どうしたらヤンキーになれますか!?-六花の恋6-【完】

桜月真澄

文字の大きさ
8 / 77

発覚2 side作之助

しおりを挟む
止めようとしたらしい藤沢さんを遮って、玲哉が俺の両手を掴んできた。

……やっぱ何かあんだろ、ここ。

簡単に踏み込んでいいとは思えないから何も言わないけど。

んで、俺の住むアパートから、藤沢さんの家の途中で。

「いやー、驚きだね。コガサクくんが玲くんと知り合いだったとか」

「だな」

普段着の俺と制服の藤沢さんが並んでいる。

……どうか藤沢さんが学校サボって不良と逢っていたとか思われませんように……。

「ヤンキーって言われてること、玲くんには言ってなかったんですね?」

「……やりたくてやってるわけじゃないし、言うことでもないかなって」

面倒見のいい玲哉に知られたら、なんか面倒かけてしまいそうで。

藤沢さんは帰り際とは一転、ご機嫌なようだ。

……さっきの『ちなみさん』に『とおとうみさん』が誰なのか……訊かない方がいいよな。

「そういえばコガサクくん、ご飯は食べました? 睡眠はとれていたみたいですけど」

「うん。味噌汁の残りに米混ぜて食べた」

うちではねこまんま、と呼ばれている。

地方によって呼び方は違うみたいだけど。まあ残り物メシだ。

「……わたしおかゆとか作って来ればよかったですね。すみません、気が利かなくて」

藤沢さんがしゅんとしてしまった。

「……藤沢さんが来て割とすぐに玲哉来たから」

それで俺としては助けられたんだけど。

俺が言うと、藤沢さんははっと顔をあげた。

「そういえば病み上がりのコガサクくんのコーヒーまで淹れさせてしまいました! 気が利かないにもほどがあります!」

「俺んちなんだから当たり前だよ。俺こそ紅茶とか飲みやすいのにすればよかった。ごめん」

「わたしコーヒー好きですよ? ブラック派ですし」

「………」

……甘いの好きそう、というのは見た目の評価に過ぎない、か。

「俺もブラック派」

「あ、でも外で飲むときは好奇心でシロップとかミルク入れることもあります」

「……美味しかった?」

「どれも美味しいですけど、飲みやすいのはブラックですね」

「じゃあ今度、俺も色々試してみようかな」

「そうですね! 一緒にカフェ巡りとかしましょう!」

…………うん?

「一緒に?」

「はい! 一緒に!」

「………」

それ、俺に向けて笑顔で言うことではないよな?

「そういうのは彼氏と行くものだろ。それか羽咲さんと行きなよ」

「羽咲ちゃんと休日の約束は入ってますけど、部活もやってるから私の方が空いてる日が多いんですよ。それに進学して友達も出来ない奴に彼氏いると思います?」

「………」

………え。

「いないの……?」

「彼氏いてコガサクくんのこと追いかけまわしてたらおかしいでしょう」

言われてみれば。

なんとなくだけど、藤沢さん、彼氏いるものだと思っていた。それか、彼氏がいないまでも――

「てっきり玲哉のこととか好きなのかと思ってた」

「――――」

あれ? 藤沢さんが黙って足を停めてしまった。

「……藤沢さん……?」

うつむいた藤沢さんがどんな顔をしているかはわからない。

聞こえたのは震える声だった。

「どうして……そう思ったんですか……?」

え、なんか、藤沢さんの地雷だった……?

「いや、ごめん。違うんならそれで――」

「どうしてわたしが玲くんを好きなように見えたんですか? もう絶対にそんな素振りしないって決めてたのに……」

誤魔化そうとした俺を遮って、藤沢さんが一気に言った。

……その言い方は、過去に玲哉にそういう気持ちがあったってことの肯定に思えた。

「……なんとなく」

「なんとなく? ですか?」

藤沢さんはうつむいたままだ。

「うん。仲いいのはわかったけど、なんとなく距離をお互いに置いてるなってまず思った。それが藤沢さんの乙女心ゆえかと」

「ぶふっ」

え、いきなり噴き出した……? 肩を震わせる藤沢さん。……もしかして笑ってる?

「ごめ、ごめん。コガサクくんから乙女心って言葉出てきて笑っちゃった」

…………。

「笑ってくれるならいいよ。泣かれたり悲しまれたりするよりは」

本音だ。

泣いてしまった女の人をどう励ませばいかなんて、てんでわからない。

藤沢さんがやっと顔をあげた。

目元ににじんだ涙を指でぬぐっている。

顔は笑っているけど、その涙が哀しみから出たのか、笑いすぎて出たのか……。後者だといいんだけど。

「失恋してるんです。わたし、玲くんに」

「………え?」

「だから、フラれてるんです。玲くんに。玲くんにはずっと探してる運命の人がいたんです。その人をやっと見つけて、今ではラブラブなんです」

探してる……? 昔逢って離れてしまった人とかだろうか。

さすがに俺も、玲哉の恋愛話は知らないから憶測だけど。

藤沢さんは続ける。

「わたし、ずっと玲くんがすきだったんです。でも、すきだって気付いた時には玲くんにはずっと想ってる人がいて、最初から失恋だったんです。それでも吹っ切るために告白、したんですけど……全然、ふっきれないんですよ……今でも……何度も、何度も……終わりにしようって、この気持ち捨てなきゃって……決めたのに……」

藤沢さんの声が潤んでいく。

こんなときどうすりゃいいかなんてわかんない。

でも。

「……泣きたかったら、泣いたらいんじゃない? 俺、昼休みと放課後は屋上にいるから、藤沢さんならいつでも泣き場所になるよ」

優しく抱きしめるとか、涙をぬぐうとか、そんなこと俺には出来ない。

俺がやったら即通報されそうだし。

それでも、まだ離れられない気持ちが心にあるのなら、今はまだ、泣いていい時間だと思う。

……泣き場所にくらいなら、俺もなれるんじゃないかな。

俺を見上げた藤沢さんは、俺が言ったことを飲み込むみたいに何度か瞬いた。

それから、かはっと笑った。

「やっぱりコガサクくんは優しいですね」

「知らないよ、そんなこと」

俺は無愛想でいいんだ。余計な人間関係は築きたくない。

……なんか教師にもわかるほど藤沢さんと親しくなってしまっているようだけど。

いい。藤沢さんが危ない目に遭いそうになったら俺が守ればいいんだ。俺の命くらいかけられる。

だから、いつか。

……いつかでいい。藤沢さんが、心からの笑顔で隣にいられる人と、出逢ってくれますように。

……ガラにもなく願う。神様に。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

処理中です...