白夜のからくりハウス

夕凪

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異形の村

Welcome party

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「さ、行こう」
 パズラーンがにこにこしながら、アスターの手を引っ張った。つられてアスターも微笑んだ。
「もしかして、真ん中の広場でやるんですか?」
 上から見えた広場を思い出しながら、アスターはたずねた。ツクモが頷く。
「はい。この角を曲がった先ですよ」
 アスターは、他にどんな姿形をした住人がいるのか気になった。みんなより少し早く進んで、角の先をちらっと見てみる。そして驚いた。
「ソーニャ、すごいよ。いろんなごちそうが並んでる、ケーキもあるよ」
 アスターは、さっきからずっと黙り込んでいるソーニャに話しかけた。嬉しさを共有したかったのだが、ソーニャは軽く頷いただけだった。まったく、ノリが悪い。そんなことを思っていると、ソーニャがふいに口を開いた。
「何人くらいいるんだ?」
「え?三十一人だよ」
 アスターは、さっき見た光景を思い出しながら答えた。ソーニャが不思議そうに言う。
「人口、割と少ないんですね」
「まぁね。初期と比べてかなり死んじゃったから」
 パズラーンが肩をすくめた。なんだか闇が深そうだ。追及してみようか迷っていると、ソーニャがまたもや口を開いた。
「死因は?飢えですか?」
 その言葉に、アスターはぎょっとした。さすがに、今日会ったばかりの相手に踏み込み過ぎではないだろうか。自分だって、聞きたいけれど我慢していたのに。
「それもあるね。でも、割合的には自死の方が多いかな」
 パズラーンが指を数えながら答えた。さらに闇が深くなる回答だ。何があったのだろうかと考えていると、突然ソーニャが転んだ。
「痛、」
「大丈夫?」
 アスターは反射的にソーニャの方に振り返った。ソーニャが転倒なんて、これまた珍しい。路地の中へと飛んでいってしまった翻訳機をアスターは取りに行った。
「アスター」
 後ろから声をかけられて、アスターはまたもや振り返った。
「今度はなんだい?」
「」
 アスターは少し驚きながらも、それを顔に出さないように努力しながら頷いた。一応、いろいろあれどソーニャのことは信頼している。その彼が言うのだから、間違いないだろう。そんなことを思いながら、アスターはソーニャに翻訳機を渡した。
「はい、どうぞ」
「どうも」
 優雅な仕草で、ソーニャはもう一度翻訳機を耳につけた。相変わらず奇妙に綺麗な動きだ。
「それでは、行きましょうか」
 ツクモの言葉に、アスターとソーニャは頷いた。異形の人々でにぎわう広場に、歩みを進める。そのとき、パズラーンがはっとしたように顔を上げた。
「やば、私、蔵に花びらのやつ置いてきちゃった。取りに行かなくちゃ」
「本当にうっかり者ですね。私が行きましょうか?」
 呆れたようにツクモが言う。しかし、パズラーンは首を振った。
「いいよ。でも、人手が欲しいな。そうだ、アスター、手伝ってくんない?」
「あ、いいですよ。ソーニャもいりますか?」
 アスターはソーニャの方に顎をしゃくった。しばらく考えてから、パズラーンはまた首を振った。
「うーん、でも、そんなにはいらないかも。逆に狭くなって探しにくくなっちゃう」
 アスターはにっこりと頷いた。
「わかりました。じゃ、ソーニャ、またね」
「あぁ。またな」

 はぁ。タレイアは暗い街の中を歩きながら、ため息をついた。〈ナゴミ〉に行かなければ良かっただろうか。いや、でもあの桜の和菓子はおいしかったしなぁ。こればかりは仕方がないか。
 とりあえず、合流しよう。タレイアは静まり返った街の中、広場の祠へと向かった。

 どういうことだ?オルロージュは、急いでキーボードに指を走らせながら自問自答した。メトロのプログラムがおかしくなっている。ただのバグならばこれまでずっと対応してきた。しかし、これとは違う。これは、人為的な書き換えだ。このままでは〈ハウス〉の内部に入り込んでしまったアスターが、最悪な目に合ってしまう可能性も考えられる。早く虫退治をしなければ。いったい誰がこんなことを?
 そこまで考えたところで、はっとした。片手でキーボードを打ちながら、もう一方の手で横にある別のコンピュータを起動させた。彼女と連絡を取らなければ。
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