盤上に咲くイオス

菫城 珪

文字の大きさ
205 / 209
番外編(〜王都編)

月の入り

しおりを挟む
※「倒錯と劣情」の続きです。

 月明かりしか無い室内。
 気怠げにカウチに身を横たえる幼馴染がその細い指先で用意したベリーを摘む。良く冷やしたベリーが薄い唇に運ばれる様子を眺めながらオルテガはうっとりとその様子を眺めていた。
 散々貪り合った為か、いつも清廉な雰囲気を纏う幼馴染は今は退廃的な魅力を放っている。サイズの合わないシャツはオルテガのもので、だらしなく着ているせいでしなやかな首から胸元が覗いている。陶器のような白い肌に咲く紅い痕はオルテガがつけた所有印だ。
 下は何も履いていないからすらりとした白い足が月明かりの下で無防備に晒されている。そして、彼の細い手首に残る紅い帯状の痕は倒錯的な行為の証。傷付けたくないと思いながらも、自由を奪って支配する仄暗い悦びはオルテガの身の内に未だに燻っている。
「……リア」
 名前を呼べば、月光色の瞳がこちらを見つめて柔らかく綻ぶ。その瞳に誘われる様に近付いてカウチに寝転がれば、直様身を寄せてきてくれるのが嬉しい。
 言葉にせずとも考えている事を見透かされたのだろう。腕の中に閉じ込めた幼馴染はうっとりした様子でオルテガに身を任せた。
 ただ触れ合うだけでも満たされる。しかし、更に先も欲しくなる。
 腕を開け渡せば、慣れた様子で頭を乗せてくる幼馴染はすっかり腕の中で過ごす事に慣れたようだ。人前で恥じらう様子も可愛らしいが、こうして安心した姿で過ごしてくれる事も喜ばしいものだった。
「どうした、機嫌が良いな」
 耳元で甘く優しい声が囁く。顔が緩んでいたのだろうか。それとも空気に滲んでいたのか。いずれにせよ、悟られてしまう程度には漏れ出ていたらしい。
 誤魔化すように口付ければ、相手はくすぐったそうに笑みを零す。稚いその表情を愛おしく思いながら長い髪を撫で、細い体を抱き締めた。
「ふふ」
 小さく笑い声を零すと細い指が答えるように撫でてくれる。その感触に目を閉じて好きなようにさせるために身を任せた。
 こうして無防備な姿を晒すのは愛しい幼馴染の前だけだ。普段は騎士団長として常に気を張っているが、この温もりの傍でだけ何もかもを忘れられる。勿論、役割を放棄する事はないが、それでもたまには息をつきたくなる時がある。
「フィン」
 優しく名を呼ばれて目を開いた。月明かりの下、その美貌に柔らかな笑みを浮かべる最愛の人はしなやかな手で己の頬を包んでくれる。
「今夜は離れたくない」
 泊めてくれと続きかけた言葉を遮って唇を奪えば、腕の中に愛しい月が沈んだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

双子のスパダリ旦那が今日も甘い

ユーリ
BL
「いつになったらお前は学校を辞めるんだ?」「いつになったら俺らの仕事の邪魔をする仕事をするんだ?」ーー高校二年生の柚月は幼馴染の双子と一緒に暮らしているが、毎日のように甘やかされるも意味のわからないことを言ってきて…「仕事の邪魔をする仕事って何!?」ーー双子のスパダリ旦那は今日も甘いのです。

子持ちオメガが運命の番と出会ったら

ゆう
BL
オメガバースのblです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

処理中です...