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真珠の塔と仮面の怪盗
A warning letter from a thief
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「行ってみる?」
壮が声のした方を指さした。関係ないけど、さっきからいつもよりも目に生気がある気がする。別に普段が無気力というわけではないけれど。とにかく、私たちはうなずいた。何が起こったのか気になる。
野次馬根性で、私たちは声のした店へと向かった。ショーウィンドウにきらびやかな宝石がたくさん飾られているから、おそらく宝石店だろう。すでに人だかりができている中、中心に近づくのは大変だった。満員電車の中をイメージしてもらえればわかるはずだ。前に次々と現れる人々を避けながら、やっとのことで私たちは最前列にたどり着くことができた。
そこでは、手紙のようなものを手にしながら青い顔をしている男の人と、その周りにいる店の人たちと思われる人々が集まっていた。さっきの声の主は、たぶん真ん中にいるその男の人だ。でも、これだけじゃ何が起こったのかわからない。私は、面白そうに成り行きを覗っている、近くにいた青年に話しかけた。
「何が起きたんですか?」
「何だ?」
青年は首を傾げながら私を見た。聞こえなかったようだ。私はもう一度、大きな声で話しかけた。
「あの、何が起きたのか知っていますか?」
「あぁ、知ってる知ってる。オレ、さっきから見てたから」
青年がうなずいた。なんだかチャラそうだ。本当に大丈夫だろうか。私は不安になってきた。聞く相手を間違えたかもしれない。旭の隣にいる、赤ちゃん連れの恰幅の良いお母さんの方が良かっただろうか。
「あのな、怪盗マスカレードから、予告状が来たんだ」
今度は私が首を傾げる番だった。怪盗?ルパンや二十面相みたいなものだろうか。いや、二十面相は怪人か。とりあえず、よくわからないということがわかった。
「もしかしてお前、知らないのか?」
驚いたように青年が言う。私は正直にうなずいた。海上都市では有名なのだろうか。私は困惑しながらもさらにたずねた。
「怪盗って言うからには、マスカレードさんは盗みをいろいろしてるんですか?」
「そうだよ。いつも、変装やら何やらで獲物を盗み出だすんだ・まさか、知らねぇ奴がいたとはな」
青年はまだびっくりしているようだ。怪しまれてはまずい。身の上話のようなことを要求されても、説明がややこしくなるだけだ。それか、嘘をつく手間が増えるだけだろう。私は話を逸らした。
「それで、今回は何を盗むんですか?」
「月の雫、〈ラクリデルナ〉だよ」
青年はすぐに答えてくれた。私は思考を巡らせた。確か、月の雫って…。
「真珠ですか?」
「大正解。大粒の、虹色に輝く真珠さ。十桁はくだらねぇって聞いてるよ。明日の夜に盗みに来るんだと」
青年は自慢げに教えてくれた。真珠といえば、お母さんが最後のコンサートでつけていたっけ。闇夜に輝く満月のような、あの輝きは忘れられない。
「詳しいですね」
「オレ、マスカレードのファンなんだよね」
青年はにやりと笑った。なるほど、いろいろ知っているわけだ。
「いろいろ、ありがとうございました」
私は礼を言ってから、少し離れてしまったみんなの方へと向かった。とりあえず、情報を共有してみよう。
「なるほどね。だから、警察みたいな人たちが来てるわけだ」
紫苑が店の外に止まっている、車と自転車が合体したような機械を横目で見た。
一旦店の外に出た私たちは、店の壁により掛かるようにして作戦会議を練っていた。この揉め事に首を突っ込みたいという、これまた野次馬根性剥き出しの意見には、みんなが賛成だった。せっかくここまで来たわけだし、普段見られないものが見られるなら、ぜひ見て帰りたいではないか。
「それにしても怪盗かぁ」
「実在するんだな、この世界では」
わくわくしたように旭と紫苑が盛り上がった。確かに、「怪盗」という存在にはなんだか心が惹きつけられる。それが、漫画や物語の中という枠組みを超えて、実際に見ることができるというのならなおさらだ。
「この調子じゃ、名探偵も出てきそうだね」
壮が二人の盛り上がりっぷりを見て、ふふっと笑った。
「ぜひ近くで見てみたいわね」
しみじみと私はつぶやいた。
「チケットでも予約しとけば見れるのかな」
旭が唸った。そのとき、紫苑がはっとしたように手を叩いた。
「そうだ、警察の人?たちに混ぜてもらうのはどうかな。最前列で見れることは間違いないでしょ」
「うーん、そんなに簡単に入れてくれるものかな」
壮が苦笑する。それもそうだ。でも、紫苑のアイデアはいい線を行っていると思う。上手くできないものだろうか。そのとき、私は思いついた。
「そうだ、変装を見破るためって理由で入れてもらうのはどうかしら」
「どういうことだ?」
すかさず旭が食いついてきた。壮が納得したようにうなずいてくれる。
「確かに、さすがのマスカレードも子供には変装できない。だから、変装かどうかを確かめることができる。いい考えだね」
私はうなずいた。でも一つ、懸念がある。
「ただ、私たちは異世界人。なのに、世界に干渉しちゃっていいのかしら」
みんなが唸った。そう、それが問題なのだ。別世界から訪れた人間が、何かを変えてしまって良いのだろうか。
「許す!」
私たちはその大声にびっくりして、通りの方へ向き直った。そこには、青紫色の瞳をした、凛々しそうな女性が立っていた。紺色の制服に身を包んでいる。
「あなたは、誰ですか?」
紫苑が驚いたようにたずねた。彼女はにっこりと笑った。
「私はリンドウ。お前たちに、怪盗逮捕を手伝ってもらう者だ」
壮が声のした方を指さした。関係ないけど、さっきからいつもよりも目に生気がある気がする。別に普段が無気力というわけではないけれど。とにかく、私たちはうなずいた。何が起こったのか気になる。
野次馬根性で、私たちは声のした店へと向かった。ショーウィンドウにきらびやかな宝石がたくさん飾られているから、おそらく宝石店だろう。すでに人だかりができている中、中心に近づくのは大変だった。満員電車の中をイメージしてもらえればわかるはずだ。前に次々と現れる人々を避けながら、やっとのことで私たちは最前列にたどり着くことができた。
そこでは、手紙のようなものを手にしながら青い顔をしている男の人と、その周りにいる店の人たちと思われる人々が集まっていた。さっきの声の主は、たぶん真ん中にいるその男の人だ。でも、これだけじゃ何が起こったのかわからない。私は、面白そうに成り行きを覗っている、近くにいた青年に話しかけた。
「何が起きたんですか?」
「何だ?」
青年は首を傾げながら私を見た。聞こえなかったようだ。私はもう一度、大きな声で話しかけた。
「あの、何が起きたのか知っていますか?」
「あぁ、知ってる知ってる。オレ、さっきから見てたから」
青年がうなずいた。なんだかチャラそうだ。本当に大丈夫だろうか。私は不安になってきた。聞く相手を間違えたかもしれない。旭の隣にいる、赤ちゃん連れの恰幅の良いお母さんの方が良かっただろうか。
「あのな、怪盗マスカレードから、予告状が来たんだ」
今度は私が首を傾げる番だった。怪盗?ルパンや二十面相みたいなものだろうか。いや、二十面相は怪人か。とりあえず、よくわからないということがわかった。
「もしかしてお前、知らないのか?」
驚いたように青年が言う。私は正直にうなずいた。海上都市では有名なのだろうか。私は困惑しながらもさらにたずねた。
「怪盗って言うからには、マスカレードさんは盗みをいろいろしてるんですか?」
「そうだよ。いつも、変装やら何やらで獲物を盗み出だすんだ・まさか、知らねぇ奴がいたとはな」
青年はまだびっくりしているようだ。怪しまれてはまずい。身の上話のようなことを要求されても、説明がややこしくなるだけだ。それか、嘘をつく手間が増えるだけだろう。私は話を逸らした。
「それで、今回は何を盗むんですか?」
「月の雫、〈ラクリデルナ〉だよ」
青年はすぐに答えてくれた。私は思考を巡らせた。確か、月の雫って…。
「真珠ですか?」
「大正解。大粒の、虹色に輝く真珠さ。十桁はくだらねぇって聞いてるよ。明日の夜に盗みに来るんだと」
青年は自慢げに教えてくれた。真珠といえば、お母さんが最後のコンサートでつけていたっけ。闇夜に輝く満月のような、あの輝きは忘れられない。
「詳しいですね」
「オレ、マスカレードのファンなんだよね」
青年はにやりと笑った。なるほど、いろいろ知っているわけだ。
「いろいろ、ありがとうございました」
私は礼を言ってから、少し離れてしまったみんなの方へと向かった。とりあえず、情報を共有してみよう。
「なるほどね。だから、警察みたいな人たちが来てるわけだ」
紫苑が店の外に止まっている、車と自転車が合体したような機械を横目で見た。
一旦店の外に出た私たちは、店の壁により掛かるようにして作戦会議を練っていた。この揉め事に首を突っ込みたいという、これまた野次馬根性剥き出しの意見には、みんなが賛成だった。せっかくここまで来たわけだし、普段見られないものが見られるなら、ぜひ見て帰りたいではないか。
「それにしても怪盗かぁ」
「実在するんだな、この世界では」
わくわくしたように旭と紫苑が盛り上がった。確かに、「怪盗」という存在にはなんだか心が惹きつけられる。それが、漫画や物語の中という枠組みを超えて、実際に見ることができるというのならなおさらだ。
「この調子じゃ、名探偵も出てきそうだね」
壮が二人の盛り上がりっぷりを見て、ふふっと笑った。
「ぜひ近くで見てみたいわね」
しみじみと私はつぶやいた。
「チケットでも予約しとけば見れるのかな」
旭が唸った。そのとき、紫苑がはっとしたように手を叩いた。
「そうだ、警察の人?たちに混ぜてもらうのはどうかな。最前列で見れることは間違いないでしょ」
「うーん、そんなに簡単に入れてくれるものかな」
壮が苦笑する。それもそうだ。でも、紫苑のアイデアはいい線を行っていると思う。上手くできないものだろうか。そのとき、私は思いついた。
「そうだ、変装を見破るためって理由で入れてもらうのはどうかしら」
「どういうことだ?」
すかさず旭が食いついてきた。壮が納得したようにうなずいてくれる。
「確かに、さすがのマスカレードも子供には変装できない。だから、変装かどうかを確かめることができる。いい考えだね」
私はうなずいた。でも一つ、懸念がある。
「ただ、私たちは異世界人。なのに、世界に干渉しちゃっていいのかしら」
みんなが唸った。そう、それが問題なのだ。別世界から訪れた人間が、何かを変えてしまって良いのだろうか。
「許す!」
私たちはその大声にびっくりして、通りの方へ向き直った。そこには、青紫色の瞳をした、凛々しそうな女性が立っていた。紺色の制服に身を包んでいる。
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