【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭

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妹の婚約者を独占したい

 アーノルド様が伯爵家に来てから、半年近く過ぎていた。
 お母様はすっかり元気を無くして、パーティにはお父様が許可した物だけ参加している。
 夜中にコッソリ抜け出している時もあるけれど、必要以上の出費は無くなった。


 「アーノルド様、今日は少し早いのですが、休憩に致しましょう」
 この頃には、私が教えられる事は、何も無くなっていた。
 もっと、アーノルド様と一緒に居たいけれど…
 私の勤めは、とっくに果たせたと思う。
 一年も待つ必要は無いのに…
 私は、辛い気持ちから解放されたい気持ちで一杯になっていた。
 「分かりました。では、失礼…」

 私がバックから、刺繍の道具を出していると、アーノルド様は驚いたご様子で聞いてきた。
 「それは、何ですか?刺繍の様ですが…」
 「はい、刺繍です。この時期になると、何時も沢山のハンカチに、刺繍を施しているのです」
 「デイジーが、マーガレット様に頼んでいるのですか?」
 「え?」
 「何時もパーティへ行くと、ご令嬢達から沢山刺繍の依頼を、受けていましたから。いくら刺繍が得意だと言っても、一人で出来る量では無いと、思っておりました」

 「そうだったのですね、断れない性質なのだと思います。一人では刺し切れない程の布を持って来るので、安請け合いはしない様にと伝えているのですけれど…本当に困った子」
 「私が代わりに断る様にしますね。まさかマーガレット様に手伝って頂いてるとは、想像もしておりませんでした」
 「いえ、お気遣いだけで感謝致します。刺繍は好きですし、暇潰しにもなりますから、苦だとは思っておりません」

 「そうなのですか?私はてっきり、刺繍が嫌いなのだと、思っていました」
 「最近は暇がありませんでしたが、以前はよく自分の物にも、刺繍を施していましたのよ」
 「そうだったのですね、勝手な思い違いをしておりました」
 「いいえ、お気になさらないで下さい。あの…デイジーが待っていますので、行ってあげて下さい」
 「そうですね…では、また後で」
 私は一時の会話でも嬉しいと思う気持ちと、寂しくて傍に居て欲しいと思う気持ちを、どう処理したら良いのか分からなくなっていた。

 駄目ね…何時迄経っても、思いを断ち切れない。
 それどころか、アーノルド様への思いが強くなってしまっている。
 初めは伯爵家を継げない悲しみで、縋っているのだと思っていたのに、違ったみたい。
 こんな気持ちでは、アーノルド様のご実家で開かれる晩餐会に行けないわ。
 恋心を抑えられる薬でもあればいいのに。
 アーノルド様を独り占め出来たら、どんなに幸せなのかしら?
 私は乾いた溜息をもらす事しか出来なかった。


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