どうしたらヤンキーになれますか!?-六花の恋6-【完】

桜月真澄

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偶然9 side作之助

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「待って作之助! それ父様怒るやつだから言わないで!」

水都さんが戸惑っていた俺を制して言うと、水都さんの父様の片繭がぴくりと動いた。

今のって誤解されるやつでは……?

「どういうことだ水都」

誤解された上に更に怒らせた……! 

もしかしたらだけど水都さんの父様の脳内では俺が水都さんに何かしでかしたとか思われているかもしれない!

「あの! 水都さんとの間に隠さねばならないことがあるとかではありません。不埒なことも一切ないですし、俺は水都さんの護衛ですし」

水都さんの父様の向けた矢が水都さんに射られる前に口を挟むと、水都さんの父様は胡乱(うろん)な顔つきになった。

「では何故今水都は止めたんだ? 古閑くん?」

うっ……。それ言っちゃおしまいなんだよな……。

でも、誤解ですって言うだけで解ける誤解なんてないだろう。

「それは……」

言うしかない、かな……水都さんは嫌がるだろうけど……水都さんの父様には止められていた道だし――……うーん……

「わたしが作之助に弟子入り志願したんです。どうしたらヤンキーになれますか、って」

!? 水都さん――!? 隠したがっていたのは水都さんだよね? 言っちゃっていいの?

水都さんの言葉を聞いた水都さんの父様は三秒ほど黙ったあとくるりと振り返って、数歩離れたところにいた水都さんの母様のほっぺたを両側から引っ張った。

……え?

「琴――――! お前のせいか!」

「いひゃい、いひゃいよはふみふん!」

言われて、水都さんの父様は引っ張るのを止めた。

水都さんの母様は頬を撫でながら半泣きだ。

「あたしがヤンキーやってたのは巽くんと逢う前なんだから時効にしてよ~」

「おかげで晃に今でもからかわれているけどな。ヤンキー辞めたきっかけも晃だし。それで? 古閑くんは娘をヤンキーにしようとしたのか?」

水都さんの父様の目がまた俺に戻って来た。

俺は慌てて首を横に振った。

そういえば水都さんがヤンキーになりたかったの、水都さんの母様の影響だっけ。

「いえ! その場でやめるよう言いました。――と言いますか、俺も悪目立ちする見た目のせいで喧嘩売られることは多いんですけど、自分がヤンキーとか不良やってる自覚はなくて……水都さんに訊かれても教えられることもありませんでしたし。水都さんとお話するようになったきっかけはそれですが、水都さんが友達になってくれたことをきっかけに、俺も友達が増えました。水都さんには感謝しています」

俺は頭を下げる。

水都さんの父様から反応はない。

水都さんがきっかけで山手さんや常盤さんと話すようになったし、総真や由羽とも友達になれた。

これに関しては玲哉の手引きだけど……水都さんと友達ってのがなかったら、玲哉は俺を総真たちに引き合わせてはいないだろう。今までがそうだったし。

ややおいてから顔をあげると、水都さんの父様はいつの間にか壁に手をついてうなだれていた。

え……えっ? 事態が呑みこめずに水都さんの方を見ると、水都さんと水都さんの母様が顔を見合わせて首を傾げているところだった。

……二人もわかっていないってことか? いや、でもそうだよな……娘の友達がヤンキーとかうなだれたくなるよな……。

謝っておくか。

「すみません。俺なんかが水都さんの友達で……」

言ったら水都さん怒りそうだなあとも思ったけど、水都さんの父様の怒りを鎮めてもらうために言った方がいいかなと思って言った。

案の定、水都さんが怒った顔で俺の方を見て来た。

けれど水都さんが何か言うより早く、水都さんの父様の声が聞こえた。

「水都のこといつもそう呼んでいるのか?」

水都さんの父様、まだ壁に手をついてうなだれたままだけど、低くてカッコいい声が凛と響いた。

「あ、はい。水都さんって呼んでます」

「水都の親の前だからそう呼んでいるのではなく?」

なおも水都さんの父様は壁に手をついてうなだれて、俺の方を見たりはしない。

「はい……日ごろから……」

呼び方が水都さんの父様の琴線に触れたんだろうか? 意味はわからないままだったけど、訊かれたことに答える。

「……水都は古閑くんのことは何と?」

「作之助」

答えたのは水都さん本人だ。

水都さんの父様がじろっとした目つきで顔だけ動かして、水都さんを見た。

「お前由羽たちですら「くん」づけだろう」

「ちっちゃい頃の刷り込みだから今更直せないよ。作之助にそう呼ばれてるのは本当だからね? 父様の前だから、とかじゃなくて。呼び捨てでもいいって言ったことあるけどそのままだった」

「………」

水都さんが水都さんの父様を黙らせてしまった。

ちょっと揉めるだろうなあとは思っていたけど、こんな感じになるとは……。

俺、帰るタイミングがない。

「古閑くん」

「は、はい」

何度目かの背筋正し。

水都さんの父様は威厳があるというか、異を唱えることに委縮させる感覚を持たせる人だ。

やばい思考回路の人間が持っていたら、それこそやばいオーラみたいな。

水都さんの父様が、やっと壁から手を離して俺の方へ向き直ってきた。

なんかこの数分でやつれたように見えるけど声ははっきりとしたままだ。

「水都とは友人、なんだな?」

「はい! もちろんです!」

水都さんの父様にそう認めてもらえたらありがたい以上のものはない。

親御さんに、娘は不良もどきと交流がある、とか思われたら本当に嫌だ。

そのとき、水都さんの父様が俺をぎっと睨んできた。えっ、なに?

「先に言わせてもらう。水都は嫁にやらんし婿もとらん!」

「………はあ」

そうですか。気が抜けて間抜けな返事になってしまった。

……なんで俺にそんな宣言するんだ?

「ちょ、父様!」

水都さんの父様の宣言を聞いて慌てたのは水都さんだった。

水都さんはいきり立ち上がって水都さんの父様に噛みつく。

「なんでそんなこと言うの! わたしはもう決めてるって言ってるでしょ⁉」

「じじい連中の話なんか真に受けなくていい! 水都は水都のやりたい道を生きろ」

急に親子喧嘩始まった。

俺の立場では水都さんを止めた方がいいんだろうけど、それはそれで更に水都さんの父様を怒らせそうで難しい……。

水都さんと、水都さんの父様はにらみ合ってバチバチと火花を散らせている。

親同士の喧嘩はたくさん見て来たけど、俺が親と喧嘩したことないから親子喧嘩ってどうすればいいのかわからない……。

俺が正座もとけずに困っていると、

「巽くん、水都。その話はお客様の前でしないって決めてるでしょ?」

割って入ったのは水都さんの母様だった。

水都さんの母様になだめられて、二人とも一気に冷静さを取り戻したように顔つきが変わった。

怒りの形相から、なんとも居心地悪そうな顔になる。

お客――俺の前でしないってことは、あれか。水都さんが、家の決めた人と結婚するとかいうやつ。

うーん……さすがに家の話には俺も口をはさめないよなあ。

家が決めたことを水都さんが嫌がっているなら水都さんの力になりたいと思うけど、水都さんがそれを受け入れてしまっているから……。

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