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ep.8 二度目の初夜、伊吹くんの本心 ★
1.★
「はるちゃん」
「ん?」
伊吹はクッションごと、榛名の目の前に移動してきた。
そして、ズイッと顔を近づけてくる。榛名は思わず身じろぎをした。
「なっ、なに……?」
「僕たちは今日、正式に夫婦になった。だからキスもセックスも解禁して構わないよね?」
「…………は!?」
伊吹は、その見惚れしまうほど端正な顔を近づけて、榛名に迫ってくる。
キリッとした眉、切れ長の涼しげで、それでいて情熱的な目。
鼻筋はスッと通っており、都会的なシャープさと野性味の入り混じった頬、そして唇。
こんな色気満載の艶っぽい唇にキスなんてされたら――
(いや、でも待って――)
そう思っているうちに、瞬く間に唇を塞がれた。
「んむっ……」
それはもう待ったも言わせない、かぶりつくようなキスだった。
(た……食べられる!)
まるで飢えた獣のように、榛名の唇を求めてくる。
深く追い求められていると、今度は咥内にぬるりとした舌が侵入してきた。
伊吹の舌が、榛名の舌を求めて絡みついてくる。
榛名は訳もわからず、伊吹の動きに追い立てられるように、必死で舌を絡め合った。
生理的な涙がポロポロとこぼれ落ちる。
ようやく唇が離れると、伊吹は榛名を抱きかかえ、そっとベッドの上に横たわらせた。
そして、ゆっくりと覆いかぶさってくる。
「ちょっ……ちょっと、ちょっと待て―――!」
身体の力が抜けそうになっていた榛名だったが、全力で押し返した。びくともしなかったけど。
だが一応、伊吹は止まった。
「どうしたんだい、はるちゃん?」
「どうしたもこうしたもないわよ!」
まさか、契約結婚の自分たちの間に、このような行為が発生するとは思ってもいなかった。
てっきりプラトニックな生活を送るものだとばかり思っていた。
5年以上もこういう行為とはご無沙汰だったので、まったくピンと来ていなかった。
だが思い返せば、最初に伊吹は「色々と試した結果、色々な面で榛名が1番良かった」と言っていたではないか。
言葉自体は何度も頭の中でリフレインしていたのに、言葉のさらに深い意味まで考えていなかった。
(私と、そういうことする気満々じゃないか――!?)
いまさらその事実に気づき、榛名は軽く眩暈を覚えた。
待てよ、眩暈がするなら、今ちょうどベッドに横になっているではないか。
(このまま眠ってしまおう)
ついには現実逃避を始めた。
だが、目を閉じて大人しくなったのを、伊吹は『合意』と受け取った。榛名のスウェットの上下を脱がしにかかり、それはもう器用にするりと脱げた。
「ちょっと、待った――!」
色気のない白Tシャツとショーツだけになった榛名は、またしても勢いよくストップをかけた。
「はるちゃん、さっきから一体どうしたんだ?」
伊吹の立場からしたら、静かになったり叫んだり、榛名のテンションの高低差に戸惑っていることだろう。
「伊吹くん! 今日は書類を渡しに来たんじゃないの!?」
(そうだよね、むしろそうだと言って!)
榛名が懇願じみた目で、すがるように尋ねると、伊吹はポカンとしていた。
「書類……? 何のことだ? 特にそういったものはないが」
「だって、人事労務部はあと2日で仕事納めなんだよね!?」
「さっきから、君は一体何を言っているんだ? はるちゃん」
完全にクエッションマークが浮かんでいる伊吹に、榛名は起き上がってこう言った。
「何って……今日来たのは、急ぎで出さなければいけない書類があったからなんじゃないの――!!」
ここまで言うと、聡明な伊吹はピンと来たようだ。
起き上がった榛名を抱きとめると、耳元で甘く囁いた。
「僕たちの婚姻に関するあらゆる書類は、何よりも優先して申請したから、とっくに処理済だよ」
「それに、今夜こうして来たのは、はるちゃんに美味しいものを食べてもらうためと、初夜を迎えるためなのだから」
つまり、榛名を美味しく頂くため――ついオヤジくさいことを考えてしまい、榛名は地味に凹んだ。
「初夜って……明日は仕事でしょ?」
明日から休みであることを、伊吹にはまだ伝えていない。
そして今夜そのような行為に及んだら、翌日に差し障りがあるのは目に見えている。なにせこちらは5年以上……(略)
「だって、はるちゃん、メールをくれたじゃないか。『本日が年内最終の出勤日になります』って」
(……そうだった。ホテルロイヤルヴィリジアンの担当者宛のメールに、伊吹くんのアドレスも入れたんだわ)
「それに合わせて、僕も明日は有休を取ったのさ」
明後日は出勤するけれどね。伊吹はそう言って微笑んだ。
「ん?」
伊吹はクッションごと、榛名の目の前に移動してきた。
そして、ズイッと顔を近づけてくる。榛名は思わず身じろぎをした。
「なっ、なに……?」
「僕たちは今日、正式に夫婦になった。だからキスもセックスも解禁して構わないよね?」
「…………は!?」
伊吹は、その見惚れしまうほど端正な顔を近づけて、榛名に迫ってくる。
キリッとした眉、切れ長の涼しげで、それでいて情熱的な目。
鼻筋はスッと通っており、都会的なシャープさと野性味の入り混じった頬、そして唇。
こんな色気満載の艶っぽい唇にキスなんてされたら――
(いや、でも待って――)
そう思っているうちに、瞬く間に唇を塞がれた。
「んむっ……」
それはもう待ったも言わせない、かぶりつくようなキスだった。
(た……食べられる!)
まるで飢えた獣のように、榛名の唇を求めてくる。
深く追い求められていると、今度は咥内にぬるりとした舌が侵入してきた。
伊吹の舌が、榛名の舌を求めて絡みついてくる。
榛名は訳もわからず、伊吹の動きに追い立てられるように、必死で舌を絡め合った。
生理的な涙がポロポロとこぼれ落ちる。
ようやく唇が離れると、伊吹は榛名を抱きかかえ、そっとベッドの上に横たわらせた。
そして、ゆっくりと覆いかぶさってくる。
「ちょっ……ちょっと、ちょっと待て―――!」
身体の力が抜けそうになっていた榛名だったが、全力で押し返した。びくともしなかったけど。
だが一応、伊吹は止まった。
「どうしたんだい、はるちゃん?」
「どうしたもこうしたもないわよ!」
まさか、契約結婚の自分たちの間に、このような行為が発生するとは思ってもいなかった。
てっきりプラトニックな生活を送るものだとばかり思っていた。
5年以上もこういう行為とはご無沙汰だったので、まったくピンと来ていなかった。
だが思い返せば、最初に伊吹は「色々と試した結果、色々な面で榛名が1番良かった」と言っていたではないか。
言葉自体は何度も頭の中でリフレインしていたのに、言葉のさらに深い意味まで考えていなかった。
(私と、そういうことする気満々じゃないか――!?)
いまさらその事実に気づき、榛名は軽く眩暈を覚えた。
待てよ、眩暈がするなら、今ちょうどベッドに横になっているではないか。
(このまま眠ってしまおう)
ついには現実逃避を始めた。
だが、目を閉じて大人しくなったのを、伊吹は『合意』と受け取った。榛名のスウェットの上下を脱がしにかかり、それはもう器用にするりと脱げた。
「ちょっと、待った――!」
色気のない白Tシャツとショーツだけになった榛名は、またしても勢いよくストップをかけた。
「はるちゃん、さっきから一体どうしたんだ?」
伊吹の立場からしたら、静かになったり叫んだり、榛名のテンションの高低差に戸惑っていることだろう。
「伊吹くん! 今日は書類を渡しに来たんじゃないの!?」
(そうだよね、むしろそうだと言って!)
榛名が懇願じみた目で、すがるように尋ねると、伊吹はポカンとしていた。
「書類……? 何のことだ? 特にそういったものはないが」
「だって、人事労務部はあと2日で仕事納めなんだよね!?」
「さっきから、君は一体何を言っているんだ? はるちゃん」
完全にクエッションマークが浮かんでいる伊吹に、榛名は起き上がってこう言った。
「何って……今日来たのは、急ぎで出さなければいけない書類があったからなんじゃないの――!!」
ここまで言うと、聡明な伊吹はピンと来たようだ。
起き上がった榛名を抱きとめると、耳元で甘く囁いた。
「僕たちの婚姻に関するあらゆる書類は、何よりも優先して申請したから、とっくに処理済だよ」
「それに、今夜こうして来たのは、はるちゃんに美味しいものを食べてもらうためと、初夜を迎えるためなのだから」
つまり、榛名を美味しく頂くため――ついオヤジくさいことを考えてしまい、榛名は地味に凹んだ。
「初夜って……明日は仕事でしょ?」
明日から休みであることを、伊吹にはまだ伝えていない。
そして今夜そのような行為に及んだら、翌日に差し障りがあるのは目に見えている。なにせこちらは5年以上……(略)
「だって、はるちゃん、メールをくれたじゃないか。『本日が年内最終の出勤日になります』って」
(……そうだった。ホテルロイヤルヴィリジアンの担当者宛のメールに、伊吹くんのアドレスも入れたんだわ)
「それに合わせて、僕も明日は有休を取ったのさ」
明後日は出勤するけれどね。伊吹はそう言って微笑んだ。
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