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35 暴氷の強襲
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35 暴氷の強襲
ダーランに後を任せて屋敷に戻った俺は湖畔の庭で昼食がてら少し休憩を取る事にした。執事のアルバートに勧められた事も大きいが、蒼鱗湖の景観が一番良い時期なので少しくらい楽しみたかったから。
湖畔に面した庭に用意してもらったテーブルで供される食事を優雅に楽しむ。今日もオルテガにはレインの相手を頼んでいるから久々に一人での食事だ。
ゆっくりと味わいながらレヴォネの幸に舌鼓をうつ。うちのお抱えシェフは王都の奴にも負けてない。なんなら食材はうちの方が良いくらいだ。
美味い飯に目の前に広がるのは真っ青な水を湛えた美しい湖。駆け抜けていく風は草の微かに苦い爽やかな香りを運び、空には小鳥が歌う。ここがこの世の天国か。
のんびりと昼食を楽しんだあとはまた仕事に奔走するつもりでいた。しかし、そんな短くも平穏な俺の昼下がりは食後のデザートを食べ終わったところで短兵急に崩壊する事になる。
突然、大地を揺るがすような大咆哮が天空から降り注いだのだ。
驚いて反射的に頭上を見上げれば、遥か上空、太陽に被るようにして大きな影が二つある。その影は真っ直ぐこちらへと下降してくるようで、徐々にその輪郭がはっきりしてきた。
隆々とした筋肉に覆われた巨大な体躯。風を斬り裂く強靭な翼。先に降りてくる者は漆黒の鱗が太陽の光を浴びて鴉の濡羽のように艶かしく煌めき、もう片方は白銀の鱗が楚々と眩く輝いていた。
禍々しくも神々しいソレ。現代日本においては架空の生き物として名高き者。
ドラゴンが、そこには居た。
二頭のドラゴンは翼を大きく広げながら俺のいる湖畔に音もなく着地する。「私」も何度か近くで見た事はあるが、襲われる事はないとわかっていながらも目にする度に酷く恐ろしく感じてしまう。
生き物としての本能が、彼等を恐れるのだろう。首筋に冷や汗が流れるのを感じた。
一方、「俺」の方は興奮していた。だって、どんなゲームや物語にもファンタジーなら大体登場するドラゴンだぞ! 男なら生涯に一度は憧れるだろう。
それが生きて動いて目の前にいる。正直に言えば、めちゃくちゃ触らせてもらいたい。許されるならその背に乗って空を翔け巡ってみたい。
しかし、そんな俺の高揚もドラゴンの背から降りて来た者を見て一気に萎む。
ついに恐れていた客人がやってきたのだ。流石に先触れくらいは出すだろうと思っていたが、考えが甘かったらしい。脳内では高らかに某暗黒卿のテーマソングが流れ始める、そんな心境だ。
「セイアッド」
低く威厳に満ちた声が、セイアッドを呼ぶ。その声に滲むのは隠し切れない陶酔だ。何の心の準備も出来ていないから咄嗟に動けない。
ドラゴンから降りてきた男は真っ直ぐにこちらへと向かって歩いてくる。ダメだ。早く動かなければならないのに、男の雰囲気に呑まれてしまう。いつもの会う時のように笑っているくせに、纏うのは深い怒気だ。
俺の周りにいた使用人達も誰一人として動けない、声も出せない。だからこそ、俺が動かなければならないのに。
「……すまん、つい苛立ってな。お前が息災そうで何よりだ」
言葉と共にその場を支配していた怒気が霧散して、悟られぬように小さく細く息を吐き出す。そして、改めて目の前の男と向き合った。
男は名をグラシアール・キオノスティヴァスという。海のように深い青色の髪と氷河のような薄い水色の瞳が特徴の偉丈夫で年齢はダーランと同じく28歳。
彼こそが隣国ラソワの王太子にして、対ローライツ王国の特使であり、セイアッドが最も苦手とする男であり、もっとも訪問を恐れていた者だ。
「……御挨拶が遅れて申し訳御座いません、グラシアール王太子殿下。何分、急な訪いでした故驚いてしまいまして……どうぞ御容赦を」
やっと声を出し、胸に手を置いて深く頭を下げる。くそ、思っていたよりも怖いな。コイツと相対するのは。それなりに覚悟をしていたつもりだったが、あまりにも急な訪問に心の準備が追い付かない。
「構わん。それよりその堅苦しい話し方をやめろと何度も言っているだろう」
居丈高にそう言うが、一国の王太子相手にそんな事出来るわけがない。曖昧に微笑んで誤魔化せば、グラシアールは残念そうに肩を竦める。
「こういう時は身分というものが煩わしいな。お前とならば対等に語り合いたいと思うのだが」
「嬉しいお言葉で御座います。されど、以前であれば私にも宰相という身分がございましたが、今の私は一介の侯爵、それも現状は罪人です。グラシアール王太子殿下直々にお気に掛けて頂くような者ではありませんよ」
ここは敢えて宰相ではない事、罪人である事を強調する。さて、グラシアールはどんな反応を見せるだろうか。
「そうだ、その事で話に来た」
再び湧き上がる怒気に気圧されるが、さっきよりは圧を感じない。怒りの矛先が違うからなのか、俺や周りに配慮してくれるからなのかは分からないが、どうやら予想通りの理由で訪れたようだ。
思わずにやけそうになるのを頬の内側を噛んで耐える。
「……我らがローライツとの国交を回復させたのはひとえにお前に対する深い友誼と並々ならぬ恩義があったからだ」
「畏れ多い事で御座います」
再び胸に手を当てて丁寧に応えてやれば、グラシアールは不服そうな顔をする。砕けたやりとりに持っていきたいのは俺も山々だが、まだ早い。
ラソワはこの大陸に存在する国の中で最も強国である。厳しくも広大な北の大地を有し、豊富な鉱物資源と特殊な蚕から作り出される絹が特産だ。そして、何より彼等はドラゴンを始めとした一部の魔獣を友として乗りこなす勇猛な国民性をしている。
そんな国の、それも王太子がセイアッドの味方になればこれ以上ない後ろ盾だろう。是非とも手に入れておきたい駒の一つだ。
彼がセイアッドの味方をしてくれるならば、敵対勢力もおいそれとセイアッドに手を出せなくなる。下手すれば戦争真っしぐらだからな。
「ええい、やはり他人行儀なのがつまらん。セイアッドよ、お前には俺の名を許そう。これからは身分の境なく友としてお前と対等に話がしたい」
待ち兼ねていた言葉に笑みを浮かべる。王族が正式に名を許すという事は相手に対して対等な立場を認める事だ。本来ならば、家族や伴侶、婚約者にしか許されない特権であり、それ以外の者が許しを得るのは稀な事だろう。
「光栄なお言葉です。……こう仰っておりますが、宜しいのですか?」
チラリと窺うのはグラシアールの後方、もう一頭の白いドラゴンの横に控える男だ。グラシアールと同じく深い青色の髪をふんわりと結ってサイドに流しているその男は柔和な顔で困ったように小さく微笑む。
「セイアッド殿もお人が悪い。愚生が申し上げた所でこの方が聞くような人ではないのをよーく御存知でしょう?」
穏やかな口調で答えるのはグラシアールの側近、シュアン・イスベルグだ。どうやらグラシアールに付き合ってこちらまでやってきたらしい。彼の相棒は雪のように真っ白なドラゴンで、甘えるようにシュアンに顔を擦り寄せている。羨ましい。頼んだら後で触らせてもらえないだろうか。
「では、後ほど念書をお願い致します」
ドラゴンに触りたい欲を抑えながらにっこり笑ってお願いすれば、グラシアールもシュアンも一瞬呆気に取られたような顔をする。しかし、流石は王族。グラシアールはすぐに呵呵大笑した。
「ははは! いいぞ、念書でも何でも書いてやろう!」
「ありがとうございます。友誼の証に、私の事はどうぞリア、と」
「そうか、この国では名が二つあるんだったな。俺の事はアールと呼べ」
こちらが折れた事で上機嫌になったグラシアールはなんと愛称まで許してくれるらしい。思った以上の大盤振る舞いだ。親しければ親しい程、彼は扱い易くなるから。
気難しい上に強国の王太子として態度もプライドもエベレストより高いが、一度でも彼の琴線に触れれば彼にとっては身内扱いになるらしい。国民性なのか彼の性格なのかは分からないが、気を許した者に対してはとてつもなく鷹揚であり、何事にも我が事のように親身に接してくれる。
どうやら「私」の時から身内認定してくれていたようだし、すぐに愛称呼びを提案してくる辺り、かなり気に入られてはいるのだと思う。だが、他国の王太子とあまり親しいのも問題だと思ってこれまでは一線引いた関係を築いてきた。
だが、今となってはそれも馬鹿馬鹿しい。利用出来るものは何でも利用させてもらうつもりだ。例え、それが隣国の王太子だとしても。
「アール様」
「アールでいい。敬語もいらん」
「しかし……」
流石にそれはちょっと、と思って戸惑っていれば、グラシアールが途端に獰猛な笑みを浮かべて俺の顎に手を掛けた。指先で顎を持ち上げられて必然的に見上げる体勢になるが、ここは大人しくしておく。
「俺と仲良くしておいた方がお前にとっては好都合だろう?」
グラシアールの言葉に少し驚いた。分かっていてなお許すというのか。利用する気満々だった俺がいうのも何だが、下手したら国際問題だぞ。
「……貴方を利用しても良い、と?」
「どうせそのつもりだったろうに。好きにしろ。絹もな。どうせお前の事だ。高値で売ったりせずにデビュタントの者に安価で譲るんだろう」
「お見通しですか」
「当たり前だ。……この四年間、俺はずっとお前を見てきたんだからな」
油断していたら、急に腰に腕がまわされて抱き寄せられる。声音にも隠し切れない熱が混じり、慌てて逃げようとするがオルテガと同じくガタイのいいグラシアールはちょっと押した程度ではびくともしない。
……あれ、これってもしかして非常にまずいのでは!?
ダーランに後を任せて屋敷に戻った俺は湖畔の庭で昼食がてら少し休憩を取る事にした。執事のアルバートに勧められた事も大きいが、蒼鱗湖の景観が一番良い時期なので少しくらい楽しみたかったから。
湖畔に面した庭に用意してもらったテーブルで供される食事を優雅に楽しむ。今日もオルテガにはレインの相手を頼んでいるから久々に一人での食事だ。
ゆっくりと味わいながらレヴォネの幸に舌鼓をうつ。うちのお抱えシェフは王都の奴にも負けてない。なんなら食材はうちの方が良いくらいだ。
美味い飯に目の前に広がるのは真っ青な水を湛えた美しい湖。駆け抜けていく風は草の微かに苦い爽やかな香りを運び、空には小鳥が歌う。ここがこの世の天国か。
のんびりと昼食を楽しんだあとはまた仕事に奔走するつもりでいた。しかし、そんな短くも平穏な俺の昼下がりは食後のデザートを食べ終わったところで短兵急に崩壊する事になる。
突然、大地を揺るがすような大咆哮が天空から降り注いだのだ。
驚いて反射的に頭上を見上げれば、遥か上空、太陽に被るようにして大きな影が二つある。その影は真っ直ぐこちらへと下降してくるようで、徐々にその輪郭がはっきりしてきた。
隆々とした筋肉に覆われた巨大な体躯。風を斬り裂く強靭な翼。先に降りてくる者は漆黒の鱗が太陽の光を浴びて鴉の濡羽のように艶かしく煌めき、もう片方は白銀の鱗が楚々と眩く輝いていた。
禍々しくも神々しいソレ。現代日本においては架空の生き物として名高き者。
ドラゴンが、そこには居た。
二頭のドラゴンは翼を大きく広げながら俺のいる湖畔に音もなく着地する。「私」も何度か近くで見た事はあるが、襲われる事はないとわかっていながらも目にする度に酷く恐ろしく感じてしまう。
生き物としての本能が、彼等を恐れるのだろう。首筋に冷や汗が流れるのを感じた。
一方、「俺」の方は興奮していた。だって、どんなゲームや物語にもファンタジーなら大体登場するドラゴンだぞ! 男なら生涯に一度は憧れるだろう。
それが生きて動いて目の前にいる。正直に言えば、めちゃくちゃ触らせてもらいたい。許されるならその背に乗って空を翔け巡ってみたい。
しかし、そんな俺の高揚もドラゴンの背から降りて来た者を見て一気に萎む。
ついに恐れていた客人がやってきたのだ。流石に先触れくらいは出すだろうと思っていたが、考えが甘かったらしい。脳内では高らかに某暗黒卿のテーマソングが流れ始める、そんな心境だ。
「セイアッド」
低く威厳に満ちた声が、セイアッドを呼ぶ。その声に滲むのは隠し切れない陶酔だ。何の心の準備も出来ていないから咄嗟に動けない。
ドラゴンから降りてきた男は真っ直ぐにこちらへと向かって歩いてくる。ダメだ。早く動かなければならないのに、男の雰囲気に呑まれてしまう。いつもの会う時のように笑っているくせに、纏うのは深い怒気だ。
俺の周りにいた使用人達も誰一人として動けない、声も出せない。だからこそ、俺が動かなければならないのに。
「……すまん、つい苛立ってな。お前が息災そうで何よりだ」
言葉と共にその場を支配していた怒気が霧散して、悟られぬように小さく細く息を吐き出す。そして、改めて目の前の男と向き合った。
男は名をグラシアール・キオノスティヴァスという。海のように深い青色の髪と氷河のような薄い水色の瞳が特徴の偉丈夫で年齢はダーランと同じく28歳。
彼こそが隣国ラソワの王太子にして、対ローライツ王国の特使であり、セイアッドが最も苦手とする男であり、もっとも訪問を恐れていた者だ。
「……御挨拶が遅れて申し訳御座いません、グラシアール王太子殿下。何分、急な訪いでした故驚いてしまいまして……どうぞ御容赦を」
やっと声を出し、胸に手を置いて深く頭を下げる。くそ、思っていたよりも怖いな。コイツと相対するのは。それなりに覚悟をしていたつもりだったが、あまりにも急な訪問に心の準備が追い付かない。
「構わん。それよりその堅苦しい話し方をやめろと何度も言っているだろう」
居丈高にそう言うが、一国の王太子相手にそんな事出来るわけがない。曖昧に微笑んで誤魔化せば、グラシアールは残念そうに肩を竦める。
「こういう時は身分というものが煩わしいな。お前とならば対等に語り合いたいと思うのだが」
「嬉しいお言葉で御座います。されど、以前であれば私にも宰相という身分がございましたが、今の私は一介の侯爵、それも現状は罪人です。グラシアール王太子殿下直々にお気に掛けて頂くような者ではありませんよ」
ここは敢えて宰相ではない事、罪人である事を強調する。さて、グラシアールはどんな反応を見せるだろうか。
「そうだ、その事で話に来た」
再び湧き上がる怒気に気圧されるが、さっきよりは圧を感じない。怒りの矛先が違うからなのか、俺や周りに配慮してくれるからなのかは分からないが、どうやら予想通りの理由で訪れたようだ。
思わずにやけそうになるのを頬の内側を噛んで耐える。
「……我らがローライツとの国交を回復させたのはひとえにお前に対する深い友誼と並々ならぬ恩義があったからだ」
「畏れ多い事で御座います」
再び胸に手を当てて丁寧に応えてやれば、グラシアールは不服そうな顔をする。砕けたやりとりに持っていきたいのは俺も山々だが、まだ早い。
ラソワはこの大陸に存在する国の中で最も強国である。厳しくも広大な北の大地を有し、豊富な鉱物資源と特殊な蚕から作り出される絹が特産だ。そして、何より彼等はドラゴンを始めとした一部の魔獣を友として乗りこなす勇猛な国民性をしている。
そんな国の、それも王太子がセイアッドの味方になればこれ以上ない後ろ盾だろう。是非とも手に入れておきたい駒の一つだ。
彼がセイアッドの味方をしてくれるならば、敵対勢力もおいそれとセイアッドに手を出せなくなる。下手すれば戦争真っしぐらだからな。
「ええい、やはり他人行儀なのがつまらん。セイアッドよ、お前には俺の名を許そう。これからは身分の境なく友としてお前と対等に話がしたい」
待ち兼ねていた言葉に笑みを浮かべる。王族が正式に名を許すという事は相手に対して対等な立場を認める事だ。本来ならば、家族や伴侶、婚約者にしか許されない特権であり、それ以外の者が許しを得るのは稀な事だろう。
「光栄なお言葉です。……こう仰っておりますが、宜しいのですか?」
チラリと窺うのはグラシアールの後方、もう一頭の白いドラゴンの横に控える男だ。グラシアールと同じく深い青色の髪をふんわりと結ってサイドに流しているその男は柔和な顔で困ったように小さく微笑む。
「セイアッド殿もお人が悪い。愚生が申し上げた所でこの方が聞くような人ではないのをよーく御存知でしょう?」
穏やかな口調で答えるのはグラシアールの側近、シュアン・イスベルグだ。どうやらグラシアールに付き合ってこちらまでやってきたらしい。彼の相棒は雪のように真っ白なドラゴンで、甘えるようにシュアンに顔を擦り寄せている。羨ましい。頼んだら後で触らせてもらえないだろうか。
「では、後ほど念書をお願い致します」
ドラゴンに触りたい欲を抑えながらにっこり笑ってお願いすれば、グラシアールもシュアンも一瞬呆気に取られたような顔をする。しかし、流石は王族。グラシアールはすぐに呵呵大笑した。
「ははは! いいぞ、念書でも何でも書いてやろう!」
「ありがとうございます。友誼の証に、私の事はどうぞリア、と」
「そうか、この国では名が二つあるんだったな。俺の事はアールと呼べ」
こちらが折れた事で上機嫌になったグラシアールはなんと愛称まで許してくれるらしい。思った以上の大盤振る舞いだ。親しければ親しい程、彼は扱い易くなるから。
気難しい上に強国の王太子として態度もプライドもエベレストより高いが、一度でも彼の琴線に触れれば彼にとっては身内扱いになるらしい。国民性なのか彼の性格なのかは分からないが、気を許した者に対してはとてつもなく鷹揚であり、何事にも我が事のように親身に接してくれる。
どうやら「私」の時から身内認定してくれていたようだし、すぐに愛称呼びを提案してくる辺り、かなり気に入られてはいるのだと思う。だが、他国の王太子とあまり親しいのも問題だと思ってこれまでは一線引いた関係を築いてきた。
だが、今となってはそれも馬鹿馬鹿しい。利用出来るものは何でも利用させてもらうつもりだ。例え、それが隣国の王太子だとしても。
「アール様」
「アールでいい。敬語もいらん」
「しかし……」
流石にそれはちょっと、と思って戸惑っていれば、グラシアールが途端に獰猛な笑みを浮かべて俺の顎に手を掛けた。指先で顎を持ち上げられて必然的に見上げる体勢になるが、ここは大人しくしておく。
「俺と仲良くしておいた方がお前にとっては好都合だろう?」
グラシアールの言葉に少し驚いた。分かっていてなお許すというのか。利用する気満々だった俺がいうのも何だが、下手したら国際問題だぞ。
「……貴方を利用しても良い、と?」
「どうせそのつもりだったろうに。好きにしろ。絹もな。どうせお前の事だ。高値で売ったりせずにデビュタントの者に安価で譲るんだろう」
「お見通しですか」
「当たり前だ。……この四年間、俺はずっとお前を見てきたんだからな」
油断していたら、急に腰に腕がまわされて抱き寄せられる。声音にも隠し切れない熱が混じり、慌てて逃げようとするがオルテガと同じくガタイのいいグラシアールはちょっと押した程度ではびくともしない。
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