桜の鬼【完】

桜月真澄

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六 桜の命の終わり

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「………」

櫻はその問いには黙ったあと、ふむと息を吐いた。

「まあ、ないこともないが――だからお前から言いだすのを待っていたんだよ」

櫻はぽんと悟の頭を叩いた。

「俺は、人に非(あら)ず。故に、この姿もなきものよ」

ツカツカと熱い抱擁を交わす恋人の許へ歩み寄ると、惣一郎がふっと櫻を見た。その頬は涙に泣きぬれており、櫻を見た瞬間潤んだ瞳が揺れた。湖雪を掻き抱く腕に力がこもる。

「さて、惣一郎――お前は生きるか死ぬかを問われたら、なんと答える?」

惣一郎を見下ろし、櫻は問う。惣一郎は一度瞬くと、次の瞬間には強い瞳で答えた。

「湖雪と一緒に生きる」

生きるならば、湖雪とともに。死ぬ道はない。湖雪を生かしたいと願うならば、自分が生きるしかないのだ。

「納得。お前は合格だ」

櫻はふっと口の端を持ち上げると、惣一郎の胸ぐらを摑んだ。

「俺がお前を生かしてやろう」

櫻は右手で惣一郎の服を摑み、左手で惣一郎の額を摑んだ。

「ははは――俺がこいつを使うのは初めてだからな――心配はするな失敗はない。開闢の瞬間(とき)から生まれた俺が失敗するわけねえんだよ―――」

「櫻――何を」

「湖雪。幸せになれよ。お前が憶えていなくても」

「櫻殿……?」

「惣一郎、俺に負けるなよ。遺す言葉はそれだけだ」

にやっと――櫻の口に鋭利な八重歯が見えた。

閃光が――部屋を包んだ。

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