盤上に咲くイオス

菫城 珪

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閑話 キスの日SS

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閑話 キスの日SS
 
 朝日の鮮烈な光に目を覚まし、オルテガは寝床の中で身じろいだ。騎士団では朝の訓練や勤務体制で朝番というものがあったから早起きが身に付いているせいでオルテガの朝は早い。それに、レヴォネに来てからも習慣にしている訓練は欠かしていない。
「んん……」
 燦々と降り注ぐ朝日の中で体を起こすと隣から甘い吐息が聞こえて来る。自然とそちらに視線を向ければ、この世界で最も美しく愛おしい者がすやすやと気持ち良さそうに眠っていた。
 僅かに覗く細い肩は一糸も纏わず露わになっていて、白い肌にはあちらこちらに赤い痕が散っている。この一つひとつが自分の所有印なのだと思うと、オルテガは堪らない気持ちになった。
 生涯かけても手に入らないと思っていた者と共寝をし、同じ寝床で朝を迎える幸福を噛み締めながら艶やかな髪を掻き分けてまろい額に口付けを落とす。
 こうして触れる事すら、ずっと諦めてきたというのに。
「ん……フィン……?」
 口付けの感触に目を覚ましたのか、月光色の瞳がぼんやりとオルテガを見つめながら甘やかに名を囁く。起こしてしまったかと思いながらも湧き上がった悪戯心は止められない。
 額に、頬に、瞼に。髪に、顎に、首筋に。あらゆる所に口付けを落とすうちにセイアッドがくすぐったそうにくすくすと笑い声を零した。
「フィン、やめろ。くすぐったい」
 意識がはっきり覚醒してきたのか、細い手が咎めるようにオルテガの口を塞ぐ。ひんやりとしたその掌を心地良く思いながらべろりと舐めてやれば、細い肩が微かに跳ねる。
 可愛らしい事だ。オルテガが与えるものを全て快楽として享受した体は少しの刺激でも簡単に熱を帯びるらしい。動揺したように泳ぐ月光色の瞳には微かな期待が滲む。
 愛しい者のそんな反応をオルテガは見逃さない。
「……訓練は後回しだな」
 耳元で囁けば、白い頬があっという間に朱に染まる。続いて言われるであろう可愛らしい抵抗を塞ぐ為に、オルテガは柔らかな唇に貪りついた。
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