【完結】騙された私も愚かでした

鈴蘭

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メリーと言う孤児

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 「愛する者と結ばれて、幸せな家庭を築きたいと思うのならば、爵位を捨てて平民になれば宜しいのですよ。どちらも手にいれようだなんて、贅沢だとは思いませんか?」
 「そうだね。君の言う通りだと、私も思うよ………」

 
 貴族家に産まれた子供には、恋愛感情と言う物は不要とされています。
 家の為に、親が決めた相手と縁を結ぶ事が当たり前なのですから。
 自由な恋愛をして、自由に生きる事を許されているのは、平民の特権だとも言えます。
 ただその自由を、勘違いしてしまっている者が居るのは、何時の時代も変わらないものなのでしょうね。
 罷り通らないと分かっていながら手を出してしまうのは、愚か者の所業と嘲笑する事しか出来ない私も、その中の一人なのでしょう。

 この国の貴族は、孤児を引き取る事が、暗黙の了解となっています。
 基礎的な教育は当然の事ですが、剣術の才能がある者は騎士団に取り立て、文官の才能がある者は執務を手伝わせる等、相応の職に付ける様雇用するのが目的なのです。
 特に秀でた能力が無い者でも見捨てる事はせずに、使用人として何処の貴族家でも働ける様、教育を施すのが習慣となっていました。
 見目の麗しい娘に至っては、裕福な平民や新興貴族等に嫁げる様、淑女教育を受けさせる事もあります。
 これは、この国の貴族として産まれた者の、義務でもあるのでした。
 小さくも大きくも無い領地を治める我が伯爵家でも、孤児を引き取り大切に育て、各々に合わせた教育を施しておりました。
 
 そんな数多いる孤児の一人に、メリーと名付けられた少女がおります。
 彼女は見目麗しく、物覚えも良く知識欲もあった為、テーブルマナーやダンス等の淑女教育を施されていました。
 何れは何処かへ嫁がせる予定で、パーティ等にも連れて行っていたのです。
 最初の頃は、慎ましく淑やかにしておりましたが…
 何を勘違いしたのか、伯爵令嬢であるキャロラインであるかの様な振舞いが、目立つようになって行きました。
 その立ち居振る舞いは、伯爵家による教育の賜物なのだろうと、多くの物は気にも留めていなかったのです。
 それを良い事に、メリーの行動は日増しに大胆になって行き、高位貴族の令息ばかりと親しくする様になったのでした。
 キャロラインは、メリーに何度も態度を改める様にと注意をしたのですが、返事はその時だけで改める事無く日増しに酷くなって行ったのです。

 「メリー。貴方は伯爵家の使用人であって、伯爵令嬢では無いのよ。パーティへの付き添いを許しているのは、歳の近い新興貴族の令息の目に留まればと思っての事であって、高位貴族へ嫁がせる為では無いの。分かっているのでしょう?」
 「はい。お嬢様、承知致しております」
 「貴方、何時も返事は良いのに、全然改めていないでしょう。どんなに高位令息と親しくなったとしても、平民の身分では正妻にはなれないのよ。それとも、愛妾にでもなりたいの?」
 「申し訳ございません、お嬢様。愛妾になりたいとは、思っておりません」
 「ならどうしてなの?私は、メリーの事を思って注意しているのよ。貴方の行動は、誰が見ても愛妾になりたがっているとしか思えないわ。どんなに高位の貴族家の令息に見初められても、愛妾は本邸で暮らす事も、産んだ子を世継ぎとする事も許されないのは知っているのでしょう?旦那様に愛想を付かされたりでもしたら、直ぐに追い出されてしまうのよ。そんなの、悲しいとは思わないのかしら?」
 「………」
 「メリーのしている事は、間違っているのよ。貴方が無作法な振る舞いをする事は、伯爵家の家紋に傷を付ける事にもなるの。私は、メリーに幸せな結婚をさせてあげたいのよ。だからお願いよ、これ以上お父様の機嫌を損ねるような事はしないで欲しいの。今度パーティで失態を犯したら、貴方を連れて行く事が出来なくなるわ。分かって貰えたかしら?」
 「はい、承知致しました。お嬢様」
 「分かったのなら、もう下がって良いわよ」
 お辞儀をして部屋を出て行ったメリーの顔が、酷く不機嫌になっていた事に、私は気付いておりませんでした。
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