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第三章 強さを求めて
46.夢の中で
しおりを挟むぽつんと立っていた。ただぽつんと。
そんな彼女の周りを囲むように浮遊する色とりどりの光たちは、ふわりふわりと漂いながらあっちへこっちへ行っている。
精霊たちだ。
彼女は思った。なんだか楽しそうな動きだな、と、そこまで考えた彼女の背後、カツンと小さな音が鳴る。
それはまるで、ヒールの着いた靴で固い床を蹴ったような音だった。
彼女は振り返る。音に反応して。
けれど、そこには誰もおらず、何も無い。
思わず首を傾げて前方に顔を戻した彼女。そんな彼女の視界の中、綺麗な赤が、楽しげに細められた。
「──はじめまして、リレイヌ」
細められた赤が弧を画く。
彼女は思わず後ずさり、それを咎めるように不満顔のウンディーネが彼女の肩に手を置きその行動に静止をかけた。慌てて振り返った彼女をチラリと見たあと、ウンディーネは水となって消えていく。
彼女は混乱した。
何が起きているのか。自分はなぜこのような状況下に置かれているのか。
理解出来ずに右往左往と目を泳がせる彼女に、目の前の赤──を持つ黒髪の女性は、優雅にその長い髪を片手で払い、微笑み、口を開く。
「もう一度やりましょうか。はじめまして、リレイヌ」
「は、はじめ……まして……」
「うん。よろしい」
笑う女性。にこにこと楽しげなその姿に目を瞬く彼女は、じっとその姿を観察するように視界に写す。
真っ赤に彩られたルビーのような瞳。
ふんわりと揺れる長い黒髪。
女性の優美な体を包む漆黒のドレスに
ヒールの着いた高い靴。
「……」
彼女は首を傾げた。
こんなヒト見たこともないと不思議がるその姿にクスリと笑い、女性はそっと背を丸めてかがみ込む。丁度彼女の目線に自分の目線を合わせるように膝を折った女性は、そこでふんわりと笑うと、そっと手を伸ばして彼女を撫でた。キョトンと瞬かれる青が、純粋な色を宿している。
「今はまだ、知らなくていい。私のこと、それから、あの人のことも」
知らなくていいの、と告げ、立ち上がる女性。踵を返してカツカツと音を立て歩くその姿を視線で追う彼女は、そこで、劈くような悲鳴を耳にする。
嘆いていた。誰かが。真っ赤に彩られた炎の中で。
涙を流し悲鳴をあげるその姿に、彼女は思わず青ざめ、震え、後ずさる。
あつい、アツイ、熱い。
酷い熱さに、思わず目をつぶって顔を背ける。そんな彼女の横、誰かが過った。駆け出すように前に進むそれは、真っ白と言っても過言では無い男性で──
「……初代……さま……?」
本能で感じたままに、彼女は呟く。
その呟きも、悲鳴と嘆き、そして熱に包まれ、ゆっくりと解けるように消えていった……。
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