【完結】柔道の先生 R_18

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第四章 それぞれの教師の在り方

8.親心

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職員室の書類の山に埋もれる林先生に、俺はそっと近づいた。
蛍光灯の冷たい光が、彼女の眼鏡に反射してる。
「林先生、鈴木は?」


声が思ったより低く出た。
鈴木の担任、林先生が顔を上げ、眼鏡の奥で少し目を伏せる。

「昨日も休みだったけど、今日も休みだそうです...」
「そうですか…」

林先生が書類を止めて、静かに切り出した。

「山谷先生、実は鈴木君のことで、家庭訪問しようと思ってるんですけど…」
「は、林先生、俺も家庭訪問に着いて行っていいですか?俺も鈴木の様子、直接見たいんです」

林先生が眼鏡の奥で優しく微笑む。
「もちろんです、とても助かります。山谷先生なら、鈴木君も安心すると思います」




翌日、林先生の車に乗り、鈴木の家に向かった。
助手席で夕暮れの車窓を眺めながら、胸が締め付けられる。
林先生がハンドルを握り、静かに話し始めた。
「鈴木君、小学1年生から担任してるんですけど、本当に優しい子なんですよ。」

心が温まり、「そうなんですか?」と聞き返した。
林先生が微笑む。

「ええ、真面目で、クラスのみんなを気遣う子でした。2年生の時、友達が怪我したら、ずっとそばにいてあげてたんです。今でもその素直なあどけなさが残ってて…鈴木君の1番いいところですね。」

俺は体育や柔道では鈴木の姿をよく見ていたけど、普段の学校生活は見れていなかった。

今、鈴木は小学5年生。
柔道の大会では、そのがっしりした体格から中学3年生と間違われることすらある。
がっしりした肩幅、太い腕、どっしりとした下半身。
その恵まれた体格に気づいたのが、鈴木が小学3年の頃だ。
特にふくらはぎから太ももにかけては、小さい力士のような逞しさだったから、俺の目が釘付けになった。

内股や大外刈りを繰り出すときのスピードと力は、まるで重戦車が一気に加速するような迫力があった。
大会では、県の予選で小学5年生の部を圧倒し、決勝では相手を鮮やかな一本で沈めた。
観客席から「中学生だろ、あれ!」って声が飛んできたこともあったっけ。

林先生の話に耳を傾ける。
「水泳の着替えで、簡単に裸になっちゃう子供らしさがあって、みんなと笑い合ってたんですよ。無邪気で可愛いかったなぁ...」

懐かしさが湧き、「はは、そういえば、稽古の時もそんな感じだったな」と呟いた。
高学年になって、着替えを少しずつ恥ずかしがるようになった鈴木。
大人になってるんだろうな、と思いながら、林先生が続けた。

「授業中、私と目が合うと、ニコって笑ってくれるんです。そのたびに、私、教師になってよかったなって...鈴木くん、ほんとに可愛いですよね。」

鈴木の話をする林先生の目は少し潤んで見えた。

「わかります!俺みたいなのは結構怖がられるタイプなんですけど、先生~!ってくっついて来てました...あいつ、人懐っこいですよね。」

そんな鈴木を、俺は突き放したんだよな...。
あんなに懐いてくれてたのに...。
今からじゃあ遅いよな...。

「最近はそんな元気もなくて…、心配です。少しでも悩みを打ち明けてくれるといいんですけど...」

鈴木の震える肩が頭に浮かび、「鈴木、大丈夫かな…」と呟いた。


そして車が鈴木の家の前に着き、エンジンが止まった。
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