーを経験すべき! いざゆかん、ヤンキーの道!
コソコソと歩いていたのを振り切るように、一人心の中で、えいえいおー! と意気込んだ。
+++
どうやらこの学校にもヤンキーと言われる人はいるらしい。
クラスメイトの噂話を聞いた程度だけど、『コガサク』という同じ学年――つまりは新入生の人が有名みたい。
新入生なのに学校で噂になるってすごいよね。
よしっ。情報収集を終えた、入学してから一週間後、『コガサク』くんを探して放課後、校内を歩き回っていた。
入手出来た情報では、紅い髪、目つき悪い、背が高い、らしい。紅い髪は特徴的だよね。
見つけたのは屋上。
紅い髪の男の子が――紅いというより、赤みが勝った感じの黒髪で、もしかしたら地毛なのかもしれない――長い足をゆるりと組んで、壁にもたれて座って本を読んでいた。
「コガサクくんですか……?」
呼びかけると、その人はゆっくり本から顔をあげた。
怒った時の由羽くん以上に鋭い目つきで、総真くん以上にクールに見える。
総真くんがクールなのはパッと見だけだけど。中身はニコニコ大魔王だからね。
「……なに」
声も低くて、同い年にしては迫力を感じた。
私は両のこぶしを握る。
「あの! どうしたらヤンキーになれますか!?」
「………」
呆気にとられた顔。
ぽかんとした顔。
それから、顔をひきつらせた。
「え……なに言ってんの?」
「コガサクくんですよねっ?」
「そうだけど……」
コガサクくんは戸惑ったようにわたしを見て来る。前のめりになってわたしは続けた。
「わたし一年の藤沢水都っていいます。ヤンキーを経験したいんです! ご教授ください!」
「………」
コガサクくんはものすごく困ったように視線をさまよわせだした。
逃げ場でも探しているような……。
「ちょ、ちょっと待って」
「はい?」
「とりあえず、座ってもらっていい? 俺今、意味がわかんない……」
「あ、はい」
その場に正座すると、コガサクくんは本を閉じて脇に置いて、わたしの方に身体を向けた。
「俺、藤沢さんのことは知ってるけど、なんで俺のこと知ってんの?」
「情報を集めました! ヤンキーで有名な人はコガサクくんが一番でした」
わたしの返事に、コガサクくんは胡乱な顔になった。
「……さっきからコガサクって呼んでるけど、誰が言ってた?」
あ! そうだよね、いきなりあだ名なんて失礼だった!
「それは申し訳ないんですが、『コガサク』くんっていう名前しか知ることが出来なくて……お名前教えてもらってもいいですか?」
コガサク、というのが通り名なのかあだ名なのかはわからないけど、本名はどこからも聞くことが出来なかったんだ……。
コガサクくんは、軽く息を吐いた。
い、嫌な思いさせちゃったかな……?
「……古閑作之助」
こが、さくのすけ……。なんだろう、どこかで聞いたことある響き……あ!
「それで『コガサク』なんですね。……もしかしてですけど、文豪の『織田作之助』に由来してます?」
「うん。小さい頃の近所のやつがそう呼び始めて、今じゃあだ名」
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