どうしたらヤンキーになれますか!?-六花の恋6-【完】

桜月真澄

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嫉妬1 side作之助

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「……ここか?」

スマホに表示された地図を見て、俺は首を傾げた。

住宅街の一軒家。

昔なじみではあるけど、今の家を訪ねるのは初めてだ。

知っている名前が書かれた表札を見て安心する。

よかった。間違ってなかった。

インターホンを鳴らすと、すぐにドアが開いた。

俺が来ることは知っていたからいちいち確認しなかったんだろうけど不用心だ。

「よー、来たな。コガサク」

「呼ばれたからな」

休日に俺を呼び出したのは玲哉だ。

今まで、玲哉がうちに来たり用事ついでに外で逢うことはあったけど、呼び出しとはこれいかに。

「何かあったのか?」

「特にはないけど、たまにはと思ってな。あがってあがって」

玲哉に言われて、藍田家に足を踏み入れる。

「二階の突き当りが俺の部屋だから入ってて。飲み物持ってくから」

「わかった」

二階……少しだけドキドキしながら階段をあがる。

うちはマンションとアパートの中間みたいな感じで、俺も部屋があるけど、家の中で階段はないからちょっとテンションあがる。

小学生みたいだけど。

二階にあがって廊下の突き当りのドアを開ける。

六畳ほどの洋室。

玲哉らしく、物が少なく整然としていた。

「テキトーに座ってりゃいいのに」

固まっていた俺をグラスが通り越して、部屋の真ん中のローテーブルに置かれた。

玲哉に呼びかけられてはっと頭が動き出した。

「いや、その……」

「ん? どうした」

「……あー……」

これは素直に言ってもいいやつだろうか。

俺が恥ずかしいだけな気がする……けど、玲哉に今更取り繕ってもな。

「……友達の家とか来たことないから、テキトーのさじ加減がわからない……」

「ああ。んじゃそこ座って」

と、玲哉はドアと対面になるローテーブルの前を示した。

俺の幼稚な言葉も笑わず、本当に面倒見がいいな……。

そこに正座すると、玲哉は勉強机の椅子に、背もたれを前にして座った。

「さっきは特に用はないって言ったけど、一応聞いておきたくてさ」

「何を?」

「水都ちゃんのこと」

――玲哉の視線が鋭くなった。

そういえば、玲哉と水都さんって幼馴染なんだっけ……。

「どう? 水都ちゃん高校でうまくやってる? 友達とかいる? もしかして彼氏できた? 水都ちゃん喧嘩してない? 学内で誰かぶん殴ってない?」

「え……あ、え?」

し、質問が多い……すごい真剣な顔で訊かれた分の迫力もプラスされて返答につまってしまった。

「あ、悪い急にたくさん」

「いや……いいけど、水都さんって……その、問題でもあるの?」

「問題って言うか、水都ちゃんは今まで羽咲ちゃん――水都ちゃんの同い年の幼馴染ね。羽咲ちゃん以外に同性の友達いなかったみたいで……羽咲ちゃんさえいればいいって考え方してた子だから。コガサクと仲良しってのも驚きだったんだけど、まあ色々心配で。あとナンパは蹴って逃げろって育てられ方してるから、喧嘩してないかなーと」

じょ、情報が多い……。でも幼馴染から見た心配事、全部現実化している……。

「………」

どう答えよう……水都さんに悪いように聞こえない言い方を……。

「コガサク。正直に答えてくれ」

……見透かされている……。

本当に正直に話すしかないな……。

「水都さんは……友達は最近出来たかな……。特に親しくしているのは二人だけど、ほかの人とも話してるとこ見かける。……今は俺が登下校一緒なこと多いからしてないと思うけど、逢った最初の頃は力技でナンパを撃退してたよ」

玲哉の額が椅子の背もたれのへりに落ちた。

「やっぱりか……うん、知ってた……」

知ってたんだ。水都さんの行動はそれほど簡単に予測できるのか。

「んじゃさ」

今度は椅子のへりに顎をついて平坦な目で俺を見て来る。

「コガサクにとっての水都ちゃんってなに?」

……? なに、とは? 戸惑いが顔に出ていたのか、玲哉は軽く手を振って続けた。

「友達?」

あ、そういうこと。

「うん、友達。あと……」

「あと?」

「護衛」

俺の言葉の意味がわからなかったみたいに、玲哉は何度か瞬いた。

「ごえい?」

「そう。この前水都さんの母様と逢ったんだけど、『水都のことよろしくね』って言われたんだ。水都さん、ナンパとかで男に近寄られやすいみたいだから、護衛として認めてもらったんだと思う」

一通りの説明をすると、玲哉は何か言いたそうな顔を色んな方向へ向けた。

悩んでいるみたいな苦悩の様子だけど……あ、幼馴染の護衛が、玲哉は知った仲でも、水都さんから見たらぽっと出に変わりはないから心配なのかな。

「玲哉、俺も最近は喧嘩を売られても買わないようにしてるから水都さんに悪影響は少ないと思うし、絶対に水都さんを危ない目に遭わせないから」

宣言すると玲哉は、「違うんだコガサク~」と苦しみまくっている声をあげた。

「廊下まで聞こえてんぞ、玲」

「玲どうしたの?」

え!? 苦悶の玲哉に気を取られていると、部屋のドアを開けた背の高い二人の青年がいた。

一人はこれでもかってくらいシャープな美形で、先に声をかけた方。

もう一人は隣の青年より背が高く、すっごくクールに見える。ちょっと冷たそうな感じ……。

そもそも……誰?

玲哉に救いを求める視線を向けると、玲哉は俺の方は見ずに「ちょうどよかった」と二人に言った。

「由羽(ゆう)、総真(そうま)。こいつは古閑作之助。俺の昔のお隣さんで、今は水都ちゃんと同じ高校の同級生で友達なんだって」

「水都の……友達……?」

シャープな美形の方は、俺を値踏みするような顔つきになった。

反対に、一見クールで冷たそうに見える方は、にこぉっと人の良さ満点みたいな笑顔になって、「水都の友達なんだ~。よろしくね」と言って来た。

「コガサク。こっちのすごんでるのは司由羽(つかさ ゆう)。水都ちゃんの親友の羽咲ちゃんの兄で、水都ちゃんにとっても兄みたいなもんだな。んで、そっちのぽわぽわしてるど天然が碓氷総真(うすい そうま)。水都ちゃんと同じ、親たちを通じた幼馴染」

揃いも揃って美形だなおい。

水都さんは言わずもがな。俺は一度立ち上がった。

「はじめまして。古閑作之助です。高一です」

「司由羽。妹もいるから、苗字じゃなくて由羽でいい。俺らは玲と同じ高三」

「はじめまして作之助くん。俺も総真でいいよ。水都の友達になってくれたんだね。ありがとう。よろしくね」

由羽さんは見た目通り、言動まで無駄がない。

総真さんの方は玲哉の言う通りぽわぽわしている……ど天然って紹介されたけど、癒し系ってやつだろうか。騙されないか心配になる人だな。デカいけど。

「あの、みなさんが来たなら俺お邪魔ですよね。失礼しま――

「待ったコガサク。お前を二人に逢わせるために呼んだの」

え、そうなの?

「なんでそんなこと?」

素直に不思議に思った。

俺が水都さんと友達になったからと言って、幼馴染さんたちにまで紹介する必要があるか? 

……とか思っていたら、由羽さんがじーっと見て来る。

え、なに、こわい。俺の極悪ヅラ見ても面白くもなんともないよな?

「理由は色々あんだけど、一番は由羽かな。水都ちゃんの兄貴分として、コガサクのこと知っておきたいだろうなと思って」

ああ……つまり俺は、水都さんの友達に相応しいか審査されているってことか。

よし。受けて立とう。

俺だって簡単な気持ちで水都さんと友達やっているんじゃない。存分に見分してどうぞだ。

「……作之助くん? それとも玲みたいにコガサクくんって呼んだ方がいいかな?」

総真さんが言って来た。

「どちらでも大丈夫です。『コガサク』は玲哉がつけたあだ名ですし、呼び捨てでも」

最近水都さんが呼び捨てしてくるから、名前で呼ばれることにも慣れて来たところだ。

「じゃあ俺は作之助って呼ぶね。俺も呼び捨てでいいよ」

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