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ep.13 伊吹くんと温泉付きホテルに宿泊します
3.
旅行の楽しみは温泉と――何と言っても食事である。
「「わぁ、すごい豪勢だね!」」
熱海で採れた海の幸や山の幸が並ぶ豪華な夕食を前にして、2人同時に歓喜の声を上げた。
食事は各部屋に運ばれてくる。榛名と伊吹は和室の長テーブルに向かい合い、ずらりと並べられた食事を堪能していた。
「このお刺身美味しい~!」「魚の焼き加減も最高だ」
しばらくは2人でワイキャイ感想を言い合いながら、料理の味を楽しんでいた。
伊吹と榛名――昔から2人は食べることが好きという部分でも気が合った。
2人とも残さず食べるのがポリシーで、美味しいものを前にすると、つい集中して食べてしまうところも同じだった。
チラリと伊吹を見ると、
(やっぱり、伊吹くんの食べる所作キレイ……)
思わず手を止めて、うっとりと眺めてしまうのだった。
伊吹の食事の所作は、礼儀作法の指導を受ける前の、昔からすでに美しかった。
(それでいて、食べるスピードが早いのがまたすごいのよ……)
大学生時代、バイトで忙しく時間がない伊吹は食べるのが早かった。
2人で行っていた学食で、先に食べ終わった伊吹は、
『あっ、ごめん。つい早食いのクセが出てしまった……』
シャイな彼らしく、普段はクールな顔に照れ隠しをするような表情をしながら、よくそう言って謝ってきた。
そして榛名が食べているのを、愛おしそうに眺めていた。
あの眩しく愛しい日々、そして現在、伊吹と一緒に旅行に来て、こうして2人で食卓を囲んでいる。
時を経た不思議な感覚はあるけれども、やっぱりしっくりくるなぁと感じていた。
そしてこれは決して当たり前ではない、とても幸せなことなのだと、実感を嚙みしめていた。
「はぁぁ、お腹いっぱい。幸せ~」
食事を終え、ホテルの仲居さんが食べ終えた食器を下げてくれた後、満腹になった榛名は和室に寝っ転がった。
お行儀が悪いのはわかっていたけれど、座布団を枕にして畳に寝そべるのは最高に気持ちが良い。
そのまま目を閉じているとウトウトしてきて、いつの間にかスヤァと眠りについていた。
(……なんだかこの枕、硬いけど、あったかいわ……)
浅い眠りの中、座布団を枕にしていたはずが、いつの間にか低反発のしっかりした枕に代わっているようだ。
その上、髪を優しく撫でられて、ほっぺをムニムニされて、その手がさらに下に降りてきてムニムニ……?
「いや、起こす気満々だろうー!?」
ガバッと起き上がると、伊吹が「おわっ」と驚いたような声を上げて顔を後ろに避けた。
あのままだと、伊吹の顎に榛名の頭がクリティカルヒットするのは間違いない。悔しいがナイス回避である。
「えっ……私、膝枕!?」
どうやら眠っている間、いつの間にか伊吹に膝枕されていたようだ。
勢いよく目覚めたものの、まだ眠たい目をこすりながら状況を把握する。
「おはよう、はるちゃんは寝起きの威勢が良いよね」
さっきまで人の柔らかいところをムニムニしていた人物とは思えない、キラキラした爽やかな笑顔を浮かべて伊吹が言った。
「さて、はるちゃん。お腹いっぱいになったことだし、ひと眠りしてすっきりした後は、いよいよ個室風呂の出番だね」
伊吹はそう言うと、にこやかな表情で個室風呂に向かう木の扉を指し示した。
「あっ、そうだったわ! じゃあ、伊吹くん、先に入ってきていいわよ。私のことは気にしないで、ゆっくり浸かってくるといいわ」
榛名としては気を遣ったつもりだった。そして寝ぼけていて、まだ頭が動いていなかった。
さらに言えば、誰かと一緒に入浴するという習慣がなかったので、その可能性が頭から抜けていたのだ。
「はっ!? いや、はるちゃん、そこは『一緒に入る』一択だろう!」
日頃クールな伊吹にしては珍しく、驚きの感情を露わにした表情を見せた。
まるで「信じられないものを見た」とでも言いたげに、目を見開いていた。
「えぇっ!? 一緒に入るの!?」
その言葉を受けて、榛名も驚いた。なぜだか2人して驚き合っている。
「見解の相違……事前説明が足りなかったか……」
ハァと伊吹が額に手をやり、ため息をつく。
「はるちゃん、君は『信じられない』という顔をしているけど、クリスマスイブの翌朝も一緒に風呂に入っただろう?」
「あっ……」
(そうだった……)
言われてみれば蘇る、甘く恥ずかしい記憶……。
入籍をしたクリスマスイブの夜、二度目の初夜、約5年ぶりに致した後の翌朝――
まだ半分眠っていた榛名は、伊吹に抱えられて浴室に行き、隅々まで綺麗に洗われたのだった。
「そして、はるちゃん。今夜は約束の日だよ。おあずけを食らっていた分、ご褒美はたっぷりと頂かないとね」
「えーと……」
キラキラオーラ満載、しかし有無を言わせない微笑みを向けられて、目が泳ぐばかりの榛名であった。
ーーこの後、2人は甘い一夜を過ごし、伊吹はたっぷりご褒美を頂いた。
「「わぁ、すごい豪勢だね!」」
熱海で採れた海の幸や山の幸が並ぶ豪華な夕食を前にして、2人同時に歓喜の声を上げた。
食事は各部屋に運ばれてくる。榛名と伊吹は和室の長テーブルに向かい合い、ずらりと並べられた食事を堪能していた。
「このお刺身美味しい~!」「魚の焼き加減も最高だ」
しばらくは2人でワイキャイ感想を言い合いながら、料理の味を楽しんでいた。
伊吹と榛名――昔から2人は食べることが好きという部分でも気が合った。
2人とも残さず食べるのがポリシーで、美味しいものを前にすると、つい集中して食べてしまうところも同じだった。
チラリと伊吹を見ると、
(やっぱり、伊吹くんの食べる所作キレイ……)
思わず手を止めて、うっとりと眺めてしまうのだった。
伊吹の食事の所作は、礼儀作法の指導を受ける前の、昔からすでに美しかった。
(それでいて、食べるスピードが早いのがまたすごいのよ……)
大学生時代、バイトで忙しく時間がない伊吹は食べるのが早かった。
2人で行っていた学食で、先に食べ終わった伊吹は、
『あっ、ごめん。つい早食いのクセが出てしまった……』
シャイな彼らしく、普段はクールな顔に照れ隠しをするような表情をしながら、よくそう言って謝ってきた。
そして榛名が食べているのを、愛おしそうに眺めていた。
あの眩しく愛しい日々、そして現在、伊吹と一緒に旅行に来て、こうして2人で食卓を囲んでいる。
時を経た不思議な感覚はあるけれども、やっぱりしっくりくるなぁと感じていた。
そしてこれは決して当たり前ではない、とても幸せなことなのだと、実感を嚙みしめていた。
「はぁぁ、お腹いっぱい。幸せ~」
食事を終え、ホテルの仲居さんが食べ終えた食器を下げてくれた後、満腹になった榛名は和室に寝っ転がった。
お行儀が悪いのはわかっていたけれど、座布団を枕にして畳に寝そべるのは最高に気持ちが良い。
そのまま目を閉じているとウトウトしてきて、いつの間にかスヤァと眠りについていた。
(……なんだかこの枕、硬いけど、あったかいわ……)
浅い眠りの中、座布団を枕にしていたはずが、いつの間にか低反発のしっかりした枕に代わっているようだ。
その上、髪を優しく撫でられて、ほっぺをムニムニされて、その手がさらに下に降りてきてムニムニ……?
「いや、起こす気満々だろうー!?」
ガバッと起き上がると、伊吹が「おわっ」と驚いたような声を上げて顔を後ろに避けた。
あのままだと、伊吹の顎に榛名の頭がクリティカルヒットするのは間違いない。悔しいがナイス回避である。
「えっ……私、膝枕!?」
どうやら眠っている間、いつの間にか伊吹に膝枕されていたようだ。
勢いよく目覚めたものの、まだ眠たい目をこすりながら状況を把握する。
「おはよう、はるちゃんは寝起きの威勢が良いよね」
さっきまで人の柔らかいところをムニムニしていた人物とは思えない、キラキラした爽やかな笑顔を浮かべて伊吹が言った。
「さて、はるちゃん。お腹いっぱいになったことだし、ひと眠りしてすっきりした後は、いよいよ個室風呂の出番だね」
伊吹はそう言うと、にこやかな表情で個室風呂に向かう木の扉を指し示した。
「あっ、そうだったわ! じゃあ、伊吹くん、先に入ってきていいわよ。私のことは気にしないで、ゆっくり浸かってくるといいわ」
榛名としては気を遣ったつもりだった。そして寝ぼけていて、まだ頭が動いていなかった。
さらに言えば、誰かと一緒に入浴するという習慣がなかったので、その可能性が頭から抜けていたのだ。
「はっ!? いや、はるちゃん、そこは『一緒に入る』一択だろう!」
日頃クールな伊吹にしては珍しく、驚きの感情を露わにした表情を見せた。
まるで「信じられないものを見た」とでも言いたげに、目を見開いていた。
「えぇっ!? 一緒に入るの!?」
その言葉を受けて、榛名も驚いた。なぜだか2人して驚き合っている。
「見解の相違……事前説明が足りなかったか……」
ハァと伊吹が額に手をやり、ため息をつく。
「はるちゃん、君は『信じられない』という顔をしているけど、クリスマスイブの翌朝も一緒に風呂に入っただろう?」
「あっ……」
(そうだった……)
言われてみれば蘇る、甘く恥ずかしい記憶……。
入籍をしたクリスマスイブの夜、二度目の初夜、約5年ぶりに致した後の翌朝――
まだ半分眠っていた榛名は、伊吹に抱えられて浴室に行き、隅々まで綺麗に洗われたのだった。
「そして、はるちゃん。今夜は約束の日だよ。おあずけを食らっていた分、ご褒美はたっぷりと頂かないとね」
「えーと……」
キラキラオーラ満載、しかし有無を言わせない微笑みを向けられて、目が泳ぐばかりの榛名であった。
ーーこの後、2人は甘い一夜を過ごし、伊吹はたっぷりご褒美を頂いた。
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