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第十一話 ガラクタの少女
しおりを挟む死が、死が、死が、その身に、残虐に降りかかる。
体を裂かれ、抉られ、折り曲げられ、潰され、赤を散らして、命を捨てる。そうして蘇ること数回、彼には限界が訪れた。フラフラと、覚束なく地面を踏み締める彼を、その主は不安げな顔で見つめている。
なぜそうまでして試練に向かうのか。
なぜそうまでして死に行くのか。
万能なる彼女ですら、その意味を見いだせなかった。
「うっ……」
ガクリとくずおれた膝が、地面につく。慌てて彼に駆け寄れば、パシリと冷たく、伸ばした手を払われた。
「放っておいてください」
泣きそうなくらい、悲しげな声だった。
その悲しみの原因が自分にあると悟ったリレイヌは、目を細め、彼から離れる。そして、また立ち上がり、進み行く彼を、視線だけで追いかけた。
「イーズ……」
呼んだ名に、返事はない。
「主様ー!」
と、遠くから自分を呼ぶ声がして、振り返れば腕の中へと赤色が飛び込んできた。小柄なそれは「主様! 今日はお暇なのかしら!?」とはしゃぐように声を上げると、嬉しそうにリレイヌの胸元へと頭を寄せる。
「メーラ……」
リレイヌは小さく、困ったように笑った。
「ごめんね、メーラ。今日はやることがあるんだ」
赤い少女の頭を撫で、リレイヌは告げる。そんな彼女を見上げるメーラは、プクッとその柔らかな頬を膨らませると、不満げに「あのダメ補佐官の所に行く気なのね」と言葉を漏らした。
「ダメ補佐官って……」
「あんな奴、ダメ補佐官なのよね! 主様を悩ませる害虫! 害悪! メーラはあいつが大っ嫌いなのよ!」
独特な語尾をつけて告げる彼女に、「そうだね」と一言。でも自分は彼のことが大好きなんだよ、と言えば、メーラは忽ち、萎むように黙っていく。
「……メーラの一番は主様なのよ。メーラだって主様のこと大好きなのよね」
「わかっているよ。メーラも私にとっては大切な子だ。かけがえのない、ね」
そっと頭を撫で微笑む主に、魔法使いの少女はスンと鼻を鳴らして瞼を伏せる。愛する主君と共に。永遠に。
それがガラクタと呼ばれる少女の、願いであった。
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