死にたがりの神様へ。

ヤヤ

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第七章 地下世界

93.汚いこと

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「さて、全員起きたかな?」

 にこやかな笑顔とともに問われるそれ。
 太陽などないはずなのに、それでも照らされる地面の上で、リレイヌ、睦月、リック、アジェラは無言で目の前の女──アガラを見やった。
 アガラはそんな彼らの視線を受け、満足そうに笑っている。

「うむ。起きてるね。その歳で早起きができるとは実に素晴らしい」

「舐め腐った言い方してんなよ。ってか、昨日俺らに何したんだテメェコラ」

「なにもしてないさ! ただちょっと睡眠薬盛っただけ」

「盛ってんじゃねえか!!」

 騒ぐ睦月にカラカラ笑い、アガラはそこでコホンとひとつ。咳払いをしてみせると、次いでパチンと指を鳴らす。
 アガラが指を鳴らすと同時、きゅるりん!、という謎の効果音と共に、4人の衣服が変化。みすぼらしい服へと姿を変え、これにまた睦月が「あにしやがんだ!!」と吠えたてる。

「郷に入りては郷に従え。この地下世界で、キミらのような子供が高価すぎる服装を身にまとっていたら格好の餌食になることは目に見えてる。というわけでの衣装変更さ」

「格好の餌食ぃ? 何言ってやがんだ。餌食にしてくるような奴なんてどこにもいねえじゃねえか。あとあれ研究所の服だからそんな高価なものじゃねえし……」

「あれでも高価なの。ココにいる者にとってはね。それに、餌食にしてくる奴はいるよ。ココからうんと離れた場所にある地下の町にね」

 地下の町?、と声が揃った。
 皆が皆、不思議そうな顔をして互いに顔を見合わせる。

「ふふ、困惑してるね。いい反応をありがとう──この地下世界-アンダーグラウンド-には、計四つの町が存在していてね。ひとつは北方に位置するメイレン。ひとつは南方に位置するブローゼン。ひとつは西方に位置するナニセ。ひとつは東方に位置するクロウベーヌ。この四つの町は互いに最低限の物資などを運んだりしてその生態系を維持してるんだ」

「生態系って……まるで生き物みたいに言うんだな」

「お、いい着眼点だ。そう。各町は古代より存在する生き物であり、その上に地下の人々が住んでいることになるんだ」

「ぉぁ……」とアジェラが紡いだ。驚くように一歩身を引いた彼の横、睦月が後ろ頭に手を組み合わせながら問いかける。

「んじゃ生態系が乱れたら人々はどうなんの?」

「そりゃ決まってる。喰われるんだよ。エサとしてね」

 にこっと笑ったアガラに全員が沈黙。不安だ……、という顔をする彼ら、彼女らに、「まあ大丈夫だよ」とアガラは告げる。

「ていうか地下世界-アンダーグラウンド-自体がでっかい生き物みたいなもんだし、今更何言っても喰われた以上はこの中で生き抜くしかないってね。あはは!」

「……不安だ」

 リックが言う。げんなりとした顔の彼は、ゴワゴワする衣服を指先で摘みながら深く息を吐き出した。

「……まあ、思うことも言いたいこともたくさんあるだろうけど、今やるべきはひとつ、ふたつ──キミたち四人には、これから剣の修行とこの地下世界に巣食う魔物の討伐を行ってもらう。私はそれなりに厳しいから、ちゃんと着いてくるようにね。そしてあともうひとつ……どちらかと言えばこちらの方が大事なんだが──キミら四人、この地下世界にいる間は盗賊として生きてもらうことになる」

「は?」と声が揃う。疑問や疑心をふんだんに含んだそれに、アガラは告げた。

「この世界で生き抜くには上手く相手を騙し、欺き、奪っていかないといけない。キミらは特に貴族の出。きっと、普通に生きていたら汚いことになど手を染めないで生きてこれただろう。だが、これから先、キミらがキミらでいるためにはその汚いことも学んでいく必要がある」

「……そうは言っても、盗みなんて……」

「嫌ならいい。そうだと言うなら、話はここで終わりになるからね。でも、大切なものを守りたい。その気持ちは、キミらにもあるだろう?」

 無言の四人に、アガラは言う。
「地べたを這っても、生き抜く。そんな術を学びなさい」、と。

「今は辛いかもしれない。嫌なことも多いかもしれない。けれど、大丈夫。きっと未来は明るいからね」

 そう言い朗らかに笑うアガラに、なんとも言えぬ顔の四人。静かに互いを見やる彼ら、彼女らは、少しして沈黙。深くアガラに頭を下げ、「お願いします」と、そう言った。
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