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第四章 悪意は忍び寄る
62.招かれる客
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「おい! まだ着かないのか!」
「これでも全速力ですってぇ~!!」
ガラガラガラガラ
丸い車輪が音を立ててぐるぐる回る。
ガタガタと大振りに揺れる馬車の中、リックは操手の言葉に舌を打つと、ドカリと馬車内の椅子に座った。どこか焦ったように貧乏ゆすりを繰り返す彼を前、ある程度の話を聞いた睦月は難しい顔で腕を組む。
広がる沈黙。揺れる馬車内。
互いに不安そうな顔の両者……。
「……てかさ、マジなわけ? リレイヌが、アイツが、その……」
「……人伝いに聞いた話だから確証は無い。だが、もしもの可能性は大いにある。現に屋敷内に彼女とシェレイザはいなかった。それどころか、ウンディーネが言うには大きな魔力の痕跡もあったそうだ。今彼女には偵察に言ってもらっているが……」
言いかけたところでパチン!、と音。
突如として空中に現れた水の塊に驚くふたりが、すぐに女性の形をとったそれにああ……、と真顔に。
精霊ほんと突然現れるからなぁ、と思う彼らを知る由もなく、出現したウンディーネは焦ったように言葉を吐く。
「街までの魔力は辿れたんだけど、私を警戒してるのかそれ以降の魔力痕跡が途絶えてて見つけられなかったわ。しかも最悪なことに、リレイヌ様の纏う神気も辿れない。ここまで精度の高い認識阻害魔法を使えるのは、余程の手練か、若しくは人ではないなにか。人だとすると……相手、相当手強いわよ」
「……」
チッ、とリックが舌を打つ。明らかに怒り心頭な彼の様子に目を向けていた睦月が、「なあ」と一言。ウンディーネへと話しかける。
「なに?」
返事を返すウンディーネ。
ふわふわと漂う彼女に、睦月は言った。
「街までの痕跡はあったんだよな? んでもって、それ以降がない……それってつまり、俺らを招いてる可能性があるってことか?」
「可能性としては否定できないわ。あんな事件が起きた後だし、相手は私がいることを念頭に入れて動いてる気がする。だから多分、恐らくだけど、狙いは……」
「……僕だな?」
リックの静かな声に、ウンディーネは口を噤んでからゆっくりと頷いた。きっとそうだと、無言で告げる彼女に、リックは軽く目を伏せてから顔を上げる。
「ウンディーネ。この事をシアナ・セラフィーユへ報告してくれ」
「エッ、でも、アナタたちだけで大丈夫?」
「ああ。狙いが僕なら交渉材料は揃っているからな」
「は? お前それって……」
無言のリック。静かな彼の様子を、気に食わないと言いたげに睦月は舌を打ち鳴らす。
「自己犠牲精神かよ。今どき流行んねーぞ」
「そんなんじゃない。僕はただ……」
ガタン!、といっさい大きく揺れた馬車内。驚きよろけたふたりが小さな小窓から外を見ようとすれば、操手が慌てたように馬車の扉を開けて顔を出す。
「坊ちゃんすんません! 馬車の車輪が一個壊れて!!」
「なら街まで走ればいい」
「えええ!?」
驚き青ざめる操手を無視し、リックは馬車を降りて視線を前方へ。その先にあるであろう街に軽く息を吐くと、あわあわとする操手に言う。
「お前は馬車を修理してから必ず街へ来い。必ずだ。……おい、行くぞ」
「命令すんな」
吐き捨てる睦月が狼の姿へ。変化した彼が「乗せてやろーか?」と問うてくるのに「結構」を返し、リックは上着を脱いでそれを地面へ投げ捨てる。
「行くぞ」
「言われるまでもねーっての」
言って、同時に駆け出すふたり。
放られた上着を拾う操手は、そんなふたりに心の中でさめざめと泣いた。
「これでも全速力ですってぇ~!!」
ガラガラガラガラ
丸い車輪が音を立ててぐるぐる回る。
ガタガタと大振りに揺れる馬車の中、リックは操手の言葉に舌を打つと、ドカリと馬車内の椅子に座った。どこか焦ったように貧乏ゆすりを繰り返す彼を前、ある程度の話を聞いた睦月は難しい顔で腕を組む。
広がる沈黙。揺れる馬車内。
互いに不安そうな顔の両者……。
「……てかさ、マジなわけ? リレイヌが、アイツが、その……」
「……人伝いに聞いた話だから確証は無い。だが、もしもの可能性は大いにある。現に屋敷内に彼女とシェレイザはいなかった。それどころか、ウンディーネが言うには大きな魔力の痕跡もあったそうだ。今彼女には偵察に言ってもらっているが……」
言いかけたところでパチン!、と音。
突如として空中に現れた水の塊に驚くふたりが、すぐに女性の形をとったそれにああ……、と真顔に。
精霊ほんと突然現れるからなぁ、と思う彼らを知る由もなく、出現したウンディーネは焦ったように言葉を吐く。
「街までの魔力は辿れたんだけど、私を警戒してるのかそれ以降の魔力痕跡が途絶えてて見つけられなかったわ。しかも最悪なことに、リレイヌ様の纏う神気も辿れない。ここまで精度の高い認識阻害魔法を使えるのは、余程の手練か、若しくは人ではないなにか。人だとすると……相手、相当手強いわよ」
「……」
チッ、とリックが舌を打つ。明らかに怒り心頭な彼の様子に目を向けていた睦月が、「なあ」と一言。ウンディーネへと話しかける。
「なに?」
返事を返すウンディーネ。
ふわふわと漂う彼女に、睦月は言った。
「街までの痕跡はあったんだよな? んでもって、それ以降がない……それってつまり、俺らを招いてる可能性があるってことか?」
「可能性としては否定できないわ。あんな事件が起きた後だし、相手は私がいることを念頭に入れて動いてる気がする。だから多分、恐らくだけど、狙いは……」
「……僕だな?」
リックの静かな声に、ウンディーネは口を噤んでからゆっくりと頷いた。きっとそうだと、無言で告げる彼女に、リックは軽く目を伏せてから顔を上げる。
「ウンディーネ。この事をシアナ・セラフィーユへ報告してくれ」
「エッ、でも、アナタたちだけで大丈夫?」
「ああ。狙いが僕なら交渉材料は揃っているからな」
「は? お前それって……」
無言のリック。静かな彼の様子を、気に食わないと言いたげに睦月は舌を打ち鳴らす。
「自己犠牲精神かよ。今どき流行んねーぞ」
「そんなんじゃない。僕はただ……」
ガタン!、といっさい大きく揺れた馬車内。驚きよろけたふたりが小さな小窓から外を見ようとすれば、操手が慌てたように馬車の扉を開けて顔を出す。
「坊ちゃんすんません! 馬車の車輪が一個壊れて!!」
「なら街まで走ればいい」
「えええ!?」
驚き青ざめる操手を無視し、リックは馬車を降りて視線を前方へ。その先にあるであろう街に軽く息を吐くと、あわあわとする操手に言う。
「お前は馬車を修理してから必ず街へ来い。必ずだ。……おい、行くぞ」
「命令すんな」
吐き捨てる睦月が狼の姿へ。変化した彼が「乗せてやろーか?」と問うてくるのに「結構」を返し、リックは上着を脱いでそれを地面へ投げ捨てる。
「行くぞ」
「言われるまでもねーっての」
言って、同時に駆け出すふたり。
放られた上着を拾う操手は、そんなふたりに心の中でさめざめと泣いた。
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