死にたがりの神様へ。

ヤヤ

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第四章 悪意は忍び寄る

57.その兄上は

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「──で? 具体的に何をするんだ?」

 リピト家に着いてすぐ、リックは言った。
 その視線の先にはやる気満々のリレイヌと、何故か着いてきているリオルと睦月の姿がある。小柄なリレイヌの後ろにいるふたりは楽しそうにニヤニヤ笑っており、それがとてつもなく不快なのだろう。「お前たちはさっさと帰れ」と吐き捨ててから、リックは改めてとリレイヌに目線を向けた。

「なにか必要なものがあるのか? その……魔法には……」

「ん? んーん! 特にないよ! 必要なのは、そうだなぁ……現場! 犯行現場!」

「犯行現場?」

「古代の森の?」と首を傾けたリックに「ちがう!」と返し、リレイヌは心配して出てきたままのウンディーネをチラリと見てから前を向く。

「要約するとリックのお部屋!」

「……僕の?」

「うん! 操車さんに聞いた話だと、リックは部屋に行ってから行方不明に。それってつまり、部屋の中で拐かされたってことであってるよね?」

「え? ああ、うん……」

「で、魔導の練習しようとしてたリックを気付かれずに攫ったとなると、相手は“認識阻害魔法”を使用してる可能性が高いの」

「“認識阻害魔法”……」

「って、なに?」と睦月とリオル。
 リレイヌは「そのままの意味!」と答えると、腰に手を当てふんすと笑う。

「“認識阻害魔法”は相手に気づかれないようにするための魔法なの! すーっごい初歩的な魔法だから練習すればわりと誰でも使えるんだけど、これにも欠点があってね。初歩的な魔法のせいかもしれないけど、ある程度力のない人が使うと魔力の痕跡が多く残っちゃうんだ」

「「「ほう……」」」

「ってわけで! リックのお部屋に言って痕跡調べをしたいと思うの! ねね! リックいい!?」

 どこかワクワクとした様子のリレイヌに、リックは戸惑いがちに頷いた。頷く瞬間、コンマ一秒で部屋の中を片付けていたか考えはしたが、多分大丈夫ということで彼は何事も無かったようにリレイヌを誘導するように歩き出す。

 てこてこ てこてこ

 広い屋敷内を、小さな四人と精霊が進む。

「僕の部屋は西棟にあるんだ。父の部屋は東ね。この先の階段を上がって、進むと扉があるから、そこから──」

「あらぁ、リックちゃんじゃない」

 ビクリ、とリックが震えた。
 自然と足を止めた彼にならい皆も歩みを止めれば、前方に一人の人間を発見する。リックと同じ髪色を持つ、長めの前髪で橙色に輝く片目を覆ったその人物は、貴族が好むような高級感溢れる衣服に身を包み、にこやかに笑っている。

「……兄上」

 リックが言う。

「まずはただいまが先じゃないの? リックちゃん」

 兄上、そう呼ばれたその人物は、にこやかに笑ってから不思議そうな顔の子供たちに目を向けた。

「この子たちは? お友達? やだわぁ、お友達と遊んでたならそう言ってくれれば良かったのに! てっきり事件でも起きたのかと思って慌てちゃったじゃない!」

「……ご冗談を」

「冗談じゃありません! で? この子達のお名前は? ヤダー! みんなお顔綺麗! これは将来が楽しみだわ~!」

「……」

 リックは今にも舌打ちしそうな顔で横を向くと、すぐに平静を装い皆を紹介した。

「右からリオル、リレイヌ、睦月」

 たったそれだけの紹介。それでも良かったのだろう。リックの兄はにこやかに笑うと、「よろしくねぇ」と一言。リックを見て目を細める。

「リックちゃん。後でちゃんとお父様の所に行くのよ? すっごい心配なされてたんだから」

「……言われずとも分かっています」

「それならいいけど。じゃ、かわい子ちゃんたちまたねぇ~。今度時間があったらお茶しましょ!」

 バチコン!、とウインクを飛ばすリック兄。戸惑うリオルと睦月がコクコクと頷いたのを見届け、彼は颯爽とその場を去っていく。

 残された面々。落ちる沈黙。

「……なんてーか……キャラ濃いな?」

「……兄上だからな」

「それで済ませるんだね……」

 あはは、と笑ったリオルが、そこで黙り込むリレイヌに気づいた。不思議に思い声をかけた彼に、リレイヌは両の手を握り合わせながら彼を見る。

「……みつけた」

 紡ぐ彼女。
 その意味を察したリオルは、無表情のリックを一瞥。男の消えた方向を見て、グッと、眉間に皺を寄せた。
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