25 / 52
テオドール様の怒り
しおりを挟む
昼休みの食堂には、各学年の生徒が沢山集まっております。
公爵邸の茶会で何が起きたのかは、皆が面白おかしく噂をしておりました。
当然ですが知らない方もいたとは思いますが、ハルジオンの一声で、噂に真実味が出てしまったと思うのです。
絶望する私を他所に、意外な事にテオドール様がお怒りになったのでした。
「リーゼが、疵物の筈がないだろう。俺もその茶会に招待されていたんだ!俺は、用事があったからリーゼとは一緒に帰る事が出来なかったが、きちんと公爵邸の門を出るまで見送っていた。ペンタール公爵令嬢の茶会へ招待されたと聞いた時に、ドレスを用意したのもこの俺だ。我が商会の針子たちが、精魂込めて縫い上げた逸品なんだ。お前たちに見せてやれなかったのが残念なくらい、リーゼによく似合っていたんだ」
テオドール様は、何かに取り憑かれたのかと思う程、物凄い剣幕で捲し立てております。
「僕は、リーゼが疵物になったなんて、一言も言っていないじゃないか。ペンタール公爵令嬢が考えていそうな事を口にしただけなのに、そんなに怒鳴る事はないだろう」
「俺が、リーゼの潔白を証明してやる!ペンタール公爵令嬢本人に、茶会であった事を聞けばいいんだろう」
興奮して言い争う、テオドール様とハルジオンを止めたのは、ラノアでした。
「いい加減にしてよ、二人共。こんな食堂の真ん中で口喧嘩だなんて、醜聞もいいところだわ」
「ラノ。こいつが原因で、リーゼが傷付いているのに、黙っていられる訳がないだろう」
今度はハルジオンとラノアが言い合いを始めた時に、ペンタール公爵令嬢が何食わぬ顔で現れたのです。
先程テオドール様は、茶会に招待されていて私を見送ってくださったと仰っていましたが、私は彼にはお会いしておりません。
どういう事なのか混乱していたのですが、これ以上騒ぎを起こしたくはなかったので、何も言わずに黙っておりました。
そんな私にゆっくりと近付いて来たペンタール公爵令嬢は、澄ました顔で話掛けてきたのです。
「皆様ごきげんよう、随分と騒がしいのですね。公衆の場なのですから、もう少し静かになさっても宜しいのではなくって? フェナジン男爵令息、随分と探しましたのよ。ランチの約束を、忘れたのかしら」
上品な仕草の立ち居振る舞いは、とても茶会の時と同一人物とは思えません。
戸惑う私をよそにテオドール様は、昨日のお茶会の席で私が男妾と遊んでいたかどうかを、直接ペンタール公爵令嬢に問い質したのでした。
「昨日俺たちがお茶会に伺った際、リーゼが複数の男妾と親密な遊びをしたと学園中の噂になっています。リーゼは、茶会の席に呼ばれただけなのに、何故そんなデマが流れたのでしょうか。何かご存じではありませんか」
「あら。火のない所に煙は立たないのよ。このような大勢の前で真実を話したら、リーゼリアの将来に疵が付いてしまいますわ」
誤解を招く様なもの言いに、声を張り上げ否定しようとしたラノアとハルジオンを止めるので精一杯だった私は、次のテオドール様の怒気を含んだ言葉に驚いたのです。
「構いません。ペンタール公爵家のご令嬢として、この場ではっきりと申し上げてください。俺が知る真実と、貴方が見た事実を、照らし合わせたいのです」
「分かったわ、そんなに怖い顔をしないでちょうだい。ちょっとした遊び心で、語っただけなのよ。悪気はなかったの、きちんと真実を話すわね。昨日の茶会に、わたくしは少し遅れてしまったの。その間に何があったのかは、分からないわ。ただサロンには、わたくしが招いていたお友達も数人いて、リーゼリアをとても気に入っていた。ただそれだけよ」
「それだけ…ですか?随分と、思わせ振りな言い回しをされるのですね。それでは、リーゼが男妾遊びを楽しんだと勘違いされても、仕方がないという事になります。俺が知る事実とは、かなり齟齬がありますね。そもそも公爵邸の茶会に、何故男妾がいるのですか?俺の招待状には、男妾と遊ぶ会とは記載されておりませんでしたし、男娼の姿も見てはいません。嘘偽りなく、きちんと説明をしてください」
「説明をして欲しいと言われても、これ以上は、わたくしの口からは言えないわ」
ペンタール公爵令嬢は、私が好奇の目に晒されているのが楽しくて仕方がないご様子です。
どうしても男妾遊びをした事にしたいのでしょうが、テオドール様がそれを許さなかったのでした。
「何も言えないという事は、リーゼを貶める為に、公女様が虚偽の噂を態と流したという事になりますね。お茶会に呼ばれたのは、俺とリーゼの二人だけですから、他に誰がいたかを知っている者はこの学園にはいませんから。リーゼを疵物扱いして、破滅させようと企てて、何が楽しいのですか?悪意を向けてくる相手との取引を、俺はしたくありません。今回の事は、父親でもある商会長に報告致しますので、今後一切ペンタール公爵家との取引は行わない様に致します」
一気に捲し立てたテオドール様の言葉に、私は、驚きのあまり息をするのも忘れてしまいそうでした。
公爵邸の茶会で何が起きたのかは、皆が面白おかしく噂をしておりました。
当然ですが知らない方もいたとは思いますが、ハルジオンの一声で、噂に真実味が出てしまったと思うのです。
絶望する私を他所に、意外な事にテオドール様がお怒りになったのでした。
「リーゼが、疵物の筈がないだろう。俺もその茶会に招待されていたんだ!俺は、用事があったからリーゼとは一緒に帰る事が出来なかったが、きちんと公爵邸の門を出るまで見送っていた。ペンタール公爵令嬢の茶会へ招待されたと聞いた時に、ドレスを用意したのもこの俺だ。我が商会の針子たちが、精魂込めて縫い上げた逸品なんだ。お前たちに見せてやれなかったのが残念なくらい、リーゼによく似合っていたんだ」
テオドール様は、何かに取り憑かれたのかと思う程、物凄い剣幕で捲し立てております。
「僕は、リーゼが疵物になったなんて、一言も言っていないじゃないか。ペンタール公爵令嬢が考えていそうな事を口にしただけなのに、そんなに怒鳴る事はないだろう」
「俺が、リーゼの潔白を証明してやる!ペンタール公爵令嬢本人に、茶会であった事を聞けばいいんだろう」
興奮して言い争う、テオドール様とハルジオンを止めたのは、ラノアでした。
「いい加減にしてよ、二人共。こんな食堂の真ん中で口喧嘩だなんて、醜聞もいいところだわ」
「ラノ。こいつが原因で、リーゼが傷付いているのに、黙っていられる訳がないだろう」
今度はハルジオンとラノアが言い合いを始めた時に、ペンタール公爵令嬢が何食わぬ顔で現れたのです。
先程テオドール様は、茶会に招待されていて私を見送ってくださったと仰っていましたが、私は彼にはお会いしておりません。
どういう事なのか混乱していたのですが、これ以上騒ぎを起こしたくはなかったので、何も言わずに黙っておりました。
そんな私にゆっくりと近付いて来たペンタール公爵令嬢は、澄ました顔で話掛けてきたのです。
「皆様ごきげんよう、随分と騒がしいのですね。公衆の場なのですから、もう少し静かになさっても宜しいのではなくって? フェナジン男爵令息、随分と探しましたのよ。ランチの約束を、忘れたのかしら」
上品な仕草の立ち居振る舞いは、とても茶会の時と同一人物とは思えません。
戸惑う私をよそにテオドール様は、昨日のお茶会の席で私が男妾と遊んでいたかどうかを、直接ペンタール公爵令嬢に問い質したのでした。
「昨日俺たちがお茶会に伺った際、リーゼが複数の男妾と親密な遊びをしたと学園中の噂になっています。リーゼは、茶会の席に呼ばれただけなのに、何故そんなデマが流れたのでしょうか。何かご存じではありませんか」
「あら。火のない所に煙は立たないのよ。このような大勢の前で真実を話したら、リーゼリアの将来に疵が付いてしまいますわ」
誤解を招く様なもの言いに、声を張り上げ否定しようとしたラノアとハルジオンを止めるので精一杯だった私は、次のテオドール様の怒気を含んだ言葉に驚いたのです。
「構いません。ペンタール公爵家のご令嬢として、この場ではっきりと申し上げてください。俺が知る真実と、貴方が見た事実を、照らし合わせたいのです」
「分かったわ、そんなに怖い顔をしないでちょうだい。ちょっとした遊び心で、語っただけなのよ。悪気はなかったの、きちんと真実を話すわね。昨日の茶会に、わたくしは少し遅れてしまったの。その間に何があったのかは、分からないわ。ただサロンには、わたくしが招いていたお友達も数人いて、リーゼリアをとても気に入っていた。ただそれだけよ」
「それだけ…ですか?随分と、思わせ振りな言い回しをされるのですね。それでは、リーゼが男妾遊びを楽しんだと勘違いされても、仕方がないという事になります。俺が知る事実とは、かなり齟齬がありますね。そもそも公爵邸の茶会に、何故男妾がいるのですか?俺の招待状には、男妾と遊ぶ会とは記載されておりませんでしたし、男娼の姿も見てはいません。嘘偽りなく、きちんと説明をしてください」
「説明をして欲しいと言われても、これ以上は、わたくしの口からは言えないわ」
ペンタール公爵令嬢は、私が好奇の目に晒されているのが楽しくて仕方がないご様子です。
どうしても男妾遊びをした事にしたいのでしょうが、テオドール様がそれを許さなかったのでした。
「何も言えないという事は、リーゼを貶める為に、公女様が虚偽の噂を態と流したという事になりますね。お茶会に呼ばれたのは、俺とリーゼの二人だけですから、他に誰がいたかを知っている者はこの学園にはいませんから。リーゼを疵物扱いして、破滅させようと企てて、何が楽しいのですか?悪意を向けてくる相手との取引を、俺はしたくありません。今回の事は、父親でもある商会長に報告致しますので、今後一切ペンタール公爵家との取引は行わない様に致します」
一気に捲し立てたテオドール様の言葉に、私は、驚きのあまり息をするのも忘れてしまいそうでした。
35
あなたにおすすめの小説
尽くしてきた婚約者に裏切られたので、婚約を解消しました〜彼が愛に気づいたのは、すべてを失ったあとでした〜
ともどーも
恋愛
「今回で最後だ。誓うよ」
これは二度目の『結婚式キャンセル』の時に言われた言葉。
四年間、愛する婚約者ディートリッヒのため尽くし続けてきたイリス。
だがディートリッヒは、イリスの献身を当然のものとし、やがて初恋の令嬢エレノアを優先するようになる。
裏切り、誤解、そして理不尽な糾弾。
心も身体も限界を迎えた夜、イリスは静かに決意した。
──もう、終わらせよう。
ディートリッヒが「脅しのつもり」で差し出した婚約解消の書類を、イリスは本当に提出してしまう。
すべてを失ってから、ようやく自分の愛に気づいたディートリッヒ。
しかしもう、イリスは振り返らない。
まだ完結まで執筆が終わっていません。
20話以降は不定期更新になります。
設定はゆるいです。
皇太女の暇つぶし
Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。
「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」
*よくある婚約破棄ものです
*初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました
もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。
公爵令嬢、学校をつくる。 ―学院のない世界に学院を作りますわ!―
鷹 綾
恋愛
男が学び、女は飾るだけ——
そんな世界に、ひとりの公爵令嬢が問いを投げた。
レクチャラー・トレイルブレイザー。
名門公爵家に生まれた彼女は、幼い頃に父から“学院”という御伽話を聞く。徒弟でも修道院でもない、講師を集め、制度として人を育てる場所。
この世界には、まだその言葉すら存在しなかった。
「講師を一か所に集めますわ」
家庭ごとに高額な家庭教師を雇う非効率。
才能があっても機会を得られない現実。
身分と財力だけが教育を決める社会構造。
彼女は合理性を武器に、貴族子弟のための“学院”を創設する。
複数の生徒から月謝を集めることで、家庭教師より安価に。
講師にはより高額な報酬を。
制度として成立する形で、教育を再設計する。
やがて学院は成果を出し、“学院出身”は優秀の証となる。
その基盤の上で、彼女は次の一歩を踏み出す。
——貴族女子学院。
「美しさと知性と教養を兼ね備えた令嬢。婚約先は、よりどりみどりですわ」
表向きは婚約戦略。
だが本当の狙いは、女性の地位向上。
男尊女卑が当然の世界で、女が学ぶことは前例なき挑戦。
保守派の反発、王太子からの婚約打診。
それでも彼女は揺れない。
「婚約は家同士の契約です。決定権は父にあります」
父を盾にしながら、順序を守り、世界を壊さず、底から上げる。
恋より制度。
革命ではなく積み重ね。
学院のない世界に、学院を。
これは、静かに世界を変えようとする公爵令嬢の物語。
真実の愛のお相手に婚約者を譲ろうと頑張った結果、毎回のように戻ってくる件
さこの
恋愛
好きな人ができたんだ。
婚約者であるフェリクスが切々と語ってくる。
でもどうすれば振り向いてくれるか分からないんだ。なぜかいつも相談を受ける
プレゼントを渡したいんだ。
それならばこちらはいかがですか?王都で流行っていますよ?
甘いものが好きらしいんだよ
それならば次回のお茶会で、こちらのスイーツをお出ししましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる