どうしたらヤンキーになれますか!?-六花の恋6-【完】

桜月真澄

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発覚1 side作之助

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……誰でもいい。答えてくれないだろうか。

――なんで藤沢さんが俺の部屋にいるんだ……!?

思い返そう。俺は今日、学校を休んだ。なんか頭痛くて風邪っぽくて。

サボるのは俺の信条に反するから、学校には連絡を入れてある。

……が、それが裏目に出たようだ……。

俺はよくケンカを売られて(たまに買って)怪我して学校に行くことも多いから、生徒からは遠巻きにされている。

それはもうどうでもいい。

でも授業態度なんかはちゃんとした方だと思う。

サボらないし遅刻もしたことないし。

そのためか、俺が喧嘩には巻き込まれだと気付いてくれた教師もいる。

その一人が俺の担任だ。

担任は俺のことをよく見ていてくれたらしく、藤沢さんと一緒にいるところも見られていたようだ。

そして藤沢さんに、今日出たプリント類を届けるついでに様子を見て来るよう頼んだらしい。

藤沢さんが話すところによると。

……さすがにマズいだろ!? 藤沢さん女子だよ!? 野郎のところに送り込むなよ! 男友達いない俺も悪いけど!

「コガサクくんって読書家なんですねー」

「近所の図書館で古い本は自由にどうぞってやってて……」

じゃないだろ俺! 藤沢さんを早く返さなきゃだろ!?

「藤沢さん、届け物ありがとう。暗くならないうちに帰った方が――」

俺が促しかけたちょうどそのタイミングでインターホンが鳴った。

~~~誰だこんなときに!

来客を放っておくわけにもいかないけど、先に藤沢さんを返す手立てもない。

まかり間違って藤沢さんがうちにいるのを知られるのは大変だ。藤沢さんの評判に傷つけてしまう。

「ちょっと出て来る」

「はーい」

出来たらその間に帰る準備をしていてほしい。本棚見ていないで。

「今開けます――……ってお前かよ」

「よー、コガサク! メシの差し入れ持って来たぞー……って、え、女子の靴? コガサク彼女できたの!? 逢わせて!」

「は!? おいそんなんじゃ――」

「お邪魔しまーす」

「だから待てって!」

藤沢さんを見られるのはマズい! そいつは俺をかいくぐって俺の部屋まで行ってしまった。慌ててあとを追う。

「ちょっと待っ」

「はじめましてコガサクの彼女さん! ……って、え? 水都ちゃん!?」

「え? コガサクくんの彼女? ……玲(れい)くん!?」

……え。なんでお互いの名前知ってんの?

ぐるん、と、昔なじみが俺の方を振り向いた。笑顔で。その上でガシッと俺の頭をつかんできた。

「コガサク。これどういうこと? なんで俺の幼馴染の水都ちゃんがお前の部屋にいるの?」

「お、幼馴染……?」

戸惑う俺。説明を求めたいのはこっちだよ。

――判明したのは、俺のずっと昔の隣人で、今もたまにメシとか差し入れに来てくれる藍田玲哉(あいだ れいや)は、親たちを通じて、それこそ生まれたときから仲のいい藤沢さんの幼馴染の一人だそうだ。

「へえー。水都ちゃんの進学先がコガサクと一緒だったんだ。驚き」

玲哉は俺の部屋に座り込んで藤沢さんと話している。

藍田玲哉。二つ年上の昔なじみ。

本当にずーっと以前の隣人というだけの関係なんだけど、うちのことを知っている玲哉は、引っ越した今も俺を気にかけてくれている。

ありがたい昔なじみだ。

「わたしも驚きだよ。コガサクくんと玲くんが知り合いだったとか」

「父さんたちが戸建てに移る前は俺もここにいたんだ。コガサクと逢ったことがすごく多かったわけじゃないんだけど、なんか気になる奴でさ。今も付き合いあんの」

「わかるー! コガサクくんって放っておけないんだよね」

「さっすが水都ちゃん幼馴染組! ……って、コガサクと仲良くなってるところにこんなこと言って悪いんだけど、水都ちゃんもうちに来ればよかったのに。羽咲ちゃんと離れて淋しいでしょ?」

「あはは。わたしは総常にいけるレベルないよー」

羽咲ちゃん、とは藤沢さんの幼馴染で親友だったはずだ。

……けどなんか藤沢さん、幼馴染に逢ったっていうのにあんまり嬉しそうじゃない……違うな、無理して笑ってるって感じだ。

「玲哉。お前藤沢さんの幼馴染なら止めてくれよ。この人、俺にヤンキーのなりかた聞いてきたんだぞ」

えっ、と玲哉が息を呑んだ。

それからゆっくり藤沢さんを見た。

「水都ちゃん……まさか実行する気だったの?」

「なに言ってるの玲くん。実行する気しかないよ! あ、でもコガサクくんが不良やめたらわたしも止めててもいいよって言ってる」

「コガサク! いますぐ不良やめよう! ってかお前不良だったの?」

それは深くツッコむな。俺だってなりたくてなったわけじゃない。

「藤沢さん、それ堂々巡りするからやめよう?」

「えー、こんな優しくてジェントルなコガサクがヤンキーなの? 誤解されてるだけじゃね?」

じ、じぇんとる……? 玲哉の誤解こそどういう意味だか……。

でも、俺のことを誤解だと思ってくれるだけでもありがいものだ。

「だよね! コガサクくんジェントルだよね!」

「な!」

「………」

……なんか恥ずかしいからそこのピックアップやめてほしい……。

それからこの幼馴染、息が合うな……。

俺と玲哉は幼馴染って感じではないけど、藤沢さんに仲のいい人がいるのはいいことだ。

……いや、幼馴染と気が合い過ぎて友達作るの放棄している節があったような……。

「ねえ玲くん」

この『玲』って呼び方も特別感があるな。

藤沢さんは身を乗り出し気味に問う。

「もしかしてだけど、コガサクくんを最初にコガサクって呼んだの、玲くん?」

秒でばれた。

「そうそう。いい名前だよな。古閑作之助って」

「わたしもコガサクくんのこと探してたら、本名はわからないのに『コガサク』って名前はたくさん聞いたよ」

だから入学早々何やってんだ。

玲哉が来て、女子と二人きりという危機から逃れた安心感もあって、一応コーヒーを用意してきた。

朝あった頭痛も、昼間寝てたら治ったしそれ以上の症状はなかったからもう大丈夫だろう。

自分で淹れたコーヒーをすする。

「……ん? コガサクのこと探してたの?」

……なんか玲哉の声が不穏になった。

「うん。ヤンキーの弟子入りしたくて」

ぐるん、と玲哉が俺の方を向いた。笑顔で。またガシッと俺の頭をつかんできた。

「コガサク。水都ちゃんをヤンキーなんかにならせたら首カッ飛ばすぞ?」

「俺もやめなさいって言ってるところだ。俺に加勢して」

どちらかと言うと俺は玲哉の敵ではなく味方だ。

玲哉は俺の頭を掴んだまま、はあ、とため息をついた。あの、手離して?

「水都ちゃん、その計画はやめなって言ったよね? 特に由羽と羽咲ちゃんからしつこく」

「そのくらいじゃやめる気ない」

ふるふると顔を横に振った藤沢さん。やめろよ。ほんと強情だな。

てか、計画たててまでやっていたことだったのか……。

「水都ちゃん、なんでそれだけは誰の言うことも聞いてくれないの……」

玲哉がだうんと項垂れた。だからそろそろ俺の頭から手を離して? つられて俺も頭下げちゃっているから。

「わたしの一番の願いだから」

スケールでけえ。

「だからっ! 琴さんみたいになりたいんならほかにも色々あるだろ? 琴さん家政関係万能だし、巽さんみたいになりたいんなら総てを極めるとか!」

え、藤沢さんのご両親ってなんなの? 特にたつみさん(たぶん父親の方かな)、総てを極めているのか? それからやっと玲哉が手を離してくれた。ちょっと首痛くなってた。

「その辺りはもうやったよ。あとやってないのはヤンキーを経験することだけなのっ」

おい。偉そうに言うな藤沢さん。すげえバカな発言だと早く気付いて。

「はあ……羽咲ちゃんが止めても止めきれなかったんだもんな……。あ、ごめんコガサク、身内の話しちゃって。琴さんは水都ちゃんの母親で、巽さんは父親な」

「ああ……」

そうか。幼馴染の話は、玲哉にとっては『身内』扱いになるのか。

……藤沢さんがぶすくれている。やっぱ何かあるのか? この二人……。

「玲哉くん、千波さんは?」

誰だ。

「今日は遠江(とおとうみ)さんと帰るって。だから俺も自分の用事のこっち来た」

誰だ。

そしてわざわざ来てくれてありがとうだけどすまない。

玲哉は引っ越してからも、何かと俺を気にかけてくれる。ありがたい。

「そっか。じゃあもうわたし帰るね。コガサクくん、今日体調不良でお休みだったから、玲くんも長居はしない方がいいよ」

「うん。じゃあ俺も帰るか。水都ちゃん――」

「言って置くけど送らなくていいからね」

「え、あー、……うん」

うん? なんだこの雰囲気。

立ち上がった藤沢さんが、立ち上がりかけた玲哉にぴしゃりと言った。

玲哉は少し落ち込んだ様子……藤沢さんは怒ってる……とは違うかもしれないけど、雰囲気がトゲトゲしている。

えーと……

「じゃあ藤沢さんは俺が送るよ。おかげさまで調子悪いの治ったから」

「コガサクくん、それは――」

「頼んだ! コガサク!」

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