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番外編(〜王都編)
彷徨
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※思春期のオルテガ
彷徨
不意にさらりと流れた黒い髪。
その合間から覗いた細くて白い首筋。
目にした瞬間に感じた言いようのない本能的な高揚感に、直様吐き気を覚えた。
オルテガ・フィン・ガーランドにとって幼馴染であるセイアッド・リア・レヴォネは最も親しい友人であり、最も大切な者だ。
物心の付く前から惹かれた存在であり、出逢った瞬間からずっとオルテガの心を占めている幼馴染はいつだって無垢で綺麗な存在だった。崇拝にも似たその感情は年を経る毎に徐々に変化していく。
男の体が成長すれば、必然的に性的な衝動が伴ってくるのだと頭では理解していた。しかし、オルテガにとって聖域ともいえるセイアッドにそんな感情を覚える事はないと思っていたのに。
その日、その瞬間。オルテガは美しい幼馴染に、確かに劣情を感じてしまった。
直ぐに目を逸らしたが、跳ねる心臓の音が身の内に滾る熱の奔流は現実を突き付けてくる。
「フィン?」
オルテガの異変に、セイアッドが柔らかく心配そうに名を呼ぶ。その声音すら独り占めにしたくて、乱したくて堪らなかった。
「……何でもない。少し考え事をしていて」
「そう? 悩み事なら相談してね」
そう言って小首を傾げながら柔らかく告げる幼馴染の姿に、胸の中に深い罪悪感が落ちる。
彼がオルテガに寄せる思いは全幅の信頼とどこまでも深い友愛だ。オルテガはずっとそれに応えようとしてきたというのに。
まさか一番身近にいる親友が自分に対して劣情を抱いたと知ったら彼はどんな反応をするのか。
拒絶される様を想像して、背筋がゾッと冷える。
考えないようにしようとするほど、浅ましいまでの妄想が脳裏に浮かんだ。
あの月色の瞳が快楽に溶け、自分だけを映す。
しなやかな腕が縋り付いてきて、唇からは甘い嬌声が零れる。
細い体を組み敷いて、隅々まで味わい尽くして犯して。
薄い胎を穿って、自らの種で満たしたい。
そんな光景を夢想しながら自らを慰めた後は深い後悔と嫌悪感に襲われたものだ。
自己嫌悪と罪悪感に苛まれながらそれでも滾る欲は抑えられない。
そんな日々を悶々と過ごしていたある日の事。オルテガはセイアッドが誰かと楽しそうに話しているのを見かけた。
長い銀髪の痩身、真紅の瞳を隠した狐の様な細い目の男は先日の大火でセイアッドが拾ってきた者だ。自分達より少し年上のあの男は名を何と言っただろうか。
そう思った瞬間だ。
男の手がセイアッドの白い頬に触れる。微かに赤くなる白い頬を見て心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
嫌だ!
瞬間的に脳裏に浮かんだのは強い拒絶。
自分以外の誰かが、彼に触れる事が赦せない。
彼を穢すなんて赦せる訳がない。
あの月を手折るならば、他の誰でもない自身の手で。
それが、ずっと拒んでいた獣欲をオルテガが受け入れた瞬間だった。
彷徨
不意にさらりと流れた黒い髪。
その合間から覗いた細くて白い首筋。
目にした瞬間に感じた言いようのない本能的な高揚感に、直様吐き気を覚えた。
オルテガ・フィン・ガーランドにとって幼馴染であるセイアッド・リア・レヴォネは最も親しい友人であり、最も大切な者だ。
物心の付く前から惹かれた存在であり、出逢った瞬間からずっとオルテガの心を占めている幼馴染はいつだって無垢で綺麗な存在だった。崇拝にも似たその感情は年を経る毎に徐々に変化していく。
男の体が成長すれば、必然的に性的な衝動が伴ってくるのだと頭では理解していた。しかし、オルテガにとって聖域ともいえるセイアッドにそんな感情を覚える事はないと思っていたのに。
その日、その瞬間。オルテガは美しい幼馴染に、確かに劣情を感じてしまった。
直ぐに目を逸らしたが、跳ねる心臓の音が身の内に滾る熱の奔流は現実を突き付けてくる。
「フィン?」
オルテガの異変に、セイアッドが柔らかく心配そうに名を呼ぶ。その声音すら独り占めにしたくて、乱したくて堪らなかった。
「……何でもない。少し考え事をしていて」
「そう? 悩み事なら相談してね」
そう言って小首を傾げながら柔らかく告げる幼馴染の姿に、胸の中に深い罪悪感が落ちる。
彼がオルテガに寄せる思いは全幅の信頼とどこまでも深い友愛だ。オルテガはずっとそれに応えようとしてきたというのに。
まさか一番身近にいる親友が自分に対して劣情を抱いたと知ったら彼はどんな反応をするのか。
拒絶される様を想像して、背筋がゾッと冷える。
考えないようにしようとするほど、浅ましいまでの妄想が脳裏に浮かんだ。
あの月色の瞳が快楽に溶け、自分だけを映す。
しなやかな腕が縋り付いてきて、唇からは甘い嬌声が零れる。
細い体を組み敷いて、隅々まで味わい尽くして犯して。
薄い胎を穿って、自らの種で満たしたい。
そんな光景を夢想しながら自らを慰めた後は深い後悔と嫌悪感に襲われたものだ。
自己嫌悪と罪悪感に苛まれながらそれでも滾る欲は抑えられない。
そんな日々を悶々と過ごしていたある日の事。オルテガはセイアッドが誰かと楽しそうに話しているのを見かけた。
長い銀髪の痩身、真紅の瞳を隠した狐の様な細い目の男は先日の大火でセイアッドが拾ってきた者だ。自分達より少し年上のあの男は名を何と言っただろうか。
そう思った瞬間だ。
男の手がセイアッドの白い頬に触れる。微かに赤くなる白い頬を見て心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
嫌だ!
瞬間的に脳裏に浮かんだのは強い拒絶。
自分以外の誰かが、彼に触れる事が赦せない。
彼を穢すなんて赦せる訳がない。
あの月を手折るならば、他の誰でもない自身の手で。
それが、ずっと拒んでいた獣欲をオルテガが受け入れた瞬間だった。
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