桜の鬼【完】

桜月真澄

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六 桜の命の終わり

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早子の危機の脱出、そして仲睦まじくお互いを見る跡取り娘とその許嫁。夏桜院の家は、今までになく穏やかな時間が流れていた。

長く湖雪についている使用人の秋葉(あきは)は老齢で、湖雪と惣一朗を孫のように見守っていた。ただ、たまに記憶が混乱することがある。湖雪のそばには、自分よりもっと近い使用人がいた気がする……のだが、自分はずっと湖雪付きだった記憶もある。

わからない、が、夏桜院は魔怪とも呼ばれる家だ。知らないことのひとつやふたつあるかもしれない。秋葉はそう結論づけて、日々の仕事をしていた。

秋葉が雪を踏みながら、門まで郵便物を取りに出たときのことだ。ひとりの訪ね人があった。明かされた身分を聞いて、秋葉は早子のもとへ急いだ。幹人が留守にしている今、早子は当主の代わりでもある。

その人物のことを秋葉から聞いた早子は、思案するような顔をしたあと、秋葉を伴って離れに向かった。



「湖雪、惣一郎さん。ちょっといいかしら?」

ふすま戸の向こうから早子の声がした。湖雪と惣一朗は、離れの隣り合う二つの部屋をそれぞれの私室として使っている。が、学門をするときも休憩するときも、大体は同じ部屋にいた。今も二人並んでそれぞれの学校の課題をやっていた。早子の声がかかり、二人とも文机から身を離して戸の方へ向ける。

「何でしょう」

湖雪が答えると、ふすまが開けられて早子が姿を見せた。最近の早子は穏やかな表情でいることが多かったが、厳しい顔をしている。

「お母様……いかがなさいましたか?」

湖雪は不安になって問いかけた。また自分が何か失敗してしまったのでは――

しかし早子は、ちらっと惣一朗を見た。惣一朗もその意味がわからず瞬く。

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