好きになったり、嫌いになったり

鈴蘭

文字の大きさ
52 / 52

真実を知らないリーゼ

しおりを挟む
 「もう直ぐテストですわね。リーゼは、どこまで出来ているの?」
 生徒会室の片隅で、教科書を開いて頭を悩ませているラノアは、計画的にテスト勉強をするタイプではありません。
 授業内容はしっかりと聞いている様なので、直前にテスト範囲を流し読みする程度で済ませているのです。
 それなのに、そこそこの点数を取って上位勢の中に入ってくるのですから、しっかりと計画を立ててお勉強をしたら良いのにと思ってしまいます。

 「私は、もうテスト範囲のお勉強は、終わっているわ。今は、過去の試験問題を片っ端から解いて、答え合わせをしながら間違いが無いか確認をしているの」
 「流石だわ、リーゼ。私には、計画的に何かを進めるのって、とても苦手な事よ」

 「そうなの?チェスの駒の動かし方を見ていたらぁ、何手も先を見越している様に感じていたよぉ。ラノア嬢は、本能で行動するタイプなのかなぁ」
 王太子殿下が、私たちの会話に入ってこられました。

 今はテスト前なので、クラブ活動等は皆お休みになります。
 勿論生徒会もお休みになりますが、お部屋を借りてお勉強会をしているのでした。
 この時期は、図書室は生徒で溢れ返っておりますし、教室の中も殺伐としているので正直居心地が悪かったのです。

 屋敷に戻ってお勉強をしてもよかったのですが、王太子殿下が一緒にテスト勉強をしようと嬉しいお声を掛けてくださったので、そのお言葉に甘えているのでした。
 上級生が見てくださるので、私のテスト勉強は、いつも以上に進んでいるのです。
 
 「ノワール嬢。生徒会で保管している過去のテスト問題は、これで最後だ。この短期間で、随分と頑張ったな。この調子なら、今回も高得点が期待出来るのではないか」
 「ハーデンベルギア様のお蔭ですわ。家庭教師から、付きっきりで教わっているのかと、錯覚する程でしたもの」
 「そうか。俺で役にたてたのなら良かった」
 「ハーデンベルギア様は、帰国後、初めてのテストになるのですよね?それなのに、私に付きっきりで、本当によかったのでしょうか?なんだか申し訳なく感じてしまいます」

 私は、何かおかしな事を言ってしまったのでしょうか?
 いつもは殆ど無表情なハーデンベルギア様が、困った様な顔をされてしまいました。

 「あははっ。余計な心配だよぉ、リーゼリア嬢。隣国はねぇ、我が国など足元にも及ばない程、学力が高いのだぞぉ。それにジルテックは、キプロスと大差ない、優秀な頭脳の持ち主だからなぁ。どちらも、僕の自慢の側近になる男たちだよ~」
 「そうでしたか。殿下から信頼されていらっしゃるなんて、本当に素晴らしい方たちなのですね」
 「グラナダは、大袈裟に言っているだけだ。キプロスは優秀な奴だが、俺はそこまで自慢される程ではない。だから、勘違いしないで欲しい」
 王太子殿下の言葉を否定するハーデンベルギア様は、どこか照れた様な感じに見えました。
 
 「皆様、根を詰めるのはよくありませんからね、お茶にしますよ。学園長から、異国の珍しい茶葉を頂いたのです。お茶菓子もありますので、疲れた頭に糖分を補給いたしましょう」
 モンテカルロ様が、役員の為にお茶を淹れてくださってました。

 「気付かずにすみません。モンテカルロ様に全てお任せしてしまうなんて、お恥ずかしいです」
 「お茶を淹れるのは、私の趣味のひとつですから、気にされる事はありませんよ。美味しく飲んでいただけるのが、私にとって一番のご褒美なのです」
 モンテカルロ様は、とても優しく、穏やかな笑顔で微笑まれておりました。

 「キプロスの趣味は、多岐にわたるからねぇ。僕も、全てを把握している訳ではないんだよぉ。それに、キプロスよりも先回りしようだなんて、無駄な事は考えないのが一番さっ」
 王太子殿下は、とても楽しそうなご様子で、教えてくださいました。
 私とラノアは、恐縮しながらも淹れてくださったお茶を、美味しく頂いたのです。

 「そう言えば、リーゼリア嬢は、誘拐されかけた事を知っているのかなぁ?」
 王太子殿下が、突然話題を変えました。
 「はい。父から、その様な事があったのは、報告を受けております。ですが、特に被害を受けた訳ではありませんでしたので、詳しい内容までは把握しておりません。一応、身辺に注意は払っておりますが、普段と変わらぬ生活をしておりました」
 「そうかぁ。では、首謀者が誰なのかは、知らないのだね?テオドールからも、何も聞いてはいないのかなぁ?」
 「テオドール様ですか?……特に変わった事は、聞いておりませんでした。何か、関係があったのでしょうか」
 私は、最近テオドール様の様子がおかしい事と、何か係わりがあるのかと考えてしまいました。
 
 「へ~え。彼は、意外な一面を持っているのだねぇ。ちょっと、見直したかもぉ」
 王太子殿下は、面白い事を見つけた少年の様に、瞳をキラキラと輝かせております。

 「テオドール様は、何か隠し事をされているのでしょうか?私には、伝えたくない事なのでしょうか?」
 「う~ん…別に、伝える必要はないと思うけれどぉ?どうしても知りたいのならばぁ、隠す必要もないと、僕は考えているよぉ。少なくても、リーゼリア嬢が関係している事だからねぇ。後から、真実を聞かされるリスクが無いとは限らないしね~」
 「テオドールは、隠し通すつもりなのだろう。聞いて気分の良い話ではないからな」
 「お前も、隠し通す事に、賛成するのかなぁ?ジルテック」
 「………態々、嫌な思いをさせる理由はないだろう」
 「君たちは、隠し通せる自信があるのだねぇ。凄いや~僕には、無理だなぁ。バレた時の事を考えたら、落ち着いて、お茶も飲めなくなってしまうよぉ」

 王太子殿下は、自身の身体を両腕で抱きしめて、モンテカルロ様に助けを求めたのでした。
 モンテカルロ様は、苦笑しながらも、殿下の肩をポンポンと叩いて慰めております。
 殿下は、とえも満足そうな顔になったのでした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

尽くしてきた婚約者に裏切られたので、婚約を解消しました〜彼が愛に気づいたのは、すべてを失ったあとでした〜

ともどーも
恋愛
「今回で最後だ。誓うよ」 これは二度目の『結婚式キャンセル』の時に言われた言葉。 四年間、愛する婚約者ディートリッヒのため尽くし続けてきたイリス。 だがディートリッヒは、イリスの献身を当然のものとし、やがて初恋の令嬢エレノアを優先するようになる。 裏切り、誤解、そして理不尽な糾弾。 心も身体も限界を迎えた夜、イリスは静かに決意した。 ──もう、終わらせよう。 ディートリッヒが「脅しのつもり」で差し出した婚約解消の書類を、イリスは本当に提出してしまう。 すべてを失ってから、ようやく自分の愛に気づいたディートリッヒ。 しかしもう、イリスは振り返らない。 まだ完結まで執筆が終わっていません。 20話以降は不定期更新になります。 設定はゆるいです。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

醜いと虐げられていた私を本当の家族が迎えに来ました

マチバリ
恋愛
家族とひとりだけ姿が違うことで醜いと虐げられていた女の子が本当の家族に見つけてもらう物語

「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」 侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。 「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」 そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

公爵令嬢、学校をつくる。 ―学院のない世界に学院を作りますわ!―

鷹 綾
恋愛
男が学び、女は飾るだけ—— そんな世界に、ひとりの公爵令嬢が問いを投げた。 レクチャラー・トレイルブレイザー。 名門公爵家に生まれた彼女は、幼い頃に父から“学院”という御伽話を聞く。徒弟でも修道院でもない、講師を集め、制度として人を育てる場所。 この世界には、まだその言葉すら存在しなかった。 「講師を一か所に集めますわ」 家庭ごとに高額な家庭教師を雇う非効率。 才能があっても機会を得られない現実。 身分と財力だけが教育を決める社会構造。 彼女は合理性を武器に、貴族子弟のための“学院”を創設する。 複数の生徒から月謝を集めることで、家庭教師より安価に。 講師にはより高額な報酬を。 制度として成立する形で、教育を再設計する。 やがて学院は成果を出し、“学院出身”は優秀の証となる。 その基盤の上で、彼女は次の一歩を踏み出す。 ——貴族女子学院。 「美しさと知性と教養を兼ね備えた令嬢。婚約先は、よりどりみどりですわ」 表向きは婚約戦略。 だが本当の狙いは、女性の地位向上。 男尊女卑が当然の世界で、女が学ぶことは前例なき挑戦。 保守派の反発、王太子からの婚約打診。 それでも彼女は揺れない。 「婚約は家同士の契約です。決定権は父にあります」 父を盾にしながら、順序を守り、世界を壊さず、底から上げる。 恋より制度。 革命ではなく積み重ね。 学院のない世界に、学院を。 これは、静かに世界を変えようとする公爵令嬢の物語。

真実の愛のお相手に婚約者を譲ろうと頑張った結果、毎回のように戻ってくる件

さこの
恋愛
好きな人ができたんだ。 婚約者であるフェリクスが切々と語ってくる。 でもどうすれば振り向いてくれるか分からないんだ。なぜかいつも相談を受ける プレゼントを渡したいんだ。 それならばこちらはいかがですか?王都で流行っていますよ? 甘いものが好きらしいんだよ それならば次回のお茶会で、こちらのスイーツをお出ししましょう。

処理中です...