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しつこい人
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イブさんは、何か特別な理由をお持ちで、こちらの敷地に出入り出来る立ち入り許可証を持っているのでしょうか。
ですが、もう少し行った先にある学舎には、選ばれた生徒以外は入れません。
しつこく着いて来たとしても、イブさんは守衛に止められますので、そこでお別れする事が出来るのです。
早く彼女と離れたいのですが、走る訳にもいかず、不自然にならない程度の速足で歩いているのでかなり疲れてきました。
ですがイブさんは、疲れる事を知らないのか、ずっと話しかけながら付いて来るのです。
私は息切れがしてきたというのに、イブさんは平気なご様子。
残念な事に、広大な敷地の中の最奥に私が通う学舎があるので、体力が限界を向かえない事を祈るしかありません。
そして悲しい事に彼女の甲高い声は人目を集めるので、長い距離を歩いている事もあり、沢山の生徒たちに目撃されたのです。
とても視線が痛いです。
昨日の今日ですし、悪目立ちをしてしまうのも仕方がありませんわね。
私は、後もう少しと言うところで体力の限界がきてしまい、一度歩みを止めてイブさんに向き合う事にいたしました。
汗だくで教室に駆け込む事だけは、避けたかったのです。
「やっとテオ君から奪った髪飾りを、あたしに返す気になったのね。あの店の商品は、ぜ~んぶあたしの為にテオ君が仕入れてくれた物なんだから、欲しいんだったらあたしに許可を取りなさいよね。分かったら、返事は一回よ」
後ろで何をブツブツと言っているのかと思ったら、巨匠の髪飾りの事を言っていたのですね。
昨日テオドール様から聞いていなければ、イブさんの言葉を鵜呑みにして、落ち込むところでしたわ。
そんな事よりも、今はきちんと話をしないといけないので、大きく息を吸って乱れた呼吸を整えました。
「イブさん。貴方は今、私たちが何処にいるのか、理解されておりますか?」
「は?学園に決まってるでしょう、馬鹿なの?」
思わず眉間に皺が寄りそうになったのを、必死に堪えた私は立派だと、自分で自分を褒めてあげたくなりました。
淑女の笑みを崩す事なく、やんわりとお伝え致しましょう。
「イブさん。ご自分の教室にお戻りください。ここから先には、選ばれた生徒以外は立ち入りが禁止されている学舎があるだけですわ」
「知ってるよ、あんたが特待生だって事くらい。授業料とかも、全部学園が出してくれる特別な存在なんでしょ。だからって何?頭がいい自慢なの?あたしだってこの学園の生徒なんだから、何処にいたってあたしの勝手でしょう」
頭が痛くなってきました。
「あのですね、イブさん。許可も無く立ち入り禁止区域に侵入した場合は、良くて停学。最悪の場合は、退学になる事をご存じないのですか?入園式で、学園長がお話をされていたのを、聞いていませんでしたか?」
「しっ知らないわよ、そんな事!あんたが黙っていれば、いい話でしょう」
「駄目です。学園の生徒ならば、学園の規則を守らなくてはいけないのです。特別進学科生徒専用学舎に入る事が出来る学生には、学園長から渡されたバッジを身に着ける義務があるのです。私が着けているのと同じ物を、イブさんは着けておりませんよね?学舎の前には、守衛がおりますから、見つかれば捕縛されますのよ」
私は胸に着けているバッジを、指先でそっと撫でて見せました。
「何よそれ。今度は自分が特別だって自慢?テオ君の気を惹きたいから……」
やはりこの方には、何を言っても無駄なのですね。
私は、助けを求めて辺りを見回すと、巡回中の守衛を見つけました。
視線が合ったので、片手を挙げてこちらに来て欲しいと合図を送ると、直ぐに駆け付けて下さったのです。
「どうしたのですか。何かありましたか」
「こちらの生徒が迷ったみたいなので、教室までお連れして頂きたいのです」
「はぁ?だから迷子じゃないって………」
「君、どうして此処にいるのかね?許可証を見せなさい」
「守衛さん。私は、教室に行っても宜しいでしょうか。遅刻したくはないのです」
「特待生のリーゼリア・ノワール伯爵令嬢ですね。分かりました、後の事は、私にお任せください」
私はやっと解放された事に安堵しましたが、後で呼び出されるのだろうと思うと、より一層気持ちが沈みました。
この学園の守衛は、王族は当然ですが、高爵位の生徒や私の様にバッジを受け取っている生徒の顔と素性を把握しているのです。
どこまでの生徒を把握しているのかまでは、分かりませんけれどね。
ですが、もう少し行った先にある学舎には、選ばれた生徒以外は入れません。
しつこく着いて来たとしても、イブさんは守衛に止められますので、そこでお別れする事が出来るのです。
早く彼女と離れたいのですが、走る訳にもいかず、不自然にならない程度の速足で歩いているのでかなり疲れてきました。
ですがイブさんは、疲れる事を知らないのか、ずっと話しかけながら付いて来るのです。
私は息切れがしてきたというのに、イブさんは平気なご様子。
残念な事に、広大な敷地の中の最奥に私が通う学舎があるので、体力が限界を向かえない事を祈るしかありません。
そして悲しい事に彼女の甲高い声は人目を集めるので、長い距離を歩いている事もあり、沢山の生徒たちに目撃されたのです。
とても視線が痛いです。
昨日の今日ですし、悪目立ちをしてしまうのも仕方がありませんわね。
私は、後もう少しと言うところで体力の限界がきてしまい、一度歩みを止めてイブさんに向き合う事にいたしました。
汗だくで教室に駆け込む事だけは、避けたかったのです。
「やっとテオ君から奪った髪飾りを、あたしに返す気になったのね。あの店の商品は、ぜ~んぶあたしの為にテオ君が仕入れてくれた物なんだから、欲しいんだったらあたしに許可を取りなさいよね。分かったら、返事は一回よ」
後ろで何をブツブツと言っているのかと思ったら、巨匠の髪飾りの事を言っていたのですね。
昨日テオドール様から聞いていなければ、イブさんの言葉を鵜呑みにして、落ち込むところでしたわ。
そんな事よりも、今はきちんと話をしないといけないので、大きく息を吸って乱れた呼吸を整えました。
「イブさん。貴方は今、私たちが何処にいるのか、理解されておりますか?」
「は?学園に決まってるでしょう、馬鹿なの?」
思わず眉間に皺が寄りそうになったのを、必死に堪えた私は立派だと、自分で自分を褒めてあげたくなりました。
淑女の笑みを崩す事なく、やんわりとお伝え致しましょう。
「イブさん。ご自分の教室にお戻りください。ここから先には、選ばれた生徒以外は立ち入りが禁止されている学舎があるだけですわ」
「知ってるよ、あんたが特待生だって事くらい。授業料とかも、全部学園が出してくれる特別な存在なんでしょ。だからって何?頭がいい自慢なの?あたしだってこの学園の生徒なんだから、何処にいたってあたしの勝手でしょう」
頭が痛くなってきました。
「あのですね、イブさん。許可も無く立ち入り禁止区域に侵入した場合は、良くて停学。最悪の場合は、退学になる事をご存じないのですか?入園式で、学園長がお話をされていたのを、聞いていませんでしたか?」
「しっ知らないわよ、そんな事!あんたが黙っていれば、いい話でしょう」
「駄目です。学園の生徒ならば、学園の規則を守らなくてはいけないのです。特別進学科生徒専用学舎に入る事が出来る学生には、学園長から渡されたバッジを身に着ける義務があるのです。私が着けているのと同じ物を、イブさんは着けておりませんよね?学舎の前には、守衛がおりますから、見つかれば捕縛されますのよ」
私は胸に着けているバッジを、指先でそっと撫でて見せました。
「何よそれ。今度は自分が特別だって自慢?テオ君の気を惹きたいから……」
やはりこの方には、何を言っても無駄なのですね。
私は、助けを求めて辺りを見回すと、巡回中の守衛を見つけました。
視線が合ったので、片手を挙げてこちらに来て欲しいと合図を送ると、直ぐに駆け付けて下さったのです。
「どうしたのですか。何かありましたか」
「こちらの生徒が迷ったみたいなので、教室までお連れして頂きたいのです」
「はぁ?だから迷子じゃないって………」
「君、どうして此処にいるのかね?許可証を見せなさい」
「守衛さん。私は、教室に行っても宜しいでしょうか。遅刻したくはないのです」
「特待生のリーゼリア・ノワール伯爵令嬢ですね。分かりました、後の事は、私にお任せください」
私はやっと解放された事に安堵しましたが、後で呼び出されるのだろうと思うと、より一層気持ちが沈みました。
この学園の守衛は、王族は当然ですが、高爵位の生徒や私の様にバッジを受け取っている生徒の顔と素性を把握しているのです。
どこまでの生徒を把握しているのかまでは、分かりませんけれどね。
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