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四 殺すために生き続けた鬼と護るために生き続けた鬼
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しおりを挟む「私は、そのために生きています」
与えられた存在理由。
居場所と引き換えに、未来を封じられた。
この男(ひと)の、妻になる未来。
婚約者と言われても、何も感じなった。
結婚は、決まったことだったのだから。
……湖雪の一存くらいで覆るわけがない。
「そうか……」
細く呟いた惣一郎は、立ち上がり部屋を出ていく。
「惣一郎様……」
「しばらく別の部屋を使わせてもらうよ。結婚までは一年はある。その間にほかの人と仲良くしているといい」
振り返ることなく、湖雪を一度も見ずに戸が閉められた。
追いかけられない。今の自分には、追いかけても伝えられる言葉が無い。
でも、一つだけわかったことがある。……惣一郎を、傷つけた。
痛い。胸が痛い。心臓がひりひりする。喉が、呼吸が上手く出来ない。
惣一郎様……名前を呼びたいのに、声が出てこない……。
湖雪は、奥歯を噛みしめた。
彼の名を呼びたい唇。でも、震え出た音は……
「それが、………私のお役……っ」
言い訳がましく揺らがない言葉並びは、初めて溢れ出た涙に流された。
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