【完結】騙された私も愚かでした

鈴蘭

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メリーと伯爵夫妻(ハロルド視点)

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 私の話しを聞き終わると、伯爵は悔しさを滲ませながら話し出した。
 「キャロラインは、メリーを警戒していたのだ。そんな者に、手紙を託す等あり得ない。誰が信じると言うのだ、君もメリーの素行の悪さを知っていただろう。私は、何度も考え直すようにと、進言した筈だ。それなのに君は…」
 「素行の悪さは、知っておりました。私も最初は警戒していたのですが、渡された手紙に封蝋印はありませんでしたが、筆跡は間違いなくキャロラインの物でした。伯爵夫妻の事も、伯爵邸でキャロラインがどんな扱いを受けていたのかも書いてあります。私はキャロラインの言葉を信じて、疑いもしていませんでした。今となっては、何が真実なのか…頭が混乱しております」
 「証拠はあるのか。メリーから受け取ったと言う、キャロラインからの手紙は、持っているのか」
 「キャロラインは、手紙を処分するようにと言っておりましたが、私の部屋に全て保管しております」
 伯爵は、暫し考えた後で問うてきた。
 「見せて貰う事は可能か?」
 「勿論です。直ぐに持って来ます」
 「いや、付いて行こう。続き部屋に、メリーが居るのだろう?アレからも、話が聞きたい」
 「分かりました」
 伯爵は、連れて来た護衛に命令した。
 「お前たちは、キャロラインの傍に付いていなさい。侯爵邸の使用人は、信用出来ない。寝室に入ろうとする者がいたら、躊躇わず切り捨てろ」
 「畏まりました」
 背の高い護衛は、寝室の前で待機した。
 キャロラインの思い人は伯爵に頭を垂れてから、無言のまま無遠慮に寝室の中へと入って行った。
 人の妻の寝室に入る等、許し難いとは思ったが、伯爵の言葉は最もだ。
 彼がキャロラインを傷付ける事はしないだろう、医者たちも居る。
 二人きりになる訳では無いのだから、悔しいがここは我慢するしかないと、私は唇を噛みしめた。
 「お前たちも、侯爵邸の使用人を皆、自室にて待機させておけ。通いの者は客室にでも集めて、誰一人として屋敷から出すな!」
 「承知致しました」
 父上から指示を受けた護衛たちは、部屋に居た者を連れ出した。
 メイド長は、まともに歩く事も出来ないのか、護衛に引き摺られて行った。
 私は、自室に伯爵夫妻を案内した。
 しかしキャロライン側近の護衛とは言え、何故伯爵夫妻は彼が寝室に入っても、注意をしなかったのだ?
 公認の仲だと、疑われても仕方がないのではないか?
 私は複雑な心境のまま、自室に繋がる続き部屋の扉を開けると、メリーが飛び付いて来た。
 「ハロルド様!私の誤解が解けたのね、嬉しい」
 静かだった、伯爵夫人の怒号が飛んだ。
 「メリー!貴方って子は、何処まで私たちを苦しめたら気が済むの!貴方の様な浅ましい子なんて、引き取るのでは無かったわ。私のキャロラインを苦しめて、お咎めが無いなんて思わないで頂戴!」
 「お…奥様…旦那様まで…」
 まさか伯爵夫妻が一緒だとは思わなかったのだろう、メリーは後退った。
 「メリー。お前には何度も失望させられたが、まさかキャロラインに手を出すとまでは、思ってもいなかったぞ。私たちの宝をあんな姿にしておいて、情けをかけて貰える等とは、思っていないだろうな。地獄の様な苦しみを与えてやる、覚悟しておけ」
 メリーは何時もの様に、上目遣いで縋る様に、伯爵の元へと歩き出した。
 「旦那様…私は何もしておりません、信じて下さい」
 「近寄るな!虫唾が走る」
 伯爵の前に、伯爵夫人が立ち塞がった。
 その表情には、怒りがはっきりと見て取れる。
 「メリー。そのネックレス、貴方が付けている事で、信じて欲しいと言われても無理な話よ。それは、キャロラインに持たせた物でしょう」
 「ち、違います。これは…キャロライン様が、私に感謝の印だと言って、譲って下さったのです」
 「そう。代々伯爵家の娘に引き継がれる大切な家宝を、侍女に下げ渡す様な愚かな娘だと言いたいのね」
 「え…」
 メリーは縋る様な眼差しを、今度は私に向けて来た。
 あのネックレスは、メリーが好んで着けている物だ。
 キャロラインが披露宴で着けていたのは知っているが、家宝だったなんて聞いていない。
 そんな大切な事まで、キャロラインは私に話してくれなかったのか?
 私は、こんなにも彼女から嫌われていたのか…
 「ハロルド小侯爵の妻になったつもりでいるのは、本当のようね。肌や髪までしっかり手入れされているわ、指先まで貴婦人の様ではありませんか。随分と豪華に着飾って、伯爵家に居た時とは、雲泥の差ですわね。一体この屋敷の使用人は、何を考えているのかしら。これではメリーが、この屋敷の女主人だと思われても、仕方がないのではありませんか」
 伯爵夫人の問いかけに、私は何も答える事が出来なかった。
 使用人までが、メリーを私の妻の様に扱っていたのは、間違いの無い事実なのだから。
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