死にたがりの神様へ。

ヤヤ

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第四章 悪意は忍び寄る

58.部屋の中と魔術の痕跡

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「──ココが僕の部屋」

 そう言って押し開かれた豪華な作りの扉の向こう。いやに整理整頓された、こう言ってはなんだが整った部屋がその姿を現した。

 部屋の広さはそこそこあり、扉から見える範囲に机と椅子、本棚、衣装ダンス、鏡、ベッドがこれまた綺麗に鎮座している。
 まるでそう、現代風に言うならばサンプルルームのような整った部屋……なのだが、置いている物が少なすぎて逆に部屋の広さが悪さをしている気がするのも否めない。

「なんだよ。面白みのねー部屋だな」

 睦月が後ろ頭に腕を組み一言。

「うるさい」

 吐き捨てたリックは、「それで?」と難しい顔のリオルとリレイヌを振り返った。

「そこのふたりはさっきから何なんだ。何か言いたいことがあるならハッキリ言え」

「いやぁ……」

「そういや、さっき『みつけた』とか言ってたよな? なにかめぼしい物でもあったわけ?」

 問われたそれに、リオルは困ったように頬をかいて視線を横へ。チラリと、下を向くリレイヌを見てから、彼女を庇うように前に出る。

「と、とりあえずさ、今は犯人探しが大事だろ? めぼしい物は後でもいいから、折角だし探偵ごっこしようよ」

「家の物はやらないぞ」

「だからそれは置いといて……」

「リック」と、リレイヌがリックを呼んだ。呼ばれた彼は不思議そうな顔で彼女を振り返り、目を瞬く。
 そんなリックにズカズカと近づいたリレイヌは、その小さな両手でリックの顔を挟むと、柔らかな彼の頬にピタリとひんやりした手のひらを当てる。

 思わずビクつき、赤くなるリック。
 無表情で舌を打ち鳴らす睦月。
 戸惑うリオル。

 三者三様の様子を男の子たちが見せる中、唯一の女であるリレイヌはじいっとリックの顔を見つめ、それからふいに横を向く。

「──あった。魔術の痕跡」

「へ、へ……?」

「リックの体に付着してる痕跡と同じモノ。だからコレが、多分犯人の残してったモノだと思うんだけど……」

「わ! ……わかっ、たから……離してくれない、か?」

 努めて冷静に。発す声には静かな色をつけて。
 リックは内心バクバクとうるさい心臓をそのままに、やや途切れ途切れに言葉を発すと、謝罪と共に手を離したリレイヌから素早いはやさで距離をとる。そうして腕を組む彼を、睦月が笑った。「ダッセ」なんて聞こえた声に、リックはジトリとした睨みを向ける。

「……聞こえているんだが?」

「そりゃ聞こえるように言ってるからな~」

「……フン。嫉妬とは醜い奴だ」

「はぁ? だぁれが嫉妬してるって?」

「お前だろう? そのあからさまな態度、分かりやすすぎると思うが?」

「腹立つ野郎だな今すぐ八つ裂きにしてやろうか?」

「出来るものならやってみろ。魔導の素質がなかった哀れなキ・ミ」

 ニヤリと笑ったリックに、カチンと来たのだろう。睦月は主人であるリオルを振り返ると、「御前を騒がせることをお許しください」と一言告げる。

「バカ。ダメに決まってるだろ」

「でもコイツが……!!」

「でもも何もなし。仲良くしなよ、ったく……」

 やれやれと告げ、リオルは視線をリレイヌへ。何かを考えるようにずっとある一方向を見つめる彼女を、そっと目を細めて見守った。
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